呪血使いに血の伴侶を。~マイナスからのスタートチート~

創伽夢勾

C7:可能性

「は? 奴隷だと?」
「あ、あぁその首輪が何よりもの証拠だぜ」

 アーノは少女の首にある大きめの首輪を刺して言う。

「その感じだと契約もされていないな。お前この子どうするつもりだ?」
「この子、声が出せなく目も見えないみたいなんだ。だから町までは連れて行こうとは思ってる」
「それはやめとけ」
「アーノ、お前俺にこの子を見捨てろってか?」

 俺が声を張り上げて言うと、少女はビクンとする。

「待て待て、誰も見捨てろとは言ってない。契約していない奴隷を町に連れて行くのをやめろと言ってるんだ」
「は? どういうことだ」

 俺はアーノにその理由を聞いた。
 アーノが言うには奴隷は契約していない状態だとノラ奴隷として扱われ、見つかった場合はすぐに奴隷商に渡され市場に流されるか、逃亡奴隷扱いとして殺される場合まであるそうだ。

「お前、この子が殺される可能性があるのに連れていくのか?」
「それは……」

 すると、俺のローブの裾が引っ張られる。
 俺が後ろを向くと、少女が俺のローブを引っ張っていた。
 少女は俺を指さすと、そのままその指を自分の首輪に触れさせる。
 この子は耳は聞こえているので、俺とアーノの会話が聞こえていたんだろう。

「きっと説明して連れて行けば、ノラの奴隷として奴隷商に引き渡されるだろう。けどこの年の女の子にとってそれは辛いだろ? 誰に買われるかわからないし、どんな扱いを受けるかもわからない。俺は短い間だが、お前を見てそんなにひどいやつには見えなかった」

 アーノは俺を見て真剣に喋り続ける。少女もそのアーノの声に耳を傾けていた。

「俺は奴隷とかそれらをあまりよく思っちゃいない。だからこの子が酷い扱いをされると思うと気が気じゃない」
「なら、なんで俺なんだ。お前が契約してやればいいんじゃないか」
「ちっちっ、お前自分のことを気づいてないのかよ。お前があの崖から布を見たときの表情はすごかったぞ? 元々俺が奴隷を嫌いって言ってるのに俺が奴隷を持っているのはおかしいだろ? それになお前この子を見ろよ」

 俺はアーノに言われて女の子を見る。改めてみるとこの子は綺麗だ。少し体に傷もあるし、体は汚れている。だが自然と目を惹かれる。
 少女は目が見えないはずなのに俺の方を向いている。

「ふっ、やっぱりなお前この子のこと気に入ってるだろ?」

 アーノの不意な言葉に俺はびくっとする。アーノを見るとその表情はニヤニヤしている。
 そして俺がもう一度女の子を見ると、わずかだが頬が赤くなっていた。

「それにな、さっきの行動もそうだがこの子はお前と契約したい見たいだぞ?」
「そうなのか?」

 アーノに言われ、俺は女の子にそう聞いた。
 女の子は俺の問いにコクリと頷くことで肯定を現した。
 こう女の子も言ってるんだ。それに、このままこの子が他の奴にわたるのは嫌だ。
 俺は自然とそう思っていた。そして決意を固める。

「わかった。俺と契約を結んでくれるか?」

 俺は立ち上がり、女の子に恐る恐る手を差し出す。
 女の子は受け入れてくれるとは思っていなかったみたいで、でも目が見えていないため俺が手を差し出してもそれに気づいていない。
 すると、アーノが俺の横を抜け、女の子の腕を取るとその手を俺の手の上へと乗せた。
 俺はそのまま、女の子の手を握ると引っ張り上げる。
 女の子は立ち上がるが、勢いが強すぎたのか、俺の胸にすっぽりと納まってしまった。

「おーい、俺を置いてイチャイチャするのは勘弁してくれ」
「誰が! ってそれより、奴隷契約とかどうやるんだ?」
「あっ、考えてなかった」
「おい!」

 俺がアーノに向かって怒鳴ると、奥の方から何か来るのが見えた。
 ごとごとと音を立てて、見覚えのある馬車が、こちらに向かってくる。
 そう、その馬車はさっきこの子を落として見捨てた馬車だ。

 そしてその馬車は俺たちを見つけると、少し距離を開けて止まる。
 その馬車から降りてきたのは、商人のような奴が一人と武器を持った冒険者らしきものが3人。

「おー、あの状況で生きていたか、お前たちが助けてくれたのか?」

 商人らしき男が、顎を触りながら俺たちに聞いて来る。
 そして、その商人の声を聞いた瞬間、俺の胸の中にいる女の子が明らかに震えだした。

「まぁ、そうだな」
「それは助かる。そいつは声も出せないし、目も見えないが、その容姿は真面だ。そんなこいつを欲しいという貴族がいるのでな。虐待趣味でもあるんだろうかね? あそこに買われた奴隷はいい結末を迎えていないな。それでもいい値はつけてくれるんだ。いいから早くその娘をこちらによこせ」

 商人は喋るだけ喋ると俺に少女を渡せと言ってくる。
 横を見ると、アーノが怒りで力強く拳を作っている。そう言う俺も、自然と女の子を抱きとめる手に力がこもっていた。
 気づくと、女の子の震えは止まっており、俺の胸の位置から顔を上に向けていた。

「早くしろ! 時間がないんだ。その娘を渡せ」
「この子が、お前のものであるという証拠は?」

 これで言い逃れできるのなら、楽に越したことは無いんだが……。
 そう上手くも行かないみたいだ。
 男は懐から紙を取り出し俺たちに見せる。
 それは契約書みたいなものだった。そこにはこの子の名前と指の押し印と契約者であるこの商人と思われる名前が書いてあった。
 メア・フェンリル。これがこの子の名前か……。

「これが証拠だ。これがある限りそいつの身柄は私の管理下に置かれる。どうだ、わかったか! わかったならさっさと引き渡せ!」

 俺はここで一つの可能性が思い浮かんでいた。
 俺は、小声でアーノに尋ねる。

(もし、無理やりこの首輪を外したらどうなる?)
(この首輪は今の状況だとあの契約書と繋がっていて、無理やり外すと魔法が発動して爆発する)

 と言うことはやはり、無理やりはダメだということで、あの紙さえ無くなればいいんだ。

「ええい、面倒だお前ら!」

 男はついに痺れを切らしたのか、冒険者共に声をかける。

「ここで、こいつらが死んでもそこに転がってる狼共に殺されたと言い訳もできる。間違っても娘は殺すなよ」

 商人の言葉に男共は武器を取り出す。
 俺は女の子を引き離すと、アーノに預ける。

「アーノ、この子を頼む」
「お前まさか……」
「俺はこの子のご主人様なんだろ? なら、事の始末は俺が着けないとな。あっ、秘密は守ってくれよ」

 俺はそれだけ言うと、少し前に出る。アーノは俺の言葉を聞いて、少し離れてくれる。

「はっ、お前みたいな餓鬼が俺たちに勝とうってか?」

 先頭の男がそんなことを言ってくる。
 俺はそっと鑑定眼を発動させる。

『レクト・アルドバート
 LV27
 称号 :冒険者
 種族 :人種
  MP :200/200
 スキル:剣術 :(C)
     盾術 :(C)
     格闘術:(D)
 補助 :見切り:(D)
     間合い:(E)
 スキルポイント;0
 才能ポイント:75』

『スーベル・エイト
 LV24
 称号 :冒険者
 種族 :人種
  MP :170/170
 スキル:槍術 :(C)
 補助 :突撃 :(C)
     間合い:(D)
     踏ん張り:(C)
 スキルポイント;40
 才能ポイント:60』

『ニック・ハーデル
 LV23
 称号 :冒険者
 種族 :人種
  MP :370/370
 スキル:杖術 :(D)
     火魔法:(C)
     風魔法:(D)
 補助 :回避 :(D)
 スキルポイント;45
 才能ポイント:65』

 前衛、中衛、後衛と組み合わせはいいな。
 アーノより少し弱いぐらいの奴が3人か。まぁ、何とかなるだろう。
 俺は理不尽が嫌いだ。俺を含め、俺の周りの奴に起きる理不尽も嫌いだ。

「だから俺はこの理不尽を許さない」



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