現人神の導べ

リアフィス

64 第4番世界 エスカーテ孤児院

「さて、昼食にでもするか」
「どこで食べるー?」
「孤児院」
「「「んん? 孤児院?」」」
「妾は今無性にカニが食いたい」
「「「ますます分からん」」」

首を傾げる勇者達を連れて、王都にある結構大きな孤児院へと向かう。
王都の孤児院だけあってマシな建物をしており、一応手入れもされているようだ。
孤児院の庭では子供達が走り回って遊んでいるが、こちらに気づき一斉に建物へと走り込んでいった。

「なに、逃げられた?」
「なんという逃げ足……」
「妾達みたいな格好が突然来れば、当然の反応だな。責任者が出てくるはずだ」

第三者から見ればお嬢様と護衛2侍女1に加え、冒険者の護衛2とよく分からない狐獣人1だろうからな。
冒険者の護衛3とはならない。清家の格好は未だに和ロリである。

孤児院からシンプルな黒いローブを着た、20台後半の女性が出てきた。

「ようこそいらっしゃいました。どういったご用件でしょうか?」
「庭を借りたい。持参した材料で料理したくてね」
「え、庭で料理……ですか?」
「流石に王都の道端でするわけにもいかない。貸してくれれば子供達の分も作る予定だ。昼食まだだろう?」
「え? ええ、まだですが……」
「我々が用意しよう。どうせ匂いで寄ってくるだろうしな」

孤児院相手には少し強引なぐらいが丁度いい。
孤児が悪い訳でもないのに、変に負い目を感じているからな。
……まあ、ふんぞり返られれても困るが。

眷属騎士とヒルデがせっせと庭に準備を始める。
業務用のようなサイズの巨大鍋だ。まあ、実際業務用鍋なのだが。
そして空間収納から出される10メートル超えのカニである。

「は? でか」
「なんじゃこりゃ……」
「うわー……」
「アシェットキングクラブ。強さは我々の世界でA+に相当し、竜種に次ぐ海の最高級食材とされる」
「これ、海底だよね?」
「勿論」
「じゃあ実質A+以上か」
「そうなるな。そもそも海底まで行く手段が必要だ。竜種よりはマシの幻の食材。会うことさえできれば、ワンチャンある」

野菜がざくざく切られ、アシェットキングクラブも関節関係なく分けられる。
本来は硬いのだが、残念ながら相手が悪い。バッサリ切られて鍋の中へ。
料理が進むにつれ良い匂いが周囲に漂う。
そしてその匂いに釣られて、お昼時で空腹の子供達が顔を出しているのが分かるが……まあ、そっとしておこう。

「そう言えばそろそろ交代しないとか」
ヴィーラントヴィーアルベルトアルが6番世界で、ディアナとローゼが4番世界でしたね?」
「……そうだな。フィーナはどうする? 帰るかまだいるか」
「うーん……どっちでも良いんだよねー……。帰ったらダンジョン行くし、こっちいるならそれはそれで良いし……」
「ふむ……」

フィーナは本当にどっちでも良さそうだな。
こっちの世界じゃ物足りないから、帰るならダンジョン潜ればいい。残るなら勇者やメグの面倒を見てればいい。
基本こんな旅行なんてしないから、歩きの旅もたまには良いようだな。
やはりと言うか4番世界より、勇者達の6番世界に興味がありそうだ。フィーナはよく宮武と話している。文化が全然違うから興味を持つのは当然っちゃ当然か。
とは言え、今のところ文化が違いすぎて参考になることも無さそうだが。

科学? 多少オリジナルの効率が上がるかな?
医療? 《神聖魔法》で良いよね。

である。
科学より魔導文字。医療より信仰だ。
世界が違うなら当然必要な知識も変わる。活かせるならそれに越したことはないが、役に立たないものが大半だろう。
科学も《魔導工学》使うならまあ……使え無くもないか? 地球に無かった金属もあるが……完全に無駄とは言い難いか。
知らなければどちらが世界に、自分に合っているのかも判断できないのだから、知識を求めるのは良いことだろう。

「交代って何の話?」
「妾の眷属達が交代で異世界旅行中でな。その交代ってだけさ。まあ、一応創造神様から妾が言われている分、仕事と言えば仕事だが……実質旅行だ」
「なるほど、異世界旅行かー……俺もしてみたい気はするけどねぇ……」

長嶺の悩みは言葉の壁か。……こいつ何考えてんだ?

「お前、忘れてないか? 勇者補正で言葉の壁問題は解決済みだろうに」
「……ああ! あれ、でもこの世界だけじゃないの?」
「ああ、なるほど。違うぞ? 転移時に体変わってるんだから、どこ行ってもそのままだな」
「あー……そう言えばそんな事言ってたか。と言うと……英語とかも?」
「そうだぞ。外国語のテストが楽できるな?」
「やったぜ…………あれ、書きは? 筆記」
「その言語を意識しながら書けばいい。文法も勝手にやってくれる。つまり自動翻訳機能付きだ」
「おおー……やったぜ……」

嬉しそうだな、長嶺。
まあ同じ世界ならまだしも、異世界だと言葉の壁は死活問題だからな。でも異世界の場合、言葉じゃなくて武力もないとな。動物か魔物に食われて終わるぞ。
盗賊もいるし、スリとか詐欺もあるからなぁ。

「ユニ様、できましたよ」
「うむ、では食べるか」
「カーニ! カーニ!」
「異世界でも無言になるのかな?」
「……どうなんだろうな?」
「なるぞ」
「「なるんだ……」」

いやまあ、無言にはなるけど理由はだいぶ違う……気がしなくもないが。
アシェットキングクラブだけでなく、海底にいるカニや貝とか自体が高級だから。
地球の海も命懸けっちゃ命懸けだが、デンジャラス差が桁違いだからな……。その分値段も桁違いだけど。獲りに行った漁師か王侯貴族ぐらいしか食えんよ。

「「「いただきまーす」」」
「いただきます……」
「おう、食え食え。豊饒神がいる世界のものは格別だ」
「「「…………」」」
「おいひい……」

一口目から黙々と食い始めた勇者達は置いといて……。メグも一言だけ言ったら黙々と食べ始めた。目はキラキラしている。幸せそうで何よりだ。
さて……後ろの子供達にもな。
とは言え、警戒して来ないだろうから……。

「お前達が来て料理を受け取らないと、あのお姉ちゃん達が食べられないぞー」

料理をよそっている3人。まあ、眷属3人だな。子供達に渡してから、自分の分を用意するので事実である。
1人がとことこやってくると後は早かった。わらわら子供達がやって来て群がり、孤児院の管理者だろう女性に怒られて綺麗に並ぶ。

「このようなご馳走、ありがとうございます」
「勝手にやったことだ、気にするな。それと場所代と寄付な」
「えっ、流石にこんな額は……」
「孤児院で見たら大したことあるまい? 節約して半年ぐらいだと思うが」
「結構な額だと思うんですけど……」
「まあ、いらないってんなら回収するだけだ」
「い、いえ、ありがとうございます」
「「カニうめー!」」

清家と長嶺はいつも通りだ。
大体小学生が中心の孤児院の子供達と競うように貪る中学生である。遠慮のの字もない。宮武の2人を見る目が物凄く冷たい。

「おい楓、尻尾なんとかしろ」
「え? ああ無理、勝手に動く」
「せめて俺叩くのやめろ」
「カニが美味しいのがいけない」
「…………」

長嶺は諦めたようで、清家のご機嫌な尻尾に背中を叩かれつつ食べることを選んだ。……離れるという発想は無さそうだな。

「そう言えば宮武にプレゼントがある」
「え、プレゼント?」
「はいこれな」
「服……? なんか魔女みたいな……」
「ちょっとエッチな魔女風セット。下着付き」
「えっ……えっちな……あー……なんと大胆なスリットでしょうか……」

幅広の帽子に、腰から左右にスリットが入っているノースリーブワンピース。それにポンチョの様な外装マント。勿論どれも黒である。魔女風だから。

「ゲームならまあ、着たけど……リアルでこれは躊躇いが……」
「魔女風って言ったけど、実際に魔法使えるし魔女だな?」
「まあ……?」
「ちなみに素材は清家のと同じだから」
「やっぱ肌触りいいなぁ……。リアルだからこそ……着るべきなのか……」
「まあ、今のより遥かに防御力高いからな」

うん、羞恥心的な意味ではゲームの方が着やすいだろうけど。ステータスも上がるんだし? スリットが深すぎるだけで、見た目が悪い訳でもないから性能的にも着るだろう。
でも、リアルな今の方が着るべきだ。見た目より性能重視するべきである。装備の防御力がそのまま生存性に関わるのだから。まさにイコールと言って良いレベルなのだから、性能を選ぶべきである。多少の遊び心えろには目を瞑れ。

「スリットあった方が動きやすいしな」
「むぅ……着替え……あ、はい」

もこもこと土で個室を隣に作った。勿論着替え用。
にしても、ここの子供達はよく食うな。食える時に食べておきたいのは分かるが、出すなよ。いや、マジでな。


清家と宮武の服の素材であるアラクネの糸。普通の鋼の剣じゃ斬ることは不可能である。正確には、従魔ベアテのアラクネの糸は……だろうか。
ベアテは契約時に最適化が入り、格が上がって進化したけれど、流石に我々と同じく永く存在すれば更に進化するわけで。当然エマニュエルもだ。
まあつまり、蜘蛛系でも最高位に等しいベアテの出す糸が、ただの鋼に負ける事はあり得ない。糸を布とし、服に加工できているのは製作者がベアテ本人だから。

アラクネの糸は物理法則ではなく、魔法法則に従っている。
全ての魔法は術者が形を変えるのは比較的楽だが、他者が変えるには相手を上回る必要がある。でなければ基本弾かれて終わる。下手したら干渉しようとしたタイミングでカウンターを貰う事になるだろう。

世界が違うのだから『服が鋼の剣で斬れないのはおかしい』という常識なんぞゴミ同然である。まあ、服が斬れなくても鋼の剣で殴られたら当然骨が逝くので、衝撃吸収などが付いた魔装具だが。


お、着替え終わったか。
魔女風セットを身に着けた宮武が簡易更衣室つちのかべから出てくる。

「うわ、なんか魔女がいる」
「宮武も貰ったのか、いいなー」
「おらよ」
「うおっ」
「所謂チェーンメイルだな。中にでも着とけ。防御力では清家達以上だぞ」

長嶺にはマナタイトクォーツで作ったチェーンメイルを渡しておく。防御力では最高の代物だ。しかもかなり軽い。男を着飾る趣味はないからそれで十分だろう。

「生足魅惑の……」
「見すぎ」
「……履いてない」
「はーいーてーまーすー」
「まじで」
「捲んな!」

清家と宮武がイチャイチャし始めたのを放置して、チェーンメイルを着るため簡易更衣室つちのかべに向かって行った長嶺。

「あ? 別に全部脱ぐわけじゃないしここで良いのか」
「まあ、そうだな。おっと、シャツもあったか」

薄い生地のシャツを2枚渡し、結局上半身裸に。シャツを着て、チェーンメイルを着て、更にシャツを着て、鎧を着る。見事な重ね着だが、こいつタンクだからな。

「わざわざシャツ2枚重ねたのは緩和用?」
「まあ、そうだな。後は消音も兼ねて」
「なるほど。金属同士の接触防止……金属?」
「マナタイトクォーツは一応金属扱いだぞ。見た目水晶だが」


モグモグ頬張る子供達を見ながらのんびりティータイムに洒落込んでいると、ふよふよと風の幼精霊がやって来て遠慮がちに胸元に張り付いた。

割りと精霊を見るようになってきたな。世界的には良いことだ。むしろ全然いなかった今までが異常だからな。

生まれたての幼い精霊を幼精霊と言う。幼精霊から精霊、精霊から精霊王になる。この呼び方の違いは、エネルギーの保有量だと思っていい。つまり操作できるエネルギー量の違いでもある。
幼精霊は15センチ、精霊は30センチ、精霊王が45センチぐらいの女性型だ。ただし、はっきり人の形をしているのは精霊王ぐらいである。

私の契約精霊は契約時の最適化により、精霊王の上である精霊皇女になっている。大体60センチの完全人形だ。各属性1体ずつ契約している。
フィーナの契約精霊は精霊王クラスだ。一応キャパシティが存在するので、無制限契約は不可能。当然精霊のランクが上がる毎に必要コストは増える。
水、風、地の精霊王と契約できているフィーナは十分ぶっ飛んでいる。

精霊達は神々の代行。
お仕事は世界のバランスを保つこと。この『世界のバランス』というのがまた幅広いのだが、基本的に地上の生物は特に認識していない。
一部魔眼持ちや、エルフやドワーフなどしか精霊自体がそもそも見えないからだ。しかも、見えたところでただ飛び回って遊んでいるようにしか見えない。
精霊は基本的に見えないが、精霊側から姿を見せる事は可能だ。見せる理由がないから基本的に姿を見せる事はないが。

一番重要なのは属性バランスの均等化。これはもはや生物には見えないし、分からない。分かるのは精霊達と、親とも言える豊饒系の神々だけ。私の持つ自然の神眼で見ることができる物の1つだ。
この属性バランスが崩れると、自然災害……異常気象フェスティバル開催である。
全てほどほどに、多すぎても少なすぎてもダメなのだ。どれか1個でも崩れると、全てに影響を与え、最終的には死の大地と化す。一度死んだ大地は精霊王達でも復活させるのに苦労する。

後は神々の与える加護の微調整などもある。
私の拠点であるアトランティス帝国。当然私の加護が土地に与えられているのだが、契約精霊含めたかなりの数の精霊達が加護の調整を行っている。
じゃないと加護が強すぎて一瞬にしてジャングルと化すだろう。豊饒系最上位の加護はそれだけの物だ。現人神のせいで余計に加護の影響が強いし。

精霊達は神々の代行。その力はかなりの物で、ドラゴンすら精霊には喧嘩を売らない。そもそも精霊とは何かを知っているので、喧嘩を売る理由もないのだが。
大体精霊を怒らせるのは人類だ。怒らせた挙句国を持ってかれるとか案外ある。
水の近くにできた王都で、水の精霊に水を汚すな! と怒られたにも関わらず、無視した結果……大津波で一瞬にして王都が壊滅とか。

可愛く見えてヤバいやつ。それが精霊達。
精霊と契約できれば《精霊魔法》が使えるが、精霊に魔力渡して代わりに使ってもらう魔法である。生物より精霊の方が魔法適性が遥かに高いから、強いのだ。


で、この張り付いてる幼精霊は……お母さんに甘えている子供状態である。実際生まれたてだし、豊饒系最上位の私だから間違いではない。逆に精霊からしてもトップもトップだから、ちょっと恐る恐るだったと。
今がチャンスだぞ。契約精霊達がいると私に近づけんからな。

おや、また1人来たな? ……こいつ元精霊王か。幼精霊じゃそこまでの練度は無いはずだからな。しかし、精霊王達には一度飛び回って供給したのだが……風か……一番荒れてたもんなー……。
手を差し出すと手のひらに乗ったので、エネルギーを供給してやる。
幼精霊の状態からみるみる人の形になり、背も伸びていく。

「何してるの?」
「子供達の世話」
「子供……子供?」
「流石に端折りすぎたか。精霊達の世話だ」
「精霊かー」
「裏では人類の尻拭いで大わらわだ」

精霊達への指示も私が出した方が早いからなぁ。
供給が終わって再び精霊王クラスになった精霊は、来た時とは全然違う速度で飛んで行った。働き者だこと。それに続いて、張り付いていた幼精霊も飛んで行った。お前は無理するなよ。消滅するぞ。自分の体を維持するギリギリまでなんて芸当は精霊王だからこそだからな。

さて、私の紅茶がフィーナの精霊に飲まれたわけだが……まあ、冷めてたし良いか。……入れ直さなくてもすぐ温められるんだけどな。飲み尽くされたから仕方あるまい。ヒルデに新しく注いでもらう。

「にしても、よく食べたな」
「先に自分達の分確保しといて良かったですね」
「「うんうん」」

危機を察して先に自分達の分を1杯分確保していた眷属達である。

「よもや食い尽くされるとは」
「その、すみません……」
「ああ、別に構わんさ。元々食べさせるつもりで作った物だからな。むしろよく食べたと感心するぐらいだ」

いやマジで。


さて、そろそろお暇するかね。長嶺の盾も物色しないとだからな。

「食事は済んだし、買い物行くぞー」
「「はーい」」
「良い盾あるかねぇ……」
「邪魔したな」
「いえ、ありがとうございました」
「計画的に使えよ」
「はい、勿論です」

子供達にブンブン手を振られながら孤児院を後にする。
後は勝手にするだろう。流石に他国の孤児院まで面倒見るつもりはない。

「孤児院かー」
「向こうじゃ馴染みないよねー」
「これだけの時間じゃ、正直幼稚園とかと違いを感じないなー」
「どういう生活をしているか見ている訳ではないから、そんなもんだろう」

孤児院なので、当然彼らを迎えに来る親はいない。院長達が親代わりだ。
そして、国がどうするかで彼らの扱いもだいぶ変わるだろう。その辺りにいちいち口を出す気はない。

「勇者と言えど、あれには無力だよねぇ……」
「勇ましい者。意気が盛んで勢いがあり、恐れずに危険や困難に向かっていく者。それが勇者だな。力がなければただ口先だけのうざいやつにしかならんから、自分に何ができて何ができないのか。把握しているのは良いことだと思うぞ、うん」
「武力しか期待されてないよね、勇者って」
「魔王倒してめでたしめだたしな物語は良いけど、魔王を倒せさえすれば人生はその後の方が長いわけで……」
「よし、この話はやめよう」
「余計なことはせず、金だけ渡しておけば後は勝手にやるさ。むしろ面倒見るつもりがないならそれぐらいが一番良い」
「そう言えば、ユニエールさんのところはどうしてるの?」
「うちは簡単だ。学園に放り込んでる。あそこは寮もあるからな。後はそこで好きなの学んで、卒業から就職で立派な大人だ」

子供達をどうするかはそれこそ国の方針だろう。規模が規模だからなぁ。子供、若者を大事にしない国はだいたい滅ぶか、隣国に飲み込まれるのがお決まりだ。

「まあ、お前達が気にすることではない。そこは国の仕事だ。そもそも他国どころか異世界だしな。気になるなら寄付だ寄付。金があればどうにかするさ。むしろ金でどうにもならないなら、ぶっちゃけもう詰んでるからな」

金で解決しない問題を孤児院がどうにかできる訳もなく。
そもそもの話が、6番世界出身の勇者達からしたら孤児達は可哀想と言えるのだろうけど、4番や10番世界からしたら孤児なんか別に珍しいものではない。だって、魔物に親が殺されるなんてザラだからだ。隣の家の◯◯が、畑仕事中に襲われた……とか。村ではよくある事。

そう『よくある事』なのだ。そんな『よくある事』に国が対応しない訳がない。それに貴族からしても『アピール』するには割りと孤児院や教会が使われるのだ。
だから、案外切羽詰った孤児院は珍しかったりする。

貴族というのはメンツで生きる職業だ。貴族とは身分を指す言葉ではあるが、メンツで稼ぎ生きる奴らだ。甘く見られたらそれで終わりだし、変な噂が出回った時点でも終わりだ。孤児院や教会への寄付などの『アピール』は割りと必要で有効。
それらのお金は自分の領地などから少しずつ捻出したりする。その辺りのやりくりも腕の見せ所だ。

そして当然王族にもこれは当てはまるわけで、特に神々関係の教会。そして子供達と言った孤児院は分かりやすいため、よく利用される。利用とは言うが、Win-Winの関係と言ったところだ。片方はお金など支援があり、片方はアピールになる。

「まあ、6番世界の中学生が考えるような事ではないな。この世界に骨埋めるつもりなら考える必要も出るだろうが?」
「「「さらさらありません」」」
「そもそも買い物に向かいながら話すような事でもありませんよ」

ヒルデのツッコミはいつも容赦がない。私に慣れているとも言えるが。
こいつ女神の私を脇に抱えて運ぶし。ふざけてる時だから反論できないしな!
『そうされない振る舞いをしてください』の一言で轟沈だ。ハハハ。

侍女の鑑は主人にも厳しい。

「現人神の導べ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • ミリオン

    頑張って!

    0
コメントを書く