二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、試験結果を見る。

そそくさと試験会場を後にしてから3日たち、試験結果の張り出しの日がやってきた。
「やっと合格したかわかるな!!」
「そうだね………楽しみだね」
ユーリよ、言ってることとやってることのテンションがあってないぞ。
「どうした?テンション低いじゃん。なんか心配事でもあるの?」
「まあね………実は筆記試験があってるかすごい心配なんだ……」
「なんだよ、そんなことか?おれだってあっている保証なんてないよ。そんな心配することじゃないよ」
「そうかなぁ?まあいいや。シード!試験結果見に行こ!!」
いつもの元気いっぱいなユーリに戻り、俺の手を引いて走り出す。
「ちょっ、待てってユーリ」
足がもつれたがなんとか踏み止まって、ユーリに並ぶ。
「そんな急がないでもいいだろ」
「それもそうだね」
今は、まだ8時で試験結果の張り出しは、9時からなのだ。
「ちょっとどっかに寄り道でもしていくか?」
「ほんと?」
キラキラとした期待のこもった視線を俺に向ける。
「ユーリはどっか行きたいとこあるか?」
「そうだなぁ………そうだ!!賢竜鍛冶屋の近くにあるカフェに行きたい!!」
「じゃあそこ行くか。ついでに賢竜鍛冶屋にも顔を出すか」
「やった!! 前から行きたかったんだ!」
ユーリは、鼻歌を歌いながら俺の前を歩いて行く。10分ほど歩くとユーリのいうカフェが見えてきた。
「ここがユーリのいうカフェか?なかなかいい雰囲気のカフェじゃないか」
「でしょー?ここ、すっごい有名なカフェなんだよー」
「そうなんだ」
この街に来てもう一週間経とうとしているのに、全く知らなかった。
カフェに入ると、たくさんの客がお茶をしていた。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
「「はい」」
「それでは、奥のテラス席へどうぞ」
俺たちは、テラス席に案内される。
「ラッキーだったね、テラス席に座れるなんて」
俺とユーリは、適当にコーヒーとケーキを注文する。
「なんかすごい久しぶりだね、こんなにのんびりするの」
「そう言われていればそうだな。たまには、のんびりするのもいいかもな」
言われてみれば、あんまりライングランに来てからゆっくりできていなかった気がする。
しばらくすると、注文していたコーヒーとケーキがきた。
一口ケーキを口な運ぶ。
「おっ、うまいな」
「でしょー」
ユーリも、ケーキを口に運び、頬を綻ばせる。
店にある時計に目を向けると、8時30分を指していた。
「ユーリ、そろそろ行くぞ」
「わかった〜」
ユーリは残ったケーキをパクッと一口で食べ、コーヒーを流し込む。
「お会計は、銀貨4枚になります」
俺たちは会計をサッと済ませ、カフェを後にした。

「ユーリ、近くに来たから賢竜鍛冶屋にも顔を出すぞ」
「うん、わかった」
カフェから約5分歩くと、賢竜鍛冶屋が見えて来た。
「本当に近いんだな」
カフェから賢竜鍛冶屋までゆっくり歩いて5分、普通に行けば5分もかからないだろう。
「おーい、ラカンのおっさん?可愛い俺とユーリが顔を見せに来ましたよーっと」
俺が大きな声で呼ぶが、反応はない。
「ラカンおじーちゃんいるー?」
「今日はいないのかな?仕方ないからもう行くか」
「そうだね……」
ユーリのテンションが目に見えて落ちた。ラカンのおっさんめ、ユーリのテンションを急落させやがって!
絶対に許すまじ。
賢竜鍛冶屋を後にしようとすると、

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

遠くから砂埃を巻き上げながら、ラカンのおっさんが鬼のような形相で走ってくるのが見えた。
「ユーリじょーちゃーん!!!」
もういい年のおっさん(じじい)が、鬼の形相で走って来たのだ。きっとすれ違った人はさぞかし怖かったことだろう。
「あれ?ラカンおじーちゃんどうして私がいるのわかったの?」
「いや、なんとなく憎たらしい小僧に呼ばれた気がしたんじゃが、まあ小僧ならいいかと思っておったらの
愛しのユーリ嬢ちゃんに呼ばれた気がしたので全速力で戻って来た次第じゃ」
愛しのっておっさん(じじい)が、孫くらいの年齢の女の子に使う言葉じゃねえだろ。
「ユーリを可愛がってくれんのはいいけど、こいつは俺のだぞ」
そう言ってユーリを抱き寄せる。
「お主のかどうかは置いておいて、そんな気はおこさんよ」
「だったらいいけど」
その頃ユーリは、「こいつは俺のだぞ、だなんて」とブツブツ呟きながら、身悶えていた。
「で?今日は何の用じゃ?」
「いや、別に用があったわけじゃないんだ。ただ近くを通ったから、顔を出しに来ただけだ」
「なんじゃ、それだけか。お主だけならお断りじゃが、ユーリ嬢ちゃんも一緒ならいつでもウェルカムじゃ!!!」
「でも、ついでだからこいつを鍛え直しといてもらえる?期間は2週間で」
俺は、メアリ先生との激闘でだいぶ刃こぼれを起こした神聖龍神剣・極氷を取り出す。
「こりゃあまたひどいことになったのう……何をきったらこんなことになるんじゃ」
「ちょっとブラックリーパーを」
「まあ良い、2週間じゃの。完璧に仕上げておこう」
「悪いな。よろしく頼む」
俺とユーリは、賢竜鍛冶屋を後にする。時間は8時45分。
「それじゃ、ライングラン魔法学校に行くか」
「だね〜。合格してるか心配だな〜〜」
「大丈夫だろ」
くだらない雑談をしながらライングラン魔法学校に向かった。

魔法学校の門をくぐると、9時5分前だった。
「丁度いい時間だな」
試験結果の張り出される、グラウンドに向かうとほとんど全員集まっていた。
「それでは、試験結果の張り出しを行います!!」
誰かが拡声魔法でそう言うと、グラウンドの地面が盛り上がり、大きな掲示板が姿を現した。
「おお、すごいな」
「だね。ああ、ドキドキして来た」
俺とユーリも掲示板に向かう。
「どこにあるかな〜っと、あった、あった」
「私もあったよ!!」
俺の名前は一番上に、ユーリは、そのひとつしたにあった。
ライングラン魔法学校の入学試験は、得点も張り出されるのだが得点にはさすがに俺も驚いた。

試験番号 S-2003    シード・グリシャス 

筆記            100/100
魔法実技     800/400
模擬戦        1000/500
合計            1900/1000

試験番号 S-0303     ユーリ・グリシャス

筆記            98/100
魔法実技    500/400
模擬戦      1000/500
合計         1598/1000

俺もユーリも、上限超えちまってんじゃねえか!!
「入学試験、主席合格シード・グリシャス君、次席ユーリ・グリシャスさん、三席イリーナ・グランさんは、校長室までお越しください」
突然の校長室への呼び出しに動揺を隠せない俺であったが、ユーリもらしく顔がだんだん青くなって来た。
嫌な予感しかしないが、行くしかないので、肩を落としながら校長室に向かうのだった。


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