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二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、初めての死闘。

GYAOOOOOOOOOOOOOOO

不穏な咆哮が洞窟に響く。

「な、何だ」

俺はラカンから貰ったばかりの混沌の属性剣マカハドマに手を掛ける。

「何よ、今の鳴き声」
「分からない。でもそこらにいるような弱いモンスターじゃないな」
「どうする?奥に行く?」

おびえた様子でユーリが聞いてくる。
賢明な判断は、逃げることだろう。しかし、このまま気づかれずにライングランまで帰れる保証はない。

「奥まで行って鳴き声の正体を確認する。戦うかどうかは見てから決めよう」
「わかったわ」
「え……行くの?」
「ああ」
「え~ほんとに行くの?」

執拗にユーリは奥に行くのを嫌がる。
どうしたのだろうか?

「なら一人でここで待ってるか?」
「いや、それはもっといやだ。それだったら一緒に行く」

今度は一人になるのを嫌がった。

「ねえ、あなたもしかして怖いの?」

びくっとユーリの肩が震える。そしてだらだらと冷や汗をがしだす。

「な、なにを言っているのかしら?私は怖くなんてないざますわよ?」
「ユーリ、怖いのか?」

後ろからユーリの肩をたたく。

「ひゃんっ!?」

大げさに肩を震わせて飛び上がるユーリ。
次の瞬間には大粒の涙を目の端に浮かべていた。
そして、洞窟にユーリの鳴き声が響き渡ったのは言うまでもない。

ズシン、ズシン

洞窟の奥から地響きが聞こえる。

「な、なあイリーナ?今のって足音じゃあないよな?」
「何を言っているの?どう考えてもさっきの鳴き声の主でしょう」
「だよな……」

俺の現実逃避は見事に失敗した。

ズシン、ズシン、ズシンズシンズシン

地響き謎の足音がどんどん近づいてくる。
ユーリは泣きじゃくっているし、イリーナはその介抱をしているので、とてもじゃないが戦闘できる状態にない。

「おい、ユーリ、イリーナ来るぞ!!」

ピンっと張り詰めた空気の中で、足音の主を待つ。
暗闇から現れたのは、ゴブリンだった。

「んだよ、ゴブリンかよ」
「「よかった~~」」

俺は少し残念がった声を、二人は心の底から安堵したような声を上げる。
しかし、おれたちはそれが間違いだったとすぐに気づくことになった。

ぷち

目の前にいたゴブリンが踏みつぶされたのである。
それはもう簡単に。虫のように。
俺たちは目を見合わせ、思いっきり叫んだ。

「「「ぎゃあぁあああああああああああああああああああああああああ」」」

一目散に俺たちは出口に向かって走り出した。

深淵の影壁シャドーウォール・アビス

洞窟の入口がせり上がり、漆黒の壁が入口を完全にふさぐ。

「ちぃ!!」

俺は大きく舌打ちをすると、魔法の主に向き直った。
魔法の主は、漆黒の鱗に身を包み、ゴブリンの物と思われる血がべっとりと付着した足で一歩一歩こちらに近づいてくる。禍々しい魔力を纏ったそれは
ドラゴン・・・・だった。

「我が名は、『黒龍王、クロスフォード=デス=スルト』黒龍を統べるものなり」
「ほう、これはご丁寧に。それで、その黒龍王さんが何でこんな洞窟に?」

俺は、いつ攻撃されてもいい様に緊張状態は全く説いていないが、物腰だけは柔らかく尋ねる。

「そんなものは簡単だ。ここが魔王様復活のうえで、重要な拠点となるからだ」
「魔王?俺たちにそんなことを話していいのか?」
「別に構わん、どうせお前らは死ぬ運命にある。ならば、質問くらいは答えてやろうというわけだ」

なかなか人間味のあるドラゴンである。

「可能ならこのまま逃がしてくれちゃったりしませんかね?」
「それは無理な相談であるな」

やはり無理であった。

「おい!ユーリ、イリーナ!!行くぞ」
「こい、人間どもよ!!」

黒龍王の魔力がより一層大きく、禍々しくなる。

聖水創造クリエイト・セイン

聖水が濁流となり、黒龍王を襲う。

「ふん、そんなもの我が魔力の前には無力だ!!食らえ!!」

黒龍王は、闇の業火で聖水を即座に蒸発させる。
そして、発生した大量の湯気に巨大な身を隠す。
あの巨体にも関わらず、とてつもない速さで移動する。

「拙いな、顕現せよ大天使グリス!!」
「はいはーい」

俺はグリスを顕現させる。
そして迫りくる黒龍王を足止めさせる。

「生命の水よ、我が敵を貫かん ウォーターランス」

巨大な水の槍がグリスを中心に、360度展開される。
グリスが魔法のトリガーを引くと、超高速で湯気の中に槍が突き刺さる。

GUGYAOOOOOOOOOOOOO

黒龍王が苦痛に満ちた叫びをあげる。
俺は両手をそろえて突き出し、水の魔力を集約させる。

超水斬ウォーター・レーザー

集約された水が、一筋の光となって黒龍王を貫く。
しかし、全く気に留めはしない。

「ふははははははははは。やるな、人間。まさか忌々しき天使を召喚しよるとは思わんかった」

快活に笑う黒龍王。どうやら純粋に戦いを楽しんでいるようだ。
ふと傷に目をやると、奴の傷は完全に回復していた。

「まさか超回復を使うとはな」
「気づきよったか。まあよい、行くぞ!!」

次の瞬間、思いもしないことが起きた。奴が俺やグリスではなく、イリーナに向かっていったのだ。
イリーナは虚を突かれたせいで全く回避できる状態にはない。
グリスが魔法を発動しようとするが、間に合いそうにない。
そう思ったとき、俺にはすべてがスローモーションに見えた。

「神纏・零式!!」

身体強化を全開にして、黒龍王とイリーナの間に割り込む。

「お前の相手は俺だ」
「勇気ある人間よ、絶望を胸に死ぬがよい。深淵の闇剛爪アビス・ネイル

深き闇に包まれた黒龍王の爪が俺の左側に迫る。
俺はとっさにイリーナを反対に突き飛ばす。

「きゃあっ!?」

イリーナが短く悲鳴を上げ、攻撃範囲から外れる。
しかし、俺に向かってくる奴の爪を左腕で防ぐ。

ザシュンッ

突如てして、おれの左腕の肘から先の部分の感覚がなくなる。
左腕を見ると、あったはずの腕がなくなっていた。

「-------------っ!!?」

俺は声にならない叫びをあげる。その一瞬のスキを奴は見逃さなかった。
その場で体を反転させ、太く、硬い尻尾が左側から迫る。

「氷晶壁!!」

とっさに厚い氷の壁を生成する。

バキィ

嫌な音を立てて、氷の壁が消し飛ぶ。
全く威力を落とさず、おれの左の脇腹にクリーンヒットした。

メキィ

あばら骨が砕け散るような音とともに、大きく吹き飛ばされる。
空中でもみきり三回転を決め、地面を滑走する。
壁にぶつかりやっとその勢いがゼロになった。

「がはッ!!」

肺がつぶれ、中の空気が一気に外に押し出される。
そして、つぶれた内臓から出た血が、せりあがってくる。
左手の大量出血と相まって、血液不足に陥り、意識が朦朧としてきた。
そんな中で目にしたのは、涙を浮かべ、こちらを見ているユーリだった。
しかし、次の瞬間には、怒りをその目に宿す。

「あぁああああああぁぁああぁぁぁぁああああああ!!!」

雄叫びをあげ、黒龍王に向かって駆け出す。

「お前のせいで!お前のせいでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

黒龍王に全身全霊で拳を叩き込む。
しかし、黒龍王は全く意に介さない。

「イリーナ!シードを!シードを早く」
「う、うん」

イリーナがこちらに駆け寄ってきて、魔法をかける。
その間、グリス、ユーリが黒龍王の注意を引く。

「ごめん……ごめんね」

イリーナは涙を流しながら魔法をかける。
そのかいあって、徐々に傷が回復してくる。

「ぐぅ!!」
「ユーリ!!」

ユーリの悲痛な叫び声と、グリスの声が響く。
そこには、黒龍王の攻撃を食らい、片膝をついたユーリの姿があった。
黒龍王は、龍魔法の発動準備をしている。

「我が漆黒の業火に焼かれて消えろ、食らうがよい、黒翔紅蓮ダークネス・フレイム

黒龍王の前に漆黒の炎が現れる。大気中の魔力おも吸い込み、さらに深い闇の炎となる。
グリスも必死に魔法を打ち込み、魔法を打たせないようにしているが、ユーリが動けるようになるまで続けるのはどう考えても不可能だろう。
そう思った瞬間、おれの中で何かが切れた。

地を這う蒼き稲妻グラウンド・サンダー

蒼の稲妻が黒龍王をとらえる。

GYAAAAAAAAAAAAAAA

たまっていた魔力は霧散し、黒龍王は大きくのけぞる。
そのすきに、ユーリを抱きかかえ、距離を取る。

「大丈夫か?ユーリ」
「う、うん。でもシードが!」
「俺は大丈夫だ。早くイリーナに回復してもらえ」

ユーリをイリーナに受け渡すと、黒龍王と相対する。

「死にぞこないの人間によくそんな力が残っていたな」
「そうだな。それには俺もびっくりだ」

今の俺は、先ほどうけた傷がまた開き、血が全身をしたたり落ちている。
そんな、満身創痍の体で混沌の属性剣マカハドマを握る。

「それじゃあ、第二ラウンドの始まりだ」

こうして、俺と黒龍王の死闘、第二ラウンドが始まった。









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