呪血使いに血の伴侶を。~マイナスからのスタートチート~

創伽夢勾

C9:少女の想い

 私は今、男の人に力強く抱きしめられています。
 その人はとても暖かくて、優しくて私の為にここまでしてくれたお人好し。
 そんなこの人に抱きしめられた私は自然に手をこの人の背中に回していた。



 私は小さい頃から親がいない。そして私の住んでいた場所は狼種の集落だ。
 狼種の中にもいろいろいるが私はその中でも銀狼種ダイヤウルフだった。
 この集落の中でたった一人の銀郎種。
 それを聞いただけでなんとなく察しはつくと思う。
 狼種は元々縄張り意識が高い。そんな中に一人でいれば当然迫害される。
 しかも私は小さい頃に目と喉を壊してしまった。いや、壊された。
 聞く事しかできない私は、何を言われてもそれに反応する手立てが首を振ることしかなかった。
 目も見えないため歩いていると誰かとぶつかり、そのたびに嫌味が飛んでくる。酷い時は暴力を振るわれた。
 だが、私がこの集落の外に出ても行く当てもなければ一人で生きていける自信もない。
 こんな不自由な私を必要としてくれる人もいない。
 出来事が起こったのはその次の日だ。


 この集落でよく粋がっている黒狼種ブラックウルフの女3人に私は森で食べ物を取ってくるように言われ、無理やり集落の外に追いやられた。
 目の見えない私に一体どうしろというのだ。
 目が見えなくても昔の感覚で歩くことはできる。だが、森の獣道を歩いて、獲物をしとめて返ることなんてできるわけがない。
 それでも行くしかないのだ。帰っても待っているのは暴力だ。
 私は持たされた短剣一本を持って、森を進んだ。

 私は狼種の中でも耳がいい方だと思う。
 そんな私の耳に草が揺れる音が聞こえた。私が音のした方に寄ってみると、聞こえたのは男の人の声だ。
 その男の第一声は「獲物を見つけた・・・・・・・」だった。

 私はその声を聞いてすぐに後ろに走った。
 狼種が、人種に速さで負けることなどそうない。もちろん、私みたいなハンデがなければの話だけど。

 私は目が見えないまま、歩いてきた道を記憶を頼りに走った。後ろからは私を追いかけてくる足音が3つ。
 がしゃがしゃと金属のこすれる音が聞こえた。それは私に武器を想像させた。
 その時だった。私が木の横を抜けようとしたとき、右足を木の根っこに引っ掛けたのだ。
 私は体勢を崩し、思い切り前へとこける。
 あとはとんとん拍子に事が運ばれた。

 私は拘束され、首には奴隷用の首輪。主は奴隷のステータスを見ることが出来る。そこで、名前を暴かれ、契約書が作成された。
 それから1週間。服は奴隷用の物へ、食事は最低限。あれから私は馬車によって町へと運ばれていた。
 私は布に包まり、ただただ、馬車に揺られている。
 夜、私を捕まえた男たちの話が聞こえてきた。これから私は、貴族に売られるそうだ。それも、変態趣味のおじさんだという。それを聞いただけで鳥肌が立った。声が出せなくて、耳が聞こえないのがいいのだそうだ。
 私は確かに必要とされることを望んだ。けど私が望んでいたのはこういうことではない。
 こういったものに奴隷が買われることも多いらしく、私は処女のまま売られるそうだ。そんな商人の言葉に冒険者の舌打ちが聞こえていた。
 もう嫌だ。
 そして、私の運命を変えたのがこの次の日だ。


 馬車が走り出してすぐ、男たちが騒がしくなった。話に耳を傾けると、どうやら狼型の魔物に追われているそうだ。
 対峙するのはやめて馬車は全速力で町に向かって射るみたいだ。
 だが、スピードを上げたその時。馬車の車輪が大きな石の上を無理やり上り、車体が大きく浮く。
 そして着地した衝撃で、私は馬車の外に放り出された。
 私は地面に打つ付けられ、そのままゴロゴロと転がる。すると、私のもとに駆けてくる足音が聞こえる。
 馬車のスピードで離されていた狼たちだ。
 私は死を覚悟した。いや、死を望んだ。でも体は思考と違って勝手に動く。
 狼から離れるように体を引きずる。でもそんな程度で、狼から離れるわけなく。ついに足音は目の前から聞こえていた。
 そして、狼の鳴き声と共に足音が消える。こっちに向かって飛んできてるのだろう。
 私が何もかも諦めたその時。
 目の前からぐちゃっと何か肉を抉るような音共に狼の断末魔が聞こえた。
 だがすぐにもう一匹の狼が私に迫ってきていた。
 それと同時に私の近くにたんっと狼とは別の足音が聞こえた。さっきまで、私の耳には狼の足音しか聞こえていなかったのにだ。
 すると、近くから男の人の声が聞こえた。反射的に私の体は震えた。
 男の人が何かをつぶやくと、何かがぶつかる音と共に狼の悲鳴が聞こえた。
 その後男の人は私にこういった。

「大丈夫だ。すぐ終わるからそこで待っててくれ」

 と、その後は私の耳には武器を振る音、狼の断末魔しか聞こえなかった。
 そして狼を殲滅し終わると、男の人は私の近くに寄ってきて私の心配をする。
 この人の名前はハクというらしい。さっきの人たちとは違い。優しい声で私の心配をしてくれる人。
 これが私とこの人の出会いです。


 すると、もう一人男の人の声が聞こえてきました。
 あの男共とも、このハクという人とも違う別の男の人の声が。
 どうやらこの人の連れの人らしい。
 いろいろ話して私はこの人の奴隷になることに決めました。
 助けてもらったりしたことも含めて、貴族に買われるよりか、私を助けてくれた、私を心配してくれるこの人についていきたいと、そう思えました。
 私なんかの為に仲間内で喧嘩するのはやめて欲しいです。
 奴隷ということは私はこの人のことをご主人様と呼べばいいのかな?

「俺と契約してくれるか?」

 その言葉に私は頷いた。すると私の腕がもう一人の男の人に捕まれました。掴まれたと言っても乱暴にではなく優しく。
 そのまま私の手は男の人によって導かれ、その先で何かに触れました。
 これはきっとご主人様の手なんだ。その手はとても暖かくて私の手をやさしく包んでくれる。
 私は勢いよく引っ張り上げられました。その勢いを殺しきれず前に倒れそうになったところをご主人様によって抱き留められました。
 ものすごくいい匂いで、とても暖かい。
 そんな気持ちの良い微睡の中にいると、私の耳に足音が聞こえ始めました。人の足とは違う馬の足音が、それと同時にガタゴトと馬車が走る音も。
 私はその音にいやな予感を感じました。
 近づいてきて、その声を聞いて私は絶望を感じた。なざならその声は商人の声だったから。



 シャキンっと武器が抜かれる音が聞こえます。
 ご主人様は商人の話を聞いても、私を渡す気はないようです。そのせいで、あの男たち3人と対峙することになってしまいました。
 私を渡せばこんなことにならずに済んだのに。私はそう思うことしかできませんでした。
 目の見えない私は音を聞く事でしか状況を判断できません。
 ご主人様が私を預けてから、戦く音を聞く限り、優勢とまではいきませんが1人で3人と互角以上に戦っているみたいです。
 私の横からは男の人がつばを飲み込む音が聞こえます。ご主人様を心配しているみたいです。
 私もさっきまでの感情は消え、ご主人様に生きてほしい。勝ってほしいと思うようになっていました。



 男の人が私の傍を離れたから少し、どうやらご主人様が勝ったようです。男の人が血相を欠いて、走っていったときは心臓が止まるかと思いました。
 ご主人様は私の前で、武器を振るいました。それと同時に私が首に感じていた重みが消えました。
 私はすぐに首輪がないことを確かめました。
 すると突然、前から衝撃が来ました。どうやらご主人様に抱きしめられているみたいです。力強く私を抱きしめるご主人様は私の耳元でこんなことを言ってきます。

「もう大丈夫だ。もう君を縛るものはない。だから安心してくれ」

 と、その時、私の感情が爆発しました。
 私は何とか、ご主人様にばれないように涙をこらえながら、ご主人様を抱きしめ返しました。

 この時私は奴隷というものから解放されました。ですが私の気持ちはもう固まっています。
 こんなにも私を心配してくれるご主人様の元を離れたくない。一緒に居たいと。
 集落でこんな話を聞きました。

「一緒に居たいと思える人が好きな人だよ」

 という話を。それを今考えるとそうかもしれない。
 私はそんなことを考えながら、ご主人様に身を委ねました。


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