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[休止]第四王女は素敵な魔法幼女。

芒菫

幼い娘の重い決断


-それは夏。

最高気温37度を観測した小妬坂市では熱中症対策に無料で水を配り、気温の変化を意識するようにと呼びかけていた。
それぐらい暑い日だった。

「親方~!」

聞き覚えのある声がした。後ろを振り向くと、見慣れたメガネの青年が私の方へ近づいてきた。

「親方~。ここに居ましたか・・・。探したんですよ!」

彼は相当長い時間、私を探していたらしい。彼の額ににじみ出ている汗の量と、呼吸の様子から見れば分かる。

「親方~。って、いつまで私を親方呼ばわりするんですか。私は貴方を監視下に置いた覚えはないですよ。シツコイのは女の子に嫌われます。」

「え・・・・。親方に嫌われるのは嫌だなぁ・・・。って、そんなことよりももっと大切な事があるんですよ!」

とにかく、蒸し暑い。馬鹿にならないほど蒸し暑かった。
そのせいで、遺産相続の件や実領地の決定やセフィロス家の当主の決定等の様々な事項が全く決まっていなない。彼はそう言った。
蒸し暑いのは仕方ない。夏だから。それでもなんとかならないかとそれも政策点として考える必要性がある。

「はぁ・・。そうですね。確かに遺産相続の件にはお父様がどう進めていくかにもよりますし・・・。でも何度も言いましたけど、なにがあろうと私が引き継ぐというのはないと思いますよ。」

私は冗談ではなく本気でそう言った。
だってそうだ。私の歳では誰でもお姉様やお兄様に遺産を相続させたいと考える。

「親方は・・・。お、親方だって、セフィロス家の第四王女!誰も権限が持てないと決めたわけではありませんし、決めてないわけでもありません!もっと考えてみてください。貴方を信頼している国民がどれだけいるのかを。」

彼は、冗談で言っていない私の本音に対してそう答えてきた。
確かに、権限が持てないとは決めた人はいない。でも、私は家族の中でも一番年下で11歳のヘッポコ幼女。私が権力者になるなんて一生有り得ない。権力者になるなら、のどかな場所で動物や植物、昆虫などを眺めながら過ごしていたい。

「でも、私は宮殿の方には戻りません。こちらの学校で、これからも沢山学んでいきたい事が色々ありますし。」

私はハッキリ、そう言った。心の中に残っている全ての気持ちを込めた言葉だ。
宮殿には絶対に戻りたくない。

「親方・・・。やはり、心変わりはしませんか・・・。」

「いいですか、エル。私はもう王国の人間では無いのですから・・・。」

ささやかな風が吹く。それと共に、エル・J・ストレージは小妬坂中高付属小学校の正門を後にした。
私の居場所はあそこじゃない。あそこにいることで命が狙われることになり、安心して生活が出来ない。ここではそれが出来る。安心して生活することが出来る。
だから、私は戻らない。過去には絶対、思い出したくない事件があった。


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