二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~
元村人、ゴブリン討伐と……
「よっと!」
俺はゴブリンが振り下ろした棍棒を体をひねることでぎりぎりでかわす。
そして、そのままがら空きになった鳩尾に魔法を打ち込む。
「氷弾!!」
アイスバレットは、鳩尾を完璧にとらえる。
GUGYAAAAAAAAA!!!
ゴブリンは、断末魔を上げその場に倒れた。
「これで最後か?」
目の前に倒れる無数のゴブリンの骸を見ながら呟いた。
「そうでしょうね。……でも、油断は禁物よ」
呟きを聞かれたのか、イリーナが話しかけてくる。
余裕ぶってこそいるが、額には汗がにじんでいる。ユーリも、地面にへたり込んでいる。
このあたりのゴブリンは、強くはないが、数が多すぎるな。
まさか百体を超えてくるとは……
百体を超えるゴブリンとの戦闘が始まったのは、安眠の森について間もなくのことだった。
「皆さん、安眠の森につきましたよ」
馬車の御者に、声をかけられて俺の意識は深い眠りの中から引き戻された。
「んぁあ?もう着いたのか?」
「うん!ついたよ~」
俺が軒沖うが確かなのは、ライングランの町を出てすぐのところまでなのを考えると、結構な時間眠っていたようだ。隣を見ると、イリーナが不機嫌そうに窓の外を眺めていた。
「やっとお目覚めかしら?」
「ど、どうした?俺何かしたか?」
「何か下も何もないわよ……」
どうやら本当に機嫌が悪いらしい。
しかし、本当に何をしたんだろう?皆目見当もつかない。
「なあ、俺が寝てる間に何があったんだ?」
俺は小声でユーリに尋ねた。
「シードが寝てすぐ、イリーナちゃんも寝ちゃったんだ」
ユーリはそこまで言って一度下を向いた。
この様子だと笑いをこらえているようだ。
「それでどうしたんだ」
「えっとね、その時にイリーナちゃんがシードの肩に頭を乗っけちゃって」
どうやら今回は俺に非はない感じがする。
まあ校長室で機嫌を損ねた時も俺は悪くないと思うが……
「それだけならよかったんだけど、シードもイリーナちゃんに頭乗っけちゃってさ、それで先にイリーナちゃんが起きちゃったもんだから、イリーナちゃん一気に機嫌悪くなちゃって」
……これ俺悪くないよね?不可抗力だよね?そうだよね?
それからどうやってイリーナの機嫌を取ろうかと悩んでいたところにゴブリンがご登場したわけだ。
「いくわよ!!覚悟しなさい、今私は誰かさんのせいですっごく機嫌が悪いの!!」
イリーナは初めに寄ってきたゴブリンに魔法……ではなく、拳を叩き込んだ。
拳には光の粒子がまとわれているところを見ると、光属性も魔法をまとわせたんだろう
GYAAAAAAAAAAAA
ゴブリンさん、ご愁傷さまです。
イリーナの周りに寄っていったゴブリンは、皆例外なく同じ結末をたどった。
そして山のようにゴブリンが出てきて、冒頭に至る。
というわけだ。
「しかしまあ、ストレスも発散できたし、ゴブリンにも感謝しないとね」
イリーナが頬を綻ばせる。
それだけ見れば天使のように見えなくもないが、手には大量の血がついているため、さしずめ殺戮の堕天使である。
「よ、よかったな。しかし、ちょっと数が多すぎるな。もしかしたら森にまだいるかもしれないな」
「そうね、だったら確認しに森に入る?」
「いや、確認だけなら魔法で出来る。生物探知」
魔力を極細の糸状にして森全体に張り巡らせる。
糸に約百の反応が引っ掛かるが、ゴブリンらしき反応はない。
「ゴブリンはもういないようだな……」
「そう、じゃあもう帰るの?」
「いや、ゴブリンはパーティ戦闘にならなかったから、森に入ってモンスターを何匹か買ってから帰るよ。さいわい、馬車が迎えに来るのはまだ先だからな」
「わかったわ。でも、ちょっと休憩させてね」
イリーナは、慣れない肉弾戦を行ってだいぶ疲弊しているようだ。
ユーリはもうすっかり回復したのか、俺の所に走って向かってきた。
「シード、雨が降りそう……どこか雨がしのげるようなところに行こう」
「「雨?」」
俺とイリーナは、ユーリに言われて空を見上げた。
晴天である。雲一つない気持のいい空だ。
「ユーリ何言ってるの?どう見たって快晴じゃないか。雨なんて振る分け」
ザアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
まさにバケツをひっくり返したような大雨だった。
「だからいったのに~」
「「ごめんな(なさい)」」
「とにかく、早く雨宿り出来るとこにいこ」
ユーリが乱暴に俺の手を引く。
どうやら今度はこっちの機嫌をし損ねてしまったようだ。
もちろん、近くにあった洞穴にたどり着くまで、ユーリの機嫌を取り続けたのは言うまでもない。
(今度丸一日ユーリの荷物持ちをすることで許してもらえた)
「うう、寒いな」
「奇遇ね、私も」
女子勢が、ガタガタと震えている。
「生命の回復」
俺の右手に暖かい光が宿り、それが洞窟を満たす。
「どうだ?少しはあったかくなったか?」
「うん!」
「ええ、少しはね。けどまだちょっと寒いわ」
やはり、イリーナはユーリと違い体温が低いようだ。
「仕方ないな」
俺は腰に下げているアイテムポーチから、愛用しているローブを二つ取り出す。
そしてそれを二人に渡した。
「ありがとー!シード」
ユーリは受け取るや否やすぐにローブを羽織る。
「ふふ、シードの匂いがする」
「あ、ごめん。いやだったか?」
「ううん、良いの。シードの匂いは安心するいい匂いだよ」
そういってユーリは笑顔の花を咲かせる。
一方にイリーナは、どうすればいいのかわかっていない様子だった。
「これは?」
「これは?ってローブだけど」
「いやそうじゃなくて、これをどうしろと」
「着りゃいいだろ」
「むぅ」
悩みに悩んで、意を決したようにローブを羽織る。
そんなに悩むなら、着なきゃいいのに……
だって俺が傷つくから……
「ほんとね」
「どした?」
「ほんとに安心する匂いだなと思って」
止めてほんとに……
自分の匂いが心配になってきた……
イリーナを見ると、耳まで真っ赤になっていた。
GUGYAAAAAAAAAAAAAA
不穏な咆哮が聞こえてきたのはその時だった。
俺はゴブリンが振り下ろした棍棒を体をひねることでぎりぎりでかわす。
そして、そのままがら空きになった鳩尾に魔法を打ち込む。
「氷弾!!」
アイスバレットは、鳩尾を完璧にとらえる。
GUGYAAAAAAAAA!!!
ゴブリンは、断末魔を上げその場に倒れた。
「これで最後か?」
目の前に倒れる無数のゴブリンの骸を見ながら呟いた。
「そうでしょうね。……でも、油断は禁物よ」
呟きを聞かれたのか、イリーナが話しかけてくる。
余裕ぶってこそいるが、額には汗がにじんでいる。ユーリも、地面にへたり込んでいる。
このあたりのゴブリンは、強くはないが、数が多すぎるな。
まさか百体を超えてくるとは……
百体を超えるゴブリンとの戦闘が始まったのは、安眠の森について間もなくのことだった。
「皆さん、安眠の森につきましたよ」
馬車の御者に、声をかけられて俺の意識は深い眠りの中から引き戻された。
「んぁあ?もう着いたのか?」
「うん!ついたよ~」
俺が軒沖うが確かなのは、ライングランの町を出てすぐのところまでなのを考えると、結構な時間眠っていたようだ。隣を見ると、イリーナが不機嫌そうに窓の外を眺めていた。
「やっとお目覚めかしら?」
「ど、どうした?俺何かしたか?」
「何か下も何もないわよ……」
どうやら本当に機嫌が悪いらしい。
しかし、本当に何をしたんだろう?皆目見当もつかない。
「なあ、俺が寝てる間に何があったんだ?」
俺は小声でユーリに尋ねた。
「シードが寝てすぐ、イリーナちゃんも寝ちゃったんだ」
ユーリはそこまで言って一度下を向いた。
この様子だと笑いをこらえているようだ。
「それでどうしたんだ」
「えっとね、その時にイリーナちゃんがシードの肩に頭を乗っけちゃって」
どうやら今回は俺に非はない感じがする。
まあ校長室で機嫌を損ねた時も俺は悪くないと思うが……
「それだけならよかったんだけど、シードもイリーナちゃんに頭乗っけちゃってさ、それで先にイリーナちゃんが起きちゃったもんだから、イリーナちゃん一気に機嫌悪くなちゃって」
……これ俺悪くないよね?不可抗力だよね?そうだよね?
それからどうやってイリーナの機嫌を取ろうかと悩んでいたところにゴブリンがご登場したわけだ。
「いくわよ!!覚悟しなさい、今私は誰かさんのせいですっごく機嫌が悪いの!!」
イリーナは初めに寄ってきたゴブリンに魔法……ではなく、拳を叩き込んだ。
拳には光の粒子がまとわれているところを見ると、光属性も魔法をまとわせたんだろう
GYAAAAAAAAAAAA
ゴブリンさん、ご愁傷さまです。
イリーナの周りに寄っていったゴブリンは、皆例外なく同じ結末をたどった。
そして山のようにゴブリンが出てきて、冒頭に至る。
というわけだ。
「しかしまあ、ストレスも発散できたし、ゴブリンにも感謝しないとね」
イリーナが頬を綻ばせる。
それだけ見れば天使のように見えなくもないが、手には大量の血がついているため、さしずめ殺戮の堕天使である。
「よ、よかったな。しかし、ちょっと数が多すぎるな。もしかしたら森にまだいるかもしれないな」
「そうね、だったら確認しに森に入る?」
「いや、確認だけなら魔法で出来る。生物探知」
魔力を極細の糸状にして森全体に張り巡らせる。
糸に約百の反応が引っ掛かるが、ゴブリンらしき反応はない。
「ゴブリンはもういないようだな……」
「そう、じゃあもう帰るの?」
「いや、ゴブリンはパーティ戦闘にならなかったから、森に入ってモンスターを何匹か買ってから帰るよ。さいわい、馬車が迎えに来るのはまだ先だからな」
「わかったわ。でも、ちょっと休憩させてね」
イリーナは、慣れない肉弾戦を行ってだいぶ疲弊しているようだ。
ユーリはもうすっかり回復したのか、俺の所に走って向かってきた。
「シード、雨が降りそう……どこか雨がしのげるようなところに行こう」
「「雨?」」
俺とイリーナは、ユーリに言われて空を見上げた。
晴天である。雲一つない気持のいい空だ。
「ユーリ何言ってるの?どう見たって快晴じゃないか。雨なんて振る分け」
ザアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
まさにバケツをひっくり返したような大雨だった。
「だからいったのに~」
「「ごめんな(なさい)」」
「とにかく、早く雨宿り出来るとこにいこ」
ユーリが乱暴に俺の手を引く。
どうやら今度はこっちの機嫌をし損ねてしまったようだ。
もちろん、近くにあった洞穴にたどり着くまで、ユーリの機嫌を取り続けたのは言うまでもない。
(今度丸一日ユーリの荷物持ちをすることで許してもらえた)
「うう、寒いな」
「奇遇ね、私も」
女子勢が、ガタガタと震えている。
「生命の回復」
俺の右手に暖かい光が宿り、それが洞窟を満たす。
「どうだ?少しはあったかくなったか?」
「うん!」
「ええ、少しはね。けどまだちょっと寒いわ」
やはり、イリーナはユーリと違い体温が低いようだ。
「仕方ないな」
俺は腰に下げているアイテムポーチから、愛用しているローブを二つ取り出す。
そしてそれを二人に渡した。
「ありがとー!シード」
ユーリは受け取るや否やすぐにローブを羽織る。
「ふふ、シードの匂いがする」
「あ、ごめん。いやだったか?」
「ううん、良いの。シードの匂いは安心するいい匂いだよ」
そういってユーリは笑顔の花を咲かせる。
一方にイリーナは、どうすればいいのかわかっていない様子だった。
「これは?」
「これは?ってローブだけど」
「いやそうじゃなくて、これをどうしろと」
「着りゃいいだろ」
「むぅ」
悩みに悩んで、意を決したようにローブを羽織る。
そんなに悩むなら、着なきゃいいのに……
だって俺が傷つくから……
「ほんとね」
「どした?」
「ほんとに安心する匂いだなと思って」
止めてほんとに……
自分の匂いが心配になってきた……
イリーナを見ると、耳まで真っ赤になっていた。
GUGYAAAAAAAAAAAAAA
不穏な咆哮が聞こえてきたのはその時だった。
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