現人神の導べ

リアフィス

06 座学

大部屋の一室。
そこには机と椅子が並び、少年少女達が同じ方を向き並んで座っていた。
そして、その向いている方には40ぐらいの男性が立っている。

勇者一行、座学のお時間である。

一見一番幼い少女……シュテルンユニエールは興味なさそうに、一番後ろの席でハリネズミをグリグリしていた。

「えー、まず基本中の基本。皆さん"ステータス"と思ってみて下さい。……でましたか?」

試した学生達がざわざわしていた。

「出た内容は言わなくて結構です。むしろ聞かれても簡単には答えないようにして下さい。特に【固有】というのは強力なのが多いです。これは家族にすら言わない人もいるぐらいですから、言う場合人を選んで下さいね」

表示されるステータスは……名前、種族、性別、身分、称号、年齢。
それに加えスキルの【武闘】【魔法】【生産】【身体】【その他】【種族】【固有】があり、【所持称号】が存在する。

「周りを見て貰えば分かる通り、基本的に他の人が見ることはできません。例外は《分析》系統のスキル持ちです。《隠蔽》があれば《分析》系統からも隠せます」

しかし《分析》の発動条件は触れている事である。
ただ例外もあり、魔眼のみ視界に収めれば発動条件は達成するのだ。
魔眼持ちはかなりレアであるが、《隠蔽》があるに越したことはない。

「とは言えですね……。言うなとは言いましたが、皆さんの一番高いスキルを教えて欲しいのですよ。それで実技の方はそちらを教える事になります。もし一番高いのが【固有】だった場合、2番目のを教えて下さい。では一番前の列からいきましょうか。名前とスキルをお願いします」


まあ、最初から高い所謂長所を鍛えた方が良いだろうな。
そのためには教えて貰った方が早いわけで。聞くのは当然といえる。

ふむ、少々忠告しておくか。

『清家楓、これは"念話テレパス"という魔法だ。声は出すな』
『こいつ……直接脳内に……』

びっくりして尻尾がピーンとしてるがそれは置いといて……。

『喋らず思うだけでいい。それで《剣術》か《攻撃魔法》と言っておけ。【固有】は勿論だが【種族】もスルーだ。どうせ教えられる奴はここにはおらん。ただ、妾のお勧めは《格闘術》か《棒術》だ』
『《剣術》か《攻撃魔法》じゃないの!?』
『お前の種族は魔法型だ。杖を持つなら《棒術》を進める。近接がしたいなら《格闘術》か……《剣術》が良いなら短剣だな』
『むむむむ……』
『将来を考えるなら……《棒術》か《格闘術》だな。魔法は正直妾が教えられる。勇者に教えるなら隊長格とか、トップレベルの使い手が来るだろう。そういうやつに近接を教わっておいた方が後が楽だ』
『なる……ほど……』
『まあお前の好きにして良いのだが、体の特性は素早い魔法タイプだ。獣人は総じて耳や鼻が良く身のこなしが軽い。ただ、狐は魔法に寄る分力は劣る』
『でもそれだと近接がそもそもダメじゃない?』
『そこは問題ない。狐の得意分野、魔法でカバーができる。獣人はそもそも魔法が苦手だ。最大魔力量も伸びが悪く、繊細な操作も微妙。その常識に真っ向から喧嘩売るのが狐の獣人だ。教えて貰えるうちに近接を体に覚えさせる事を目的にしろ』
『確かに……魔法はともかく、近接は我流じゃダメ?』
『そうだ。それにさっきも言ったが魔法は教えられる。妾の得意分野だ。欲張るなら《棒術》を教えて貰え。ヒルデが《格闘術》を教えられるからな』
『むむむ……。教えて貰える人はいるけど問題は時間的にかなり大変か……。でも背に腹は変えられないかなぁ……』
『まあ情報は与えた。後は好きなのを選べ』
『はーい』

着々と進んでいきメモをしていく中で、1人の少女が《攻撃魔法》と言った。
それを聞いた教師役の男性は唸っていた。

「……やはりそうですか。勇者様の使う魔法は我々とは違う系統の可能性があると書いてあったのですよね……。まあそれでも、魔法が使えるように教える事は可能ですので……では、次の方お願いします」

ふむ、やはりこの世界の住人は魔法形態が旧式か。
前回の勇者は……約370年前か……。我々の10番世界で魔法の仕様が変わったのは約400年前だから、この世界では……800年前には変わっているのか。
仕様変更後4回目の召喚か。勇者達は新しい魔法の仕様が適応されてるようだな。
でもこの世界、魔法陣に使われている魔導文字が普通に使われているのか。
そのせいで召喚魔法なんて作られたんだな。

まあ、旧型と新型の魔法形態は結構違う。つまりこいつらは精々《魔力操作》ぐらいだろうか。どれぐらい誘拐された過去の勇者が情報を残しているかだな。
無くても《魔力操作》は最重要だし良しとするべきか。

「名はブリュンヒルデ。一番高いスキルは《奉仕学》です」
「ほ、《奉仕学》!?」
「ああ、《奉仕学》はLv10とカンストしていますのでご心配なく。戦闘系で言えば《格闘術》ですが、《剣術》の場合は短剣を使用します」

なお、当然《格闘術》と《剣術》もカンストしている模様。
伊達に永く存在していない。
正直言ってしまうと、我々はステータスが表示されない。
神と眷属には不要なのだ……。

私の出番か!

能力的に……自然神は表現しづらい。あえて言うなら《攻撃魔法》か。
それはつまらんな……となると時空神にしようかな。
時空神の能力は便利すぎて隠すの面倒だし。

「妾の名はシュテルンユニエール。一番高いスキルは《時空魔法》だ」
「《時空魔法》……?」
「《空間魔法》《重力魔法》が合わさって《時空魔法》だ」
「なあっ!?」

男が出した声は最早悲鳴に近かった。

いや、うん。すまんな。
空間に干渉する《空間魔法》も《重力魔法》もどちらも最高難易度魔法だからな。
魔力消費がでかいという事は、つまり使用魔力が多い。と言うと制御しなきゃならない魔力が純粋に多いわけで、制御の難しい発動させづらい高等魔法となる。

『時空と自然を司る神』である私には空間に干渉する代償は必要無いんだけどね。
私は魔力という代償を使用して『お願い』している訳ではない。
言うだけで『向こう(空間)が従う』のだ。
『司る神』とはそういう存在である。

私がルールです。

シロニャンは……いいや。癒し系ペットという事で。
いやだって、一番高いスキルは? って言われたら恐らく《竜魔法》だぞ。
姿を変える《変化の秘術》はユニークスキルだからな……。つまり【固有】だ。

『シロニャン様はスルーで良いですよね?』
『良いだろう。と言うか言わない方がいいだろ』
『城が吹き飛びかねませんからね……』
『という事でスルーの方針で』
『畏まりました』

いやほんと、シロニャンって我々以外に価値を感じてないから、喧嘩売られたら普通に一撃で吹き飛ばすのよね。
ハリネズミ姿で一番得意なのは《竜魔法》です。って言っても面倒事にしかならない。そしていつもの幼女形態になって更に煽られ、"ブレス"ぶっ放す未来が見えるので、スルーで。信じないなら見せた方が早いってぶっ放すんだ、絶対に。
竜が人化で人の姿してるだけだから、当然"ブレス"は撃てる。と言うか幼女姿で尻尾ビタンビタンするだけで床抜ける。下手な建物なら崩れる。
ドラゴンは生物最強種である。間違いなく災厄だ。
しかもシロニャンは神竜の姿に、能力付きでなれる。それこそが《変化の秘術》の秘術たるところ。

基本的にシロニャンはシュテルにくっついて甘えているだけだが、10番世界ナンバー2はシロニャンである。
という訳で、実は一番危険な存在はシロニャンだったり。
ちなみにシュテルの一番最初の眷属でもある。


その後普通に座学が始まった。

「まず皆さんが戦うことになる魔物と魔王についてご説明しましょう」

魔物とは
魔力を扱う動物で魔物である。強くなると攻撃魔法を使う個体も出て来る。
身体強化魔法をデフォルトで使用するため、動物に比べ強い。
魔物は体内に魔石持っている。大きさは同じ魔物でも様々だが、討伐の証にもなる。そして魔石の用途は多いため、値段が安定している。

魔王とは
魔王に関してはよく分かっていない。
ただ、いくら倒しても100年から200年で復活する。
そして、魔王が復活すると魔物が凶暴化し、執着に人間を襲い始める。
魔王が復活すると魔物の見た目に分かりやすい変化があるため、すぐ分かる。
体に黒いオーラが纏わり付き、白目部分が黒に、黒目部分が赤になる。
変化し始めたらもう、数年のうちに復活すると思って良い。
既に影響が出始めているので、召喚を行った。

「と言ったところでしょうか。何か質問はありますか?」
「前回の魔王は何年前だったのですか?」
「ああ、それはですね……実は約370年前なのですよ……」
「ええ?」
「前回の魔王戦は激闘だったらしく、人類が激減したと残されています」

そして今回の魔王は約370年ぶり。激闘が予想されるが、勇者様がこれまでに無いほど多いから大丈夫だと予想しているそう。


戦う側からしたらなんの慰めにもなっていない気がするんだが。
しかも私の予想では激闘にはならんぞ。恐らく魔王フルボッコだろうよ。
勇者多すぎるもん。妾が動く必要もない。
まあ、世界にアクセスできる権限が無いんじゃそう考えるか。
ゲームでよくあるあれがおこりそう。ボスより道中の方がきついというあれが。
数人で1人を囲んで殴ればいいボスより、数が多い雑魚の方が辛いあれ。

まあ、別に言わなくてもいいか。
お昼を食べたら実技と行こう。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品