鳥カゴからのゼロ通知
プロローグ
「――本当に、よろしいのですか?」
「―――――」
とある教会でシスターらしき女性と少年が話をしていた。
「でもそれは、あたなが死ぬことと同義なのですよ?」
少年の体は全身血まみれになっていた。それでも少年はシスターの問いかけに笑顔で答える。
「彼は自分の力に自覚することが出来ず、混乱してしまうかもしれません。それに、彼にはそれ以外の力がありません。それではとても危険です!」
そのシスターは必死に彼を説得する。それでもその少年は自分の意思を一切曲げなかった。
「……いけません! それではあなたの理性が失われてしまいます! それに彼だって、辛い思いをするはずです!」
「―――――」
「徐々になじませるって、その後貴方はどうなるのです?」
「―――――」
「……ッ! ……貴方の、大切な人はどうするのですか?」
シスターの目から涙が零れる。どんなに説得しても変えられることが出来ない未来に。
「……分かりました。貴方が言うもう一つの可能性に、私も賭けてみます」
少年はシスターにお礼を言った。全身の怪我は激しく、今にも倒れてもおかしくない状態だった。
「……また、貴方に会えることを信じています」
シスターが少年に手をかざす。すると、たちまち少年の体が白く光り始める。
「――待って!」
協会の扉が勢いよく開いた。扉を開けたのは、服がボロボロになった少女だった。その少女が少年に駆けて行く。
「……何で……何でいつも私に黙って行っちゃうのよ! どうでもいいことは言って、大事なことは絶対私に言わない! いっつも私に何かを隠そうとする! ……ねぇ……何で……何でなのよ……」
その少女もポロポロと涙を流す。地面に涙が落ちるその刹那、少年を包む光によってその涙がキラキラと光る。
「―――――」
「……ッ! ……あ、ああ……ああ……」
その少年の言葉に少女の涙が止まらない。少年を包む光が一層輝きを増し、少年が見えなくなっていく。それを感じて少女は震えながら少年に手を伸ばす。
少年が完全に光に包まれる瞬間、少年の最後の言葉が少女の耳に届く。
「……ありがとう」
少年を包んでいた光が弾け、教会が白い光に包まれた。
余りの眩しさに目を瞑っていた少女だが、光が落ち着き目を開けてみると、そこには少年の姿は無くなっていた。
  少女が伸ばしたその手は、少年に届くことはなかった――。
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