二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、貴族になる。

何やかんやあったが、俺たちは王城にたどり着いた。

「何か色々あったがもう叙勲式か……」
「だね、なんか緊張してきた……」

俺とユーリは、刻一刻と時間が近づくにつれて口数が減っていった。
それに比べてイリーナは、落ち着いている様子だった。

「おいイリーナ、何でお前そんな落ち着いてるんだ?」
「なんでって言われてもねぇ、緊張しないからよ」

これはあれだ、転載は自分の才能をすごいと思わないやつだ。
そんなことを思っていると、党と応訴の時間がやってきてしまった。

「シード・グリシャス様、並びにユーリ・グリシャス様、イリーナ・グラン様ご入場!!」

重厚な扉が開き、俺たちは無数の拍手と刺すような視線に迎えられた。
俺たちは、国王の前まで歩いて行きそこで片膝をつき頭を垂れる。

「シード・グリシャス、ユーリ・グリシャス、イリーナ・グラン、頭を上げよ」
「「「は!」」」
「そなた等の此度の働き誠に見事であった。その働きに敬意を表し龍王勲章に叙す」
「「「謹んでお受けいたします」」」

俺達は順番に龍が刻まれたペンダントを首にかけられる。

「皆の者良く聞け!!此度龍王勲章に叙したシード・グリシャスには私が個人的に礼を言わねばならぬことがある」

うん?王様から直々に礼を言われることなんてした記憶が無いのだが……

「ニーア、前に」

そういわれて出てきたのは、勿論あのニーアだった。

「そなたは、二度も我が愛娘ニーアを救った。心より礼を言わせてもらう」

国王は俺に頭を下げる。

「国王様、頭をお上げください。私はこのようなことのためにニーア様を助けたのではありません」
「そういってもらえると助かる。しかし、これで終わりというのは王家のメンツがたたぬ。シード・グリシャス、そなたはライングランに住んでおったな」
「はい」
「であれば、そなたに男爵を与えライングランの屋敷を授ける」
「こ、光栄であります」
「お父様!!」

拍手に湧く会場に、ニーアの声が響く。会場が一瞬で静かになった。
まさに鶴の一声である。

「どうした?ニーアよ」
「私は、一度ならず二度もシード様に危ないところを救っていただきました。その姿はさながら白馬に乗った王子様のよう……」

それを語るニーアは恍惚とした表情を浮かている。それはさすがの俺でもわかる恋する乙女の表情だった。

「そ、それはどういうことだ?ニーア」
「私、ニーア・フォン・エスティアは、シード様の婚約者となります!!」
「「「「は?」」」」

俺たち三人と王様は、オン繰りと口を開けて呆けていた。
ニーアはするすると人込みをすり抜けてきて、俺の腕にしがみつく。
その瞬間、その部屋の温度が十度は下がった。
なんせ、俺の後ろに二体の般若が現れたからだ。

「「はなれなさいよ」」

その声は、普段の二人からは考えられないほど、冷たい声だった。

「お、おい落ち着け。ニーア様も離れて下さい」

俺は、二人を諭しニーアを引きはがした。

「いいですか、ニーア様。そんないきなり婚約者とか言われても……」
「おいおい、シード君。まさか私の愛娘にここまで言わせといてそれを無碍にするなんてことはないよね?」

それを突かれると痛い。

「分かりました。婚約を受けましょう。でも条件があります」
「ほう?してその条件とは?」

俺は、二人の肩を抱き寄せていった。

「この二人を第一、第二の婚約者にすることです」
「ほう、私の娘は第三の婚約者と言うことか?」
「はい、そうです。それだけは譲れません」

俺はまっすぐに王様の目を見つめていった。

「わかった、私はそれでいい。ニーアもそれでいいか?」
「はい!!」

パッと花のような笑顔を浮かべてニーアはうなずく。

「皆の者!これからパーティーを開く!!無礼講出楽しんでで行ってくれ!!」

王様の一声で、大規模なパーティーが始まったのだった。
パーティーは日が落ちるまで続いた。
そして、今会場に残っているのは、俺とユーリにイリーナ、ニーアと国王様だ。

「いやー、疲れた……」
「そうだね……」

俺とユーリは完全に疲労困憊であった。

「それじゃ、俺たちも帰るとするか」

俺たちも王城を後にしようとする。しかしそれはかなわなかった。
なぜなら、額に青筋を浮かべた国王様が俺たちを呼び止めたからだ。

「おい、おいシード君、何をしているのだね、私と決闘話し合いをしよう」

なんとなく、話し合いの所に不穏な物を感じたが、国王様なので逃げるわけにはいかない。

「分かりました……」
「それじゃ、行こうか」
「いきましょう、シード様」

ニーアが俺の腕に抱き着く。そして、また般若が二体生まれる。
俺、最近ついてないなぁ……

「なあ、シード君」
「何ですか?国王様」
「そんな改まらなくていい、私のことはレグルスと呼んでくれ」
「分かりました、レグルス様」
「シード君、うちの娘をどう思う?」
「そりゃあ、かわいいと思いますけど……」
「だろう!!私はそんな可愛い娘を嫁に出すんだよ?その心がわかるかね?」
「すいません、私には子供はいませんゆえ」
「そうだろうな。ふつう、娘が心配でたまらないんだよ……」

さすがにここまで行けば何となく流れは分かる。

「私と決闘をしよう」
「は?」

俺が思ってたのと違う方向に進んだぞ?

「やはり男なら拳で、剣で、力で語り合うものだろう?」
「はぁ……」
「と言うわけで、修練場に向かうぞ!!」

俺は、何やかんやで国王様と決闘が決まった。
修練場につくと、国王様が俺に向かって木剣を投げた。

「これは?」
「見ての通り、木剣だよ。これを使って、相手を気絶させるか降参させるかした方の勝ちだ。もちろん魔法は無し。身体強化もだ」
「あの、私一応魔術師なんですけど・・・・・」
「男には剣で語り合う時があるんだよ」

良く分からない理論だが、そういうのには何か滾るものがある。

「分かりました」
「それでは、ニーアお前が合図してくれ」
「分かりました。シード様、シード様頑張ってくださいませ」
「私の応援は?」

レグルスは始まる前から精神的なダメージを負っていた。

「それでは、はじめ!!」

ニーアの上品な声が響いた。
レグルスはものすごい速さで俺に切りかかってくる。
しかし、龍王と相対し、挙句に倒した俺からすれば何とでもなる速さだ。

「なかなかやりますね」

俺は大きく体をひねってそれを躱す。
そして、カウンターを狙う。しかしそれはかなわなかった。

「ほう、君はほんとに魔術師か?」
「はい、正真正銘の魔術師ですよ!!」

俺は、横なぎに木刀を振るう。

ガギィ

鈍い音がして二つの木刀が交錯する。
そして、双方が切り札を切った。

限界突破リミットバースト!!」
英雄の底力パワー・オブ・レジェンド
「お父様 それは!!」

限界突破リミットバーストの発動とともに世界がセピア色に染まり、音が消える。
そして自分だけが時間軸から外れたように、周りがスローモーションになる。

「「はぁ!!」」

鋭い踏み込みとともに、俺とレグルスが飛び出す。
レグルスの瞳は勝利を信じて疑わない、そんな瞳だった。
そして、それは俺も同じだ。

キィィィィィィィィィン

世界に色が戻る。
そこに立っていたのは・・・

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