呪血使いに血の伴侶を。~マイナスからのスタートチート~

創伽夢勾

C13:吸血契約

 とりあえず、俺は言いたいことがある。

「なんだこの状況」
「うぅーん」

 メアが俺の声に反応して、頭を俺の胸にぐりぐりしてくる、
 どんな状況か、それは俺の胸の中で、メアが寝ているという状況だ。しかも俺の腕はメアの背中に回されており、ほとんど密着状態だ。
 俺の鼻には女の子特有のいい香りがしてくる。
 俺はどうにかメアの体の下にある腕を引き抜こうとする。

「んぅ? ごしゅ、じんさまぁ?」

 どうやら、起こしてしまったようだ。
 メアは目をごしごしこすった後。目を開いて・・・・・その青い瞳で俺をしっかりと捉えていた。

「あの、これは……その」
「と、とりあえず、離してもらってもいいですか?」
「わ、わるい」

 俺はすぐに手をどかし、自分のベッドの方に戻る。
 メアも起き上がると、俺の顔をチラチラと見てくる。
 やっぱりよく見るときれいだ。よく見ると、尻尾がブンブンと揺れている。

「ご、ご主人様! ありがとうございました!」

 メアは勢いよく立ち上がると、俺に向かって深く頭を下げた。
 というか、ご主人様ってやっぱり俺のことなのか?

「いや、頭をあげてくれ。俺はただ、したいことをしただけだ。俺にメアはもう奴隷じゃないんだから、ご主人様はやめてくれ」

 メアは頭をあげると、きょとんとした表情で俺を見てくる。

「やっぱり私は、捨てられるのですか?」
「は!?」

 メアの口から俺が予想していなかった言葉が出てきた。

「なんでそうなる。お前は自由なんだぞ? そもそも俺と奴隷契約なんてしてないだろ?」
「なら、もう一度私を奴隷にしてもらっても構いません。それで、ご主人様と一緒に居られるなら……」

 言ってる途中で恥ずかしくなったのか、メアは頬を赤く染める。
 俺は自分の顔が見えないのであれだが、きっと赤くなっているに違いない。気にかけていた子にこんなことを言われれば顔も赤くなる。

「いや、でも俺はメアを奴隷にするつもりはないな」
「そ、そうですか」

 尻尾もしゅんとなり、耳もペタンと倒れる。明らかに落ち込んでいることが分かる。
 俺はもう決意を決め、メアにこういうことにした。

「メア、俺の伴侶になってくれないか?」

 ほとんどダメ元だ。普通なら引かれてもおかしいぐらいのことを言っているのは分かってる。
 それでも、もう口に出してしまったものはしょうがない。それにメアのことが気になっていたことは本当なんだ。だから問題ない……のか?

「えっと……伴侶って何ですか?」

 あー、そこからね。

「伴侶って言うのは、その……ずっと一緒に居る人のこと? かな」
「それって」

 メアの顔がまた赤くなっていく。そして何かぶつぶつ言いだすとコクリと頷き。

「私でよければお願いします!」
「本気で言ってるのか? もうちょい考えたりしないのかよ」
「考える必要なしです」

 もうメアの中では何かが決まっているらしい。そんな風に思えた。
 ここまで言われたら俺から言うことは何もないかな。

「わかった。なら俺のことは、ハクって呼んでくれ。奴隷じゃないんだからご主人様予備はやめてくれ」
「なら、ハク様で」
「え?」
「なんですか? ハク様?」
「あ、もうそれでいいです」

 俺はメアに勝てない気がしてきた。
 俺はここで一度、昨日アーノに見せた血の能力について一通り見せることにした。

「これが、ハク様の固有スキルですか。なんというか、すごいとしか言いようが……」
「まぁ、その反応が普通だよな」

 俺は説明のために取り出した血を傷口から体内へと取り込む。
 ここからはアーノにも説明していない部分だ。

「メア、ここから先はアーノにも言ってないことだ。それとメアが大きく関わってくる」
「わ、私がですか?」

 俺はその問いに頷いて答える。

「このスキルの欠点は血がなくなることだ。ちなみに血がなくなれば俺は死ぬ」
「し、死んじゃうんですか?」
「あぁ、そこでだ。俺の固有スキルの中に吸血というものがある。他人の血を吸うことが出来るスキルで、血の残量を回復することが出来る。それともう一つ、血侶福音なんてものもある」

 俺はそこから少し長くなったが、メアに伴侶になってもらうことに当たって、血の提供をして欲しいこと、その吸血の行為中に伴侶になる了承をして欲しいことを伝えた。
 メアはそれらの話を真面目に聞きながら、しっかりと頷いてくれた。
 血侶福音はスキルのポイントなしでのやり取りを行うことが出来るスキルだ。
 俺がどのスキルを渡すとかは決めれないが、これから先戦っていくことになることは伝えてある。それを含めて役に立つスキルが渡ることを期待している。
 それを踏まえてここで一度、メアのステータスを見ておこう。

『メア・フェンリル 15歳 女
 LV:5
 種族 :銀狼種ダイヤウルフ
 称号 :元奴隷
  MP :100/100
 スキル:嗅聴強化:(種族スキル)
 補助 :なし
 スキルポイント:250pt
 才能ポイント:200
 装備 :布』

 まて、今初めて確認したが、才能ポイント高くないか? 俺は例外として確か一般50ptだった気がするんだが。
 あと、装備が布って……。
 とりあえず服をどうにかしなきゃだよな。歪空の指輪の中に何かは余ってた気がするしそれでいいか。
 まぁ、先に契約を済ませてしまうか。

「そうだな、メア。ここに座ってくれるか?」

 俺はそう言って、自分の膝の上をポンポンと叩く。
 メアは恥ずかしそうにしながらも、俺の足の上を跨ぎ、膝の上へと腰を下ろす。
 顔が至近距離で見える対面状態だ。

「今から、血を貰うぞ。少し痛いかもしれんが……」
「大丈夫です。気にしないで吸って下さい」

 メアはそう言うと、着ている布を少しずらし、首筋を露にする。
 俺は、確認を取ってから、その白い首筋に唇を宛がう。そして少し舐めてみる。

「ひゃっ」

 急なことに驚いたのか、すぐ横からメアの声が聞こえる。そして、もう一度口を触れさせて、大きく口を開く。
 すると、吸血のスキルが発動したのか、歯の形が変わったのが分かる。そしてそのまま、俺はメアの首筋に噛み付いた。

「あっ、うぅ……んぅ」

 メアの首筋から、血が垂れる。俺はその傷口から出る血を啜る。人の血なんて初めて飲んだが、この種族だからだろうか、このスキルのおかげだろうか、とてもおいしく感じる。
 俺が知恵お酢する間、横からメアの嬌声が聞こえる。あまり痛がってはいないようで安心した。
 俺は充分メアから血を吸った後。そっと口を首筋から外す。

「メア、俺の伴侶になってくれ。ずっと傍に居てくれ」

 俺の問いにメアは息切れし、顔を赤く染めながら、はいと答えた。
 すると、ピコンと俺の頭の中に音が響き、メアに噛み付き出来ていた傷が徐々に塞がっていく。
 どうやら、契約が完了し、俺のスキルの一部がメアに譲渡されたみたいだ。
 一応。自分のステータスと一緒に確認しておこう。

『メア・フェンリル 15歳 女
 LV:5
 種族 :銀狼種ダイヤウルフ
 称号 :元奴隷
  MP :100/100
 スキル:嗅聴強化:(種族スキル)
     自動再生:(C)
     短剣術:(E)
 補助 :二刀流:(E)
 スキルポイント:250pt
 才能ポイント:200
 装備 :布
 伴侶  :ハク・ブラッド・ドミネート』

 譲渡されたのは自動再生・短剣術・二刀流みたいだ。3つも向こうに行ったのか、それに自動再生のスキルはランクが高い。俺の持ってランクがそもそもSって言うのが大きいのかもな。
 それと、俺のにもだがステータス欄に伴侶とか言う項目が増えている。
 俺の奴にもしっかりメア・フェンリルと記載されている。

 そのメアはというと、ぐったりとして、俺の体にもたれかかっている。
 まぁ、辛そうではなさそうだし問題はないと思う。しばらくはこうしていよう。

「メア、これから先、よろしく頼む」

 俺がそう言葉をかけると、かすかにメアが笑った気がした。



コメント

  • ノベルバユーザー19204

    ノアがハーレム入るまで続くことを願ってます

    1
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