呪血使いに血の伴侶を。~マイナスからのスタートチート~

創伽夢勾

C12:治療と決意

「メア。もし。その目と喉を治す方法があるとしたらどうする?」

 俺の問いにメアは驚きの表情をする。
 それはそうだ。自分が苦しんできたこの状態を治す方法があると言えば誰だって驚く。
 だが、俺がしようとしている方法には危険が伴う。
 それを分かって貰うためにまずは俺の話をしよう。

「よく聞いてくれ。まず、俺はこの世界の人間じゃない」

 俺はこれをはじめに、メアに俺に関するほとんどのことを話した。
 異世界から来たこと、俺の血が呪われていて危険であること、一度死を経験したこと、そしてノアに会った事、アーノにも話していない血のスキルについて、今の俺の目的。もちろん血の伴侶を探していることも含めてだ。そして俺が今からメアにしようとしていること。
 メアになら話していいかなとそう思えたから話せたことだ。
 メアは俺の話に相槌などの反応を示しながら、辛い話になった時は自然と俺の頭を撫でてくれていた。

「みっともないところも見せたが、俺はメアを助けてやりたい。けど、さっきも言った通り危険が伴う。だからこれから先はメアの判断に任せる」

 すると、メアは俺の手を握り、俺を見つめると意を決したようにコクリと頷いた。
 俺が今しようとしていることは、血の性質を変え、回復薬にすることだ。

 ここに来るまでに、アーノにメアを治す方法がないかを聞いた。すると、アーノの口からエリクサーという言葉が出てきた。
 それは人の失くした部位をも修復すると言われている極上の回復薬だそうだ。だが、その貴重さもあり、人目の付くところではほとんどやり取りされない。手に入るかどうかわからない薬だった。
 俺はそれを聞いて、この血の性質を変えれば、怪我などを治せる薬になるんじゃないかと考えた。
 俺は血の性質を変えようとした、だがそこで問題が発生した。
 それは呪いだ。何度も言うが俺の血は呪われている。きっと口に含めば激しい痛みに襲われるだろう。内側で何処かを傷つけて最悪死ぬかもしれない。
 その死に方をしたのが、俺を殺した犯人だからな。
 こんな方法ぶっつけ本番で試せる度胸は俺にはなかったからな、俺はこの町に来る道中で、アーノたちにばれないように、瀕死に陥った魔物に血を飲ませてみた。
 すると、傷ついていたはずの傷が治り始めると同時に魔物は苦しみだす。その苦しみは怪我が治ってもなお続いた。やがて魔物は、傷を治したがそのまま気絶した。
 死ぬことは無かったが、相当な痛みがあったはずだ。
 それをメアが耐えられるかが、心配だった。
 だが、メアが俺の手を握る力を強める。強く懇願するように。
 俺はそれを感じて、これを実行することに決めた。

「メアの覚悟は分かった。なら俺もそれに応えなきゃな」

 俺はメアの隣へと座る。メアの肩を持ち、こっちへと向かせる。俺は指輪に魔力を込めて刃を出現させると、右手の人差し指の皮膚を切る。

「メア、今から相当な痛みが君を襲う。心の準備はいいか?」

 メアは俺の問いにコクリと頷く。俺はメアに口を開けるように指示し、その開いた口に俺は人差し指を入れた。
 俺の指から落ちる血はメアの舌へと触れる。
 その瞬間メアに痛みが襲ったのだろう。ビックリしたのか、メアは俺の指を噛む。
 少し痛いが、気にしない。
 俺はそこから必要量、血をメアに流す。痛みに耐えるためか、メアは俺の着ているローブをきゅっと握る。
 俺は刃を仕舞い、左手をメアの頭の後ろへと回す。
 そして、必要量流したことを確認して、右手の人差し指をメアの口から引っこ抜く。

「あ”がぁぁ”」

 メアの口から、苦悶の声が出る。そう声が出たのだ。
 だがメアはそれどころではない。痛みにもがき、苦しむ。血の再生させようとする力と傷つけようとする力が同時に働いているのだ。
 俺は暴れようとする、メアの頭を左手で、こちらへと引っ張る。そのままメアの頭は俺の胸へとすっぽり収まる。
 尻尾がブンブンと揺れ、もがいた末にメアの爪が俺の腕の皮膚を引っ掻く。
 俺はそれでも強く、安心させるようにメアを抱きしめる。
 メアは俺の胸に抱きしめられながら、それでも声をあげた。

 あれからどれだけの時間がたっただろうか。
 俺の胸の中では、すやすやと寝息を立てているメアがいた。
 生きている。大丈夫だ。俺はメアを失うことなく助けることが出来たのだ。
 俺はメアをベットに横たわらせる。すると、突然俺の体に疲労感が押し寄せてくる。
 そして意識が少しずつ遠のいていく。

「やばい。血を使い過ぎたみたいだ」

 俺はそのまま、メアの横で気を失った。

 血の残量70。



 私は気が付くとベッドの上に横になっていました。
 まだ、あの全身を駆け巡るような痛みの感触が少し残っています。
 私は、体の体制を変えるために寝返りを打ちます。

「きゃっ」

 すると、私は何かにぶつかり、驚きのあまり声をあげてしまいました。
 声が……でる?

「あー、あ……」

 喉を触りながら、恐る恐る声を出すと、確かに私の口から私の声が出ました。

「まさか……」

 私は、ご主人様の言葉を思い出しました。

『メア。もし。その目と喉を治す方法があるとしたらどうする?』

 という言葉を。目と喉とご主人様は言いました。そして今、喉が治っています。私は、あれ以来開くことのなかった目を、ゆっくりと開きます。
 私の視界に入ったのは、布団と、横で寝ている男の人でした。

「ホントに、ホントに治ってる」

 私は自然と、目に涙を貯めていました。
 目の前で寝ている男の人がきっと私を救ってくれたご主人様なのでしょう。
 私は涙を拭いながら、状況を確認します。
 黒髪で、白と黒のローブを羽織っています。あのまま疲れてここに倒れ込んだということでしょうか?
 私は起き上がり、自然とご主人様の頭を膝の上に乗せていました。こうしたいと思ってしまったのです。

「この手が、私を守ってくれた温かい手。私を撫でた手」

 狼種の中では、頭と尻尾は結婚すると誓った相手にしか触らせることはありません。
 まぁ、もう撫でられてしまいましたが。それでもあれは不可抗力。ノーカンです。
 でも、撫でられてもいいかなとも思ってしまいます。やはり私はご主人様のことが好きになってしまったのでしょうか?
 寝ているご主人様の手をポンと頭の上に乗せてしまいます。
 大きな手、それがご主人様の手だと思うとどこか心地いい。

 すると、突然私の体が倒されます。いつの間にか私は横になっていて、ご主人様の胸の位置に頭が来ていました。

「ご、ご主人様!?」

 声を出して、どういう用件かを聞こうとすると、聞こえてきたのは……。

「すー、……んぅ」

 ご主人様の寝息でした。がっしりと私を抱きしめる腕は私を離してくれはしないようです。

「こんなのも悪くないのかな?」

 私はご主人様の胸にぐりぐりと頭を蹲りながら、そのまま寝ることにしました。

「おやすみなさい。ご主人様。奴隷でなくてもあなたは私のご主人様です」

 そのまま目を閉じると、自然と意識は眠気に負けて、私は眠りについた。


「呪血使いに血の伴侶を。~マイナスからのスタートチート~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く