二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、生徒会長と……

俺が新技、『神霊化』をものにしてから数日、俺はとんでもないことを耳にした。
「シードちゃ〜ん!!!聞いたわよぉ〜!生徒会長様と一戦交えるんですってねぇ〜」

ドドドドドドドドドドドドドドド

砂埃を巻き上げ、厳つい体をした漢目おとめがこちらに向かって走ってくる。
「とっ止まれ、オナベール!!」
なおも止まらないオナベール漢目に命の危険を感じた俺は、その場からよ飛び退いた。
数秒して、オナベールが俺の後ろの壁に激突する。
「オナベール、何を言ってるんだ?」
「今朝、張り出されてたわよ?生徒会長と一年生主席の決戦!!明日、1時間目に実施って」
「はぁ?俺そんなこと聞いてねえぞ?」
何を言ってるんだこのおかまは、と思っていると、不意に誰かに名前を呼ばれた。
「シード君?君、シード君だよね?」
俺の名前を呼んだのは、青い髪と瑠璃色の瞳が美しい小柄な女性だった。しかし、でるとこは出ていて、妙な艶やかさがある。
「はい。僕がシード・グリシャスですが」
「よかった〜。レジ兄……じゃなかったレジスタント会長が、あとで生徒会室にきてくれだそうです。
このあと、生徒会室にきてください。私が案内しますから」
「わかりました」
急遽生徒会室に呼び出された俺だが、理由はわかっていた。
俺は、青い髪の先輩に連れられて、生徒会室に向かうのだった。

「レジスタント会長、呼んできました」
「ああ、入ってくれ」
ガチャリと扉が開く。目の前に高そうな椅子に腰掛けたレジスタントが座っていた。
「悪いね。急に呼び出してしまって」
「いえ、構いませんよ。しかし、なんで呼び出したんですか?」
なんとなく、いやむしろ明確に理由は察しがついたが、聞いてみる。
「明日の一戦について話がしたくてね」
やっぱり。
「やはりですか。しかしなんで戦わないといけないんですか?」
「それはだな、校長先生が面白そうだとか言って、企画したからだ」
これは逃げられない流れだな……腹をくくるか。
「まあそんなことはどうでもいいんだ。一戦交えるのなら、正々堂々勝負したいと思うんだ」
「それはそうですよね。僕もやるからには正々堂々勝負したいと思います」
「だろう。だから、正式なルールを設ける」
「いいですね。どんなルールにしますか?」
「そうだな、殺す以外なんでもあり。これでどうだ?」
「はい。いいですよ」
こうして、明日の一戦に向けてルールが決まり、着々と準備が進んでいった。

「さーあ!!みなさんお楽しみ!会長と期待の新人、シード・グリシャスの一戦を始めます!!」
司会と思しき女子生徒(美人)が、一戦の開幕を高らかに宣言した。
「まずは、生徒会長、レジスタント・ドラグーンの登場だー!!」
大歓声の中、レジスタントが姿をあらわす。
「そして、期待の新人、シード・グリシャスが登場だー!!」
ドッと会場が湧き上がる。
「ルールは簡単。どちらかが倒れる、または降参すれば終了。殺さなければなんでもあり。さあ、両者開始位置につけ!用意、始め!!」
今、戦いの火蓋が切って落とされたのだ。
最初に動いたのは、レジスタントだった。
紅蓮の陽光コロナ・インブレイザム
灼熱の炎が、正面から俺に迫る。
「氷晶壁」
巨大な氷の壁で、コロナ・インブレイザムを防ぐ。
「やるね」
「いえいえ、次はこっちから行きますよ!!」
左手に魔力を貯める。
氷弾アイスバレット
そして、続けて広範囲魔法を放つ。
神聖なる氷上の神殿セイン・アイシクル・シュライン
レジスタントがアイスバレットを避けた瞬間、足元が凍りつき、着地後の動きを悪くする。
炎の息吹ファイヤーブレス
レジスタントは、おそらく龍魔法と思われる魔法を放ち、凍りついた地面を溶かす。
「やっぱり、一筋縄じゃいかないですね」
「当たり前だろ。そろそろ、武器を出させてもらうよ」
天に掲げたレジスタントの右手に、三匹の炎の龍がまとわりつく。
「こい、神聖龍神剣・神炎」
三匹の龍が一点に集約し、神聖龍神剣・神炎がその姿をあらわす。
「これが、僕のメイン武器だよ」
「会長も神聖龍神剣を持ってるんですね。それじゃ僕も。こい、極氷」
あたりに吹雪が吹き荒れる。右手を掲げ、振り下ろす。吹雪が止み、俺の右手には、神聖龍神剣・極氷が握られていた。
「なっ、君、それはまさか……ロスト様の神聖龍神剣・極氷じゃないのか?」
「そうですけど」
「ま、まあいい。それは後で聞くとして、いくぞ!!」
レジスタントは、鋭く地面を蹴り、俺との距離を詰める。
スピードは、俺と同じかそれ以上だが、反応できないほどではない。
俺は、タイミングを合わせ、刺突を繰り出す。

カン

俺の刺突は、見事にかわされ、カウンターが迫る。
「おりゃ」
俺は氷晶壁を発動し、カウンターを受け止める。
「流石ですね。後ちょっと遅れてたら負けてましたね」
「今のを防がれるとはな」
俺もレジスタントも大きく跳びのき、距離を取る。
次に動いたのは俺だった。
連続飛斬れんぞくひざん氷龍ひょうりゅう
遠距離攻撃で削ろうと思ったが、レジスタントは、氷龍を弾きながら、距離を詰めてくる。
氷槍時雨アイスレイン
さすがにアイスレインを避けながら、氷龍も弾くのはレジスタントとはいえ不可能だろう。
荒れ狂う火龍の魂クレイ・ソウル・ブレイズ
レジスタントが、アイスレイン着弾直前、神炎を地面に突き刺す。
神炎を中心に巨大な魔方陣が浮かび上がり、炎の龍が全てを焼き尽くす。
聖防御氷壁セイン・アイス・シルド
氷晶壁の強化版、セイン・アイス・シルドを展開する。
「そんなもの意味は何と思うよ?」
俺のセイン・アイス・シルドは、呆気なくとはいかなかったが、レジスタントの魔法に破壊された。
「意味なくはなかったですよ?」
「チッ!だったらこれはどうだ?」
神炎を漆黒の炎が包み込み、神炎が禍々しい瘴気を纏う。
それはそうと、レジスタントのキャラが崩壊しているが、いいのだろうか?
「魔化・深淵の黒炎」
レジスタントの心配をしている余裕はもうなさそうだ。
「あれはやばいな。グリス!やるぞ」
(オッケー)
「神霊化!!」
俺の体が、光に包まれ、神霊化が完成する。
「ほう、それが噂の神霊化か。なかなかの出来だな」
「そりゃどうも!!」
神速でレジスタントの後ろに回り、魔法を構築する。
多属性魔弾マジックマテリアル連続射出式タイプガトリング
全属性の魔弾による弾幕が、レジスタントを捉える。
「ぐぅぅぅぅ」
レジスタントは、魔弾を食らいつつも、致命傷になりそうなものは的確に弾いている。
出力全開フルバースト!!!」
通常の俺なら、マジックマテリアルの発動で限界だが、神霊化によってグリスの魔力も使用できる為、タイプガトリング、さらには、フルバーストまで威力、性能を上げることができる。
レジスタントは魔弾を弾けず、フルバーストのマジックマテリアル・タイプガトリングがクリーンヒットした。
「がはぁ」
ものすごいスピードで吹き飛ばされ、壁に激突する。まさに満身創痍である。
「はぁ、はぁ、なかなか……やるな……。俺も全開でやらせてもらうぜ」
神炎を地面に突き刺し、それに縋るようにして立ち上がる。
能力覚醒バーストアップ龍血覚醒りゅうけつかくせい
その瞬間レジスタントから漂う雰囲気が一変した。
強者から漂うそれから、獲物を狩る魔物のそれへとだ。瞳も、美しい碧眼から、龍に似た瞳に変わり、筋肉も膨れ上がっている。
「これが俺の本気だ」

シュンッ

空気を切る音がし、俺が気付いた時には、レジスタントが目の前にいた。
そして、レジスタントの拳が腹にめり込んでいた。
「ごはぁぁぁ」
肺の中の空気が押し出され、息ができない。
回復術ヒール
壁に持たれるように立ち上がる。
「ゲホ、ゲホ、ゲホ。殺す気かよ……ったく、これならどうだ!!」
全身に魔力を循環させ、身体能力を限界まで強化する、俺お馴染みのあれ・・を発動する。
「神纏・零式」
ビキビキと体が音を立てる。
「これが正真正銘、俺の全力だ!!多属性魔弾マジックマテリアル連動式タイプリンク
全属性の魔弾が、まるで意志を持ったようにレジスタントを追跡する。
俺は、魔法を発動したと同時にレジスタントとの距離を詰める。
「絶龍王・一閃」
レジスタントがマジックマテリアルを弾いた瞬間、ガラ空きになった腹に向けて、極氷を振り抜く。

ザシュン!!

極氷は、レジスタントの皮膚を軽く切り裂いた。
レジスタントは、そのまま地面に倒れた。
「勝者はー!!なんと!期待の新人、シード・グリシャスだー!!」
その声を聞いて、自分の勝利を確信した。
直後、俺の神霊化がとけ、俺の意識は闇に沈んでいった。

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