呪血使いに血の伴侶を。~マイナスからのスタートチート~

創伽夢勾

C6:奴隷少女

 崖の上から見えたのは、馬車が一台後方から近付いて来る。そしてそれを追う狼型の魔物5匹。
 明らかに襲われている。馬車は俺たちの居る崖の下の道を通り過ぎていく。方向的にはまちに向かっているようだ。

「アーノ。あれって……」
「あぁ完璧に襲われてるな」

 誰がどう見ても襲われている。
 まだ、崖を降りて全速力で向かえば間に合う。助けることが出来るかもしれない。
 俺が顎に手を当て悩んでいるとアーノが喋りかけてくる。

「お、お前まさか。ここからあれを助けに行こうとか思ってないよな? な?」
「いや、悩んでるんだが」
「いやいやどこに悩む要素があるんだよ!」

 馬車は
 すると、馬車の車輪が大きな石を踏み車体が大きく揺れる。そして馬車の後ろから布に包まれたものが地面へと落ちる。
 さすがにアーノを巻き込むわけにもいかないと思い、諦めようとしたその時。地面に落ちた布の正体が分かった。
 そして俺は決意を決める。

「アーノ、すまん」
「お、お前……」
「先に行ってるよ。後でゆっくり追ってきてくれ。それと頼みがある」

 俺はアーノに目を向ける。アーノの表情は困惑と言った感じだ。
 だが俺の真剣な表情を見ると、決意を決めたように俺を見返してくる。

「これから見ることを、秘密にとは言わない。だができるだけ広めないでくれ!」

 俺は頼むだけ頼んで、右手の親指を噛み、皮膚を傷つける。
 そのまま血をアーノの前で操作する。血を靴に付着させ、俺は魔法名を紡ぐ。

雷瞬ライシュン

 俺は一気に加速し、崖から飛び降りる。
 こうしている間にも、布へ狼たちが迫っている。
 馬車は、あのまま戻ってくることもなく。布を置いて街の方へ向かっている。
 馬車の方は遠く離れて行ってしまう。だが、幸い布との距離はまだ近い。

「ちっ、もったいないけど仕方がない!」

 俺はさっき出した血を小さめの球体にして3つほど作る。そしてそれを周りに浮かべ、思い切り、崖の壁を蹴る。
 このまま地面に落ちたら、死にはしないものの怪我はするだろう。そして何よりこのまま落ちて、怪我がなくても距離的に間に合わなくなる。

 俺は浮かべた球体を少し前へ移動させ、血性変化を使う。性質を液体から個体に、効果を施す。
 血性変化を使用した血は血液操作で操作することはできない。俺が性質を変えた時点で、この球体は地面に落下していく。
 俺はその硬化した血の玉を足場にした。
 その操作を計三回。出来るだけ歩幅は大きく。丁度三回で、布の真上まで来ることが出来た。
 あとは簡単だ。ただ、狼を殺すだけ。
 血の玉に乗って移動していたおかげか、高度もちょうどいい具合になっていた。

 狼と布の距離はもうほとんどなくなっていた。
 俺は右手の親指から一気に血を取り出し、血液操作で武器を形成する。
 形成するのは槍。形成した槍をすぐに血性変化で武器化する。
 俺が槍を作り終わり、体も自由落下を始めるころ。一番先頭の狼が布に飛びかかる体勢になる。
 俺は武器化した槍を逆手に持ち。真下に投擲する。
 投擲する位置は布と狼の間、布よりにだ。布はわずかながらにもぞもぞと動いていた。
 狼はその布へと飛びかかる。布へ触れる直前、槍は真上から狼の体を貫き地面へと突き刺さった。
 すると、もう一匹の狼が布へと飛びつく。それと同時に俺も地面へと着地する。
 目の前には俺目がけて飛び込んでくる狼。
 俺はすぐに目の前の槍の血性変化を解き、液体へと戻す。そしてさらに俺は右手を狼に向けて突き出し、紡ぐ。

血ノ殻盾ブラッディシェル

 その言葉と共に、さっきまで槍の形状をしていた血が俺と狼の間に円状の盾を形成する。
 狼は案の定、壁へと激突。鳴き声を上げて後ろに下がる。
 そして俺はこの布の正体をようやく確認することが出来た。

 銀色の長い髪に頭の上には髪と同じ色のケモ耳。首には太めの首輪。歳は13.4あたりだろうか、そんな女の子が布に包まれていた。
 布にくるまり、明らかにおびえている。
 俺が崖の上から確認できたのがこの綺麗な銀色の髪だ。それに気づくことが出来た。

 さてそろそろ、血の壁の奥が気になりこっちに狼たちが来る頃だろう。
 俺は女の子に近づき布の上から頭をひと撫でする。
 急に頭を触られ、女の子はビクンとする。

「大丈夫だ。すぐ終わるからそこで待っててくれ」

 俺は女の子にそれだけ言うと立ち上がり、血の壁を元の血へと戻す。その血は俺の意志に従い、俺の周りを漂う。
 俺の前には4匹の狼型の魔物。俺は漂う血を槍の形へと変え武器化する。
 俺の右手の槍が出来上がり、それを狼へと向け構える。
 先に動いたのは狼の方だった。俺は飛びついてきた狼の喉に槍を的確に突き刺す。
 そしていつの間にか俺の後ろに回ってきた1匹は背後から俺に飛びかかってくる。俺は突き出した槍を戻し石突を狼の額へとぶつける。
 そのまま槍を縦に1回転、形状を槍から薙刀へ変える。
 下から上へと切り上げられるように狼の首が飛ぶ。

「残り2匹」

 薙刀をブンブンと回し、俺は狼に近づいていく。1匹の狼が動こうとしたとき、俺は一気に距離を詰め、薙刀の間合いぎりぎりまで迫る。そのまま薙刀を槍へと形状を変え、体ごと一突き。
 槍は狼を貫き、俺は槍に突き刺さっている狼をもう一匹の狼に向かって投げる。
 急な出来事に驚いたもう一匹の狼は、右に飛び、死体を回避する。
 俺はそれを読み、槍を着地予想地点へと投擲する。
 その予想は見事に的中し、狼は投擲された槍により貫かれた。

「これで殲滅完了かな」

 俺は槍を血に戻し、体内へと回収する。
 そのままステータスを確認した。

 レベルは4上がり、血液の量が300まで減っていた。
 もう血液の残量が半分しかない。

「もう無駄使いは出来ないな」

 俺は布の元へと向かう。
 そこにはやはりおびえた様子の銀髪ケモ耳美少女がいた。
 女の子は目をずっと閉じている。

「お前まさか目が見えないのか……」

 女の子は俺の声が近くで聞こえてきたことに驚くが、わずかに首を縦に振った。
 俺に怯えているのか、狼に怯えていたのかはわからないが、俺はまた女の子の頭を撫でた。
 すると、女の子はまたびくりと反応し、だが嫌がる素振りは見せない。
 しばらく撫でてから、落ち着きを取り戻した女の子に話しかけた。

「俺の名前はハク。今の状況については分かってるか?」

 女の子は首を縦に振る。

「じゃあ説明できるか?」

 女の子は次は首を横に振った
 すると女の子は手を動かす。
 女の子は左手を喉に手を当て右手を口の前で開いたり閉じたりする。その後、両手を目元までもっていき、ぽんぽんと叩く。
 女の子はそのまま腕を顔の前までもっていき斜めに交差させた。

「お前、目が見えなくて、声も出せないのか?」

 女の子はその問いに肯定と言わんばかりに首を縦に振った。

「おーい。ハク! 大丈夫か?」

 俺たちが来た方角から、大剣を担いだアーノが走ってくる。
 女の子は他の声が聞こえてきたことに驚き、近くにいた俺のローブの裾をぎゅっと掴んできた。

「大丈夫だ。あれは俺の知り合いだ」

 アーノは近くまで来るとようやく女の子に気づいた。
 そしてこういった。

「お前、その子奴隷じゃねーか」と


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