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[休止]第四王女は素敵な魔法幼女。

芒菫

過去のお話 ③

大門を越えると、沢山の人々の声や色々な香りが漂ってきた。

「街ってこんなに大勢の人々が住んでいるのですね!エル。」
人々の服装も、それはさまざまであった。
黒いコートを羽織っている人、藁で作った帽子を被っている人、花柄の髪飾りを付けている人、ふりふりの付いたドレスを身に纏っている人…‥‥…。
とにかく色々な人がいた。見ているだけでとても楽しい。
こんな場所があるなんて今まで思ったことも無かった。宮殿の頃の暮らしでも、祝いの日や祭りごとがあっても、いつも私は一人お庭で遊んでいるばかりだった。
お父様やお母様も、私の能力を他の人にみられると、不味いと思っていたのだろう。私だけ街には連れてくれず、いつもお話し相手になってくれていたのはリスのリップだけだ。
街の様子を聞くことが出来るのは、宮殿の庭園に遊びに来る鳥さんや虫さんだけ。
召使いや使用人にきいたって、街の様子や素晴らしさなんて、そんなこと1つも教えてくれなかった。
だからそれだけ、街と言う者の風景を見ることがとても嬉しくて仕方がなかったのだ。見るものすべてが新鮮でワクワクした。とにかく賑やかで華やかな場所で凄かったのだ。
感動して涙が出るくらいに………。

「ん、親方。どうしました?泣いてるみたいですけど・・・・。」

と、少し涙目になっている私にエルは心配そうに、質問に対しての返事を待っていた。

「あはは・・・。大丈夫ですよ。ふふ・・・。エルは本当に心配性ですね。」

今、隣には私のことを心配してくれる人がいる。だから、頑張らなくてはいけない。合格して、エルのことを喜ばせなくては・・・。

ー小妬坂中高付属学校
魔法学校は、街を少し抜けた先にあった。
丘の上にそびえる巨大な建物は、街からでも見ることが出来た。付属だから、その分建物も大きいのはなおさらであろう。
私とエルを乗せた場所は、小妬坂の校門の前で止まった。

「ここまででよろしいですかな。」

馬に乗っていたおじさんは、ニコッと笑い、そういった。

「ありがとうございました。すいません。わざわざここまで・・・。」

エルは深く頭を下げると、お礼を言ってお金を差し出す。
おじさんは「いいよ、いいよ。」と言うように、横に首を振ってお金を受け取らず、そのまま馬に乗った。

「それじゃ、頑張ってね。お嬢ちゃん」

「はい、頑張ります!」

私はそういうと、動き出した馬車に向かって手を振った。

「ありがとうございました!!」

と、声の張った私の声は馬車のおじさんにも届いたようで、手を振り返してくれた。
数分後には、馬車も全く見えなくなっていた。

「僕たちも、行きましょうか。」

「そうですね・・・。」

エルが歩き出すと、私もエルの横に並び、一緒に歩き出した。
校門を越えると、沢山の受験希望者やその保護者達が、校内へ向かって行っていた。
凄い、黒い服の人達が一人の女の子の周りを守るように歩いていた。

「なんであの人達は、あの女の子の周りを?」

「あれは、お偉いさん所のガードマンだと思いますよ。学校につくまでに、さらわれたりしないための一つの手段ですね。もし、さらわれたりなんかしたら元も子もないですから。」

「お偉いさんと言うのは、貴族の方々等ですか?」

「まぁ、殆どはそれもでしょうけど、有力な魔法使いの子供だってこの学校に入るのが普通ですから、そういう関係の人達の子供も、ああやって一緒についてくることは少なくはありませんね。」

物知りのエルは、何でも知っている。
聞けば何でも教えてくれるのだ。彼も、一人の魔法使いでこの学校が母校だと言っていた。
エルはいつもメガネをかけている。顔を洗う時も、お風呂の時も、寝る時も。まるで一人の家族の様にメガネをかけている。本人自身も、眼が悪いとは言っていたのだが・・・・。
魔法を使っている所も見たことがない。試験を受ける前に、一度くらい魔法を使っている所が見たかったなぁ・・・。
昇降口の前につくと、学校の先生が「保護者はここまでです。」と話していた。

「どうやら、私が一緒についていけるのはここまでの様ですね。」

エルは、微笑みを浮かべながら話した。

「エル・・・。」

「ん。なんですか?」

エルは、こちらに振り向き、言葉を返してくれた。
今の私は、沢山の人々に支えられてここまで来ているというのがようやくわかった。さっきの、馬車のおじさんについてもそうだ。


今だったら、頑張れる—


「わっわたし・・・。頑張ってきます!!」

単純で短い言葉でも、伝わる事は伝わる。実際に、思いを述べる時は、そのくらいストレートで伝わる言葉を選ぶのがよいのかもしれない。

「親方ぁ~。」

「だから、親方ってなんですか?!もし、合格したらその意味・・・。教えていただきますからね!」

少しずつ離れていく私に、エルは手を振って「はいはい。御武運を。」と言って見送ってくれた。
これまでの恩返しができるように、そして親方と呼ぶ意味を聞きだすことが出来るように、そして幸せを分かち合うことが出来ますように・・・。

私は、最初の一歩を踏み入れた。

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