現人神の導べ
12 教えて! ユニエール先生! 2
「妾は狐っ娘の所で良いぞ。あそこ3人だしな。ヒルデとシロニャンは……ノーカンだろ。ペットと侍女が主人から離れるわけもあるまい」
「確かに」
「と言うか、4人ピッタリじゃなくても良いぞ。だから大人しく仲が良い者で集まっておけ」
「え、いいのかなぁ?」
「今後と言ったんだからそっちの方が良い。旅をそのメンバーですることになるだろう。仲間に命預ける事になるんだ、その方が良い。2人とかはお勧めしないが」
「『あー』」
こうなると後は早かった。
男女混合もそれはそれである意味大変なのだが……。
「お? 俺ハーレムじゃんテンション上がるな!」
「お前さらっと俺も入れたな?」
「悲しいハーレムの現実を教えてやろうか、長嶺」
「えっ?」
清家が超ジト目で長嶺を見ているが、そっとしておこうと思う。
「清家、宮武、妾にヒルデの4人と男が1人だ。……多数決で勝てると思うなよ」
「……はっ!?」
「ハーレムというのはな? 周りの女全員が男に好意やらを向けている必要がある。そして、そうじゃなかった場合……一瞬にして男は発言権を失う……」
「…………」
「女子トークが始まってみろ……そこに入り込む勇気が貴様にあるか……?」
「絶対無理……」
「お前絶対肩身狭いからな……。旅の最中に着替えの時とかテントから追い出されるのは間違いなくお前だぞ長嶺……」
「…………」
長嶺は頭を抱えていた。
ハーレムで殺気だった男達も、今じゃ何とも言えない顔で長嶺を見ていた。
フィクションだからああなるのであって……絶対地獄だろ、ハーレムとか……。
男1人に女が一斉に好意を向けると思うなよ……。
「夢がないよ、ユニエールさん……」
「ははは、夢じゃねぇからな」
「ぐふっ……」
「夢じゃなくて現実を見ろ……女が沢山いるなかに、男が1人……。絶対疲れる。1年もすれば地が出るぞ……覚悟しとけ……男女両方な」
これから魔王倒すまで一緒だ。
どちらも最初は取り繕うだろうが、1年もすれば地が出る。むしろ1年持てばいいな。確実に数ヶ月で地が出る。
しかもこの世界に車何かねぇ。移動は馬車が基本だ。つまり野宿。幸い"ピュリファイ"でお風呂とかの問題はないが、排泄などは必要だぞ。
頑張れ男女混合チーム。
「ああ、リーダーは3人で決めていいぞ」
「え、ユニエールさんじゃないの?」
「妾はのんびりしたい。特に問題ない限り口出さんからやってみろ」
「じゃあ楓か」
「えー……」
「清家でも問題はないが、交渉時は他のやつがやらないとダメだぞ」
「あー、獣人地位低いんだっけ。そもそも会話にならない可能性があると」
「ま、やるだけやってみるか。何かあったらユニエールさんに丸投げな」
「考えもせず丸投げしたらしばくからな」
結局リーダーは長峰になった。
私はのんびり次元の壁を修復しながら付いていくとしよう。
こうして騒がしい朝食が終わった。
学園に行くまでまだ少し時間があるので、その間にもう少しだけ魔法に関して教えておく事にする。
「ユニエール先生のお時間です。さて、今回は状態異常についてだ」
状態異常と言っても、様々な物がある。原因も複数だ。
「さて、今回なぜ妾が出てきたかというと……《侵食魔法》に関してだ」
"毒"、"睡眠"、"呪い"。
"沈黙"、"混乱"、"衰弱"。
"石化"、"恐怖"、"猛毒"、"祟り"。
"魅了"、"狂気"、"死毒"、"侵食"。
「まあ、名前からある程度どうなるか推測できよう。《侵食魔法》はモンスタースキルと思っていい。例外は各種『魔眼』持ちだ」
少々効果がわかりづらい物を解説しよう。
まず"呪い"。これは《強化魔法》や《神聖魔法》、アイテムの効きが悪くなる。主にアンデッド系が使用してくる。
"呪い"の上位が"祟り"となる。《強化魔法》や《神聖魔法》、アイテムの効きが悪くなるのは共通。更に体調も優れず、寝付きも悪い。インフルに近い症状が発生する。
そして呪い系最上位が"侵食"だ。蝕む呪いをかけ、放っておくと近いうちに死ぬ。死の宣告のようなものだ。
"毒"、"猛毒"、"死毒"はその名の通り、段々と毒の強さが上がっていく。
"死毒"だと人間程度ならすぐ死ぬ。簡単に逝く。
うちの従魔であるアラクネのベアテが"死毒"を使える。
「とまあ、かなりヤバい魔法なわけだが、"侵食"や"死毒"どころか、"祟り"や"猛毒"ですら使える奴は稀だ。とは言え何の対策もしないのはただの馬鹿だ。よって、知識だけでも与えておく」
まず《補助魔法》に"○○抵抗"系があり、"魂盾"、"免疫強化"、"魂保護"などがある。
これら《補助魔法》で抵抗力を上げる。
「妾は《侵食魔法》と言ったな。魔法法則にはレジストと言う魔法抵抗がある。これは《侵食魔法》に限らず、《攻撃魔法》にも発生する。魔法法則に則るものは、魔法抵抗による軽減が絶対に発生するのだ」
つまり保有魔力量は結構重要だ。
魔法をどのぐらい使えるか以外にも、魔法抵抗力にほぼ直結している。そして保有魔力量は遺伝による生まれつきと、魔法使用による成長だ。
自分の魔力により、相手の魔力からの干渉を防ぐ。それが魔法抵抗だ。
「つまりな……《侵食魔法》による毒と、植物や動物から取れる毒は症状が同じでも別物だと言うことだ。前者はレジストが発生するが、後者は発生しない。手軽さは《侵食魔法》だがレジストの問題がある。まあ、狙われたらすぐ分かるのだがな。試してみようか……"沈黙"でいいか。長嶺、人柱」
「えー!」
「声が出なくなるだけだから安心しろ」
「むぅ……」
「分かりやすく遅く詠唱するから見てろよー」
長嶺を前にこさせ、"沈黙"をかける。
術者の足元に虹色の魔法陣が表示され、対象となった長嶺の周囲には魔導文字が出現し、体に吸い込まれていく。
《侵食魔法》の魔法陣は術者の魔力光の色になる。シュテルの魔力光は虹だ。
レジストされた場合、魔導文字が体に吸い込まれず弾け飛ぶ。
「と言うように、対象となると魔導文字が出現するから非常に分かりやすい」
喋ろうとパクパクしている長嶺に、今度は《神聖魔法》の"治療"を使用する。これも対象となった周囲に魔導文字が浮かび体に吸い込まれる。
ちなみに《神聖魔法》の魔法陣は虹色だ。
でもシュテルの魔力光よりちょっと暗い。
「あー。お、声出た」
「ご苦労長嶺、戻っていいぞ」
「うーい」
長嶺が座るのを確認し、続きと行こう。
「《侵食魔法》による状態異常は《補助魔法》のレジスト系で抵抗力を上げられ、《神聖魔法》のキュア系で治せる。だが、植物や動物由来の状態異常はレジスト系が効かん。キュア系は効くが、《侵食魔法》ほどあっさりは消えん。よって、植物や動物由来の毒……まあ、お前達がイメージする毒だな。気をつけろよ」
もし《鑑定》系を持っているなら料理や飲み物に使用すれば、毒入りかどうかは分かる。食べる、飲む前に使う癖を付けておくべきだろう。誰が用意した物でもとりあえず《鑑定》する癖をな。
それだけでだいぶ安全になる。
「いいかー? この世界は前の世界に比べ優しくない。自分の身は相手を殺してでも自分で護れよー。話せば分かると言うが、話せば分かるやつは話す前から殺しに来たりはしないからなー」
「『確かに……』」
そして、学園に入学する日がやってくる。
この歳で学園とは……どちらかと言うと臨時でたまに教えに行ったり、侍従専攻に協力する側だからな……。
ああ、次元の壁の修復に意識向けてればいいか……。
「確かに」
「と言うか、4人ピッタリじゃなくても良いぞ。だから大人しく仲が良い者で集まっておけ」
「え、いいのかなぁ?」
「今後と言ったんだからそっちの方が良い。旅をそのメンバーですることになるだろう。仲間に命預ける事になるんだ、その方が良い。2人とかはお勧めしないが」
「『あー』」
こうなると後は早かった。
男女混合もそれはそれである意味大変なのだが……。
「お? 俺ハーレムじゃんテンション上がるな!」
「お前さらっと俺も入れたな?」
「悲しいハーレムの現実を教えてやろうか、長嶺」
「えっ?」
清家が超ジト目で長嶺を見ているが、そっとしておこうと思う。
「清家、宮武、妾にヒルデの4人と男が1人だ。……多数決で勝てると思うなよ」
「……はっ!?」
「ハーレムというのはな? 周りの女全員が男に好意やらを向けている必要がある。そして、そうじゃなかった場合……一瞬にして男は発言権を失う……」
「…………」
「女子トークが始まってみろ……そこに入り込む勇気が貴様にあるか……?」
「絶対無理……」
「お前絶対肩身狭いからな……。旅の最中に着替えの時とかテントから追い出されるのは間違いなくお前だぞ長嶺……」
「…………」
長嶺は頭を抱えていた。
ハーレムで殺気だった男達も、今じゃ何とも言えない顔で長嶺を見ていた。
フィクションだからああなるのであって……絶対地獄だろ、ハーレムとか……。
男1人に女が一斉に好意を向けると思うなよ……。
「夢がないよ、ユニエールさん……」
「ははは、夢じゃねぇからな」
「ぐふっ……」
「夢じゃなくて現実を見ろ……女が沢山いるなかに、男が1人……。絶対疲れる。1年もすれば地が出るぞ……覚悟しとけ……男女両方な」
これから魔王倒すまで一緒だ。
どちらも最初は取り繕うだろうが、1年もすれば地が出る。むしろ1年持てばいいな。確実に数ヶ月で地が出る。
しかもこの世界に車何かねぇ。移動は馬車が基本だ。つまり野宿。幸い"ピュリファイ"でお風呂とかの問題はないが、排泄などは必要だぞ。
頑張れ男女混合チーム。
「ああ、リーダーは3人で決めていいぞ」
「え、ユニエールさんじゃないの?」
「妾はのんびりしたい。特に問題ない限り口出さんからやってみろ」
「じゃあ楓か」
「えー……」
「清家でも問題はないが、交渉時は他のやつがやらないとダメだぞ」
「あー、獣人地位低いんだっけ。そもそも会話にならない可能性があると」
「ま、やるだけやってみるか。何かあったらユニエールさんに丸投げな」
「考えもせず丸投げしたらしばくからな」
結局リーダーは長峰になった。
私はのんびり次元の壁を修復しながら付いていくとしよう。
こうして騒がしい朝食が終わった。
学園に行くまでまだ少し時間があるので、その間にもう少しだけ魔法に関して教えておく事にする。
「ユニエール先生のお時間です。さて、今回は状態異常についてだ」
状態異常と言っても、様々な物がある。原因も複数だ。
「さて、今回なぜ妾が出てきたかというと……《侵食魔法》に関してだ」
"毒"、"睡眠"、"呪い"。
"沈黙"、"混乱"、"衰弱"。
"石化"、"恐怖"、"猛毒"、"祟り"。
"魅了"、"狂気"、"死毒"、"侵食"。
「まあ、名前からある程度どうなるか推測できよう。《侵食魔法》はモンスタースキルと思っていい。例外は各種『魔眼』持ちだ」
少々効果がわかりづらい物を解説しよう。
まず"呪い"。これは《強化魔法》や《神聖魔法》、アイテムの効きが悪くなる。主にアンデッド系が使用してくる。
"呪い"の上位が"祟り"となる。《強化魔法》や《神聖魔法》、アイテムの効きが悪くなるのは共通。更に体調も優れず、寝付きも悪い。インフルに近い症状が発生する。
そして呪い系最上位が"侵食"だ。蝕む呪いをかけ、放っておくと近いうちに死ぬ。死の宣告のようなものだ。
"毒"、"猛毒"、"死毒"はその名の通り、段々と毒の強さが上がっていく。
"死毒"だと人間程度ならすぐ死ぬ。簡単に逝く。
うちの従魔であるアラクネのベアテが"死毒"を使える。
「とまあ、かなりヤバい魔法なわけだが、"侵食"や"死毒"どころか、"祟り"や"猛毒"ですら使える奴は稀だ。とは言え何の対策もしないのはただの馬鹿だ。よって、知識だけでも与えておく」
まず《補助魔法》に"○○抵抗"系があり、"魂盾"、"免疫強化"、"魂保護"などがある。
これら《補助魔法》で抵抗力を上げる。
「妾は《侵食魔法》と言ったな。魔法法則にはレジストと言う魔法抵抗がある。これは《侵食魔法》に限らず、《攻撃魔法》にも発生する。魔法法則に則るものは、魔法抵抗による軽減が絶対に発生するのだ」
つまり保有魔力量は結構重要だ。
魔法をどのぐらい使えるか以外にも、魔法抵抗力にほぼ直結している。そして保有魔力量は遺伝による生まれつきと、魔法使用による成長だ。
自分の魔力により、相手の魔力からの干渉を防ぐ。それが魔法抵抗だ。
「つまりな……《侵食魔法》による毒と、植物や動物から取れる毒は症状が同じでも別物だと言うことだ。前者はレジストが発生するが、後者は発生しない。手軽さは《侵食魔法》だがレジストの問題がある。まあ、狙われたらすぐ分かるのだがな。試してみようか……"沈黙"でいいか。長嶺、人柱」
「えー!」
「声が出なくなるだけだから安心しろ」
「むぅ……」
「分かりやすく遅く詠唱するから見てろよー」
長嶺を前にこさせ、"沈黙"をかける。
術者の足元に虹色の魔法陣が表示され、対象となった長嶺の周囲には魔導文字が出現し、体に吸い込まれていく。
《侵食魔法》の魔法陣は術者の魔力光の色になる。シュテルの魔力光は虹だ。
レジストされた場合、魔導文字が体に吸い込まれず弾け飛ぶ。
「と言うように、対象となると魔導文字が出現するから非常に分かりやすい」
喋ろうとパクパクしている長嶺に、今度は《神聖魔法》の"治療"を使用する。これも対象となった周囲に魔導文字が浮かび体に吸い込まれる。
ちなみに《神聖魔法》の魔法陣は虹色だ。
でもシュテルの魔力光よりちょっと暗い。
「あー。お、声出た」
「ご苦労長嶺、戻っていいぞ」
「うーい」
長嶺が座るのを確認し、続きと行こう。
「《侵食魔法》による状態異常は《補助魔法》のレジスト系で抵抗力を上げられ、《神聖魔法》のキュア系で治せる。だが、植物や動物由来の状態異常はレジスト系が効かん。キュア系は効くが、《侵食魔法》ほどあっさりは消えん。よって、植物や動物由来の毒……まあ、お前達がイメージする毒だな。気をつけろよ」
もし《鑑定》系を持っているなら料理や飲み物に使用すれば、毒入りかどうかは分かる。食べる、飲む前に使う癖を付けておくべきだろう。誰が用意した物でもとりあえず《鑑定》する癖をな。
それだけでだいぶ安全になる。
「いいかー? この世界は前の世界に比べ優しくない。自分の身は相手を殺してでも自分で護れよー。話せば分かると言うが、話せば分かるやつは話す前から殺しに来たりはしないからなー」
「『確かに……』」
そして、学園に入学する日がやってくる。
この歳で学園とは……どちらかと言うと臨時でたまに教えに行ったり、侍従専攻に協力する側だからな……。
ああ、次元の壁の修復に意識向けてればいいか……。
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