二週目村人は最強魔術師!?~元村人の英雄譚~

雪桜 尚

元村人、許嫁ができる。

俺は痛む身体に鞭を打ち、少女たちの元に急いだ。
「きゃああああああ!」
鉄をぶつけたような悲鳴が辺りに響き渡る。
「今度はなんだ!」
悲鳴を聞いた俺は、若干の焦りを覚えながら走った。
「どうした!大丈夫か?」
「は、はい。私は大丈夫。でもお母さんが!!」
少女の足元には、青い顔をした、さっきの女性が倒れていた。俺は、しゃがみこんで、脈を取る。
「これは出血多量で貧血を起こしてるんだ。しっかり食べて、安静にしてればすぐに治るよ」
「ほんと?」
「ああ。ほんとだ」
「ありがとう。助けてくれて。それじゃもう行くね!バイバーイ」
少女はそう言って手を振る。
「待てよ!これからどうする気だよ」
「えーっと、近くの町に行って宿で休む」
「お母さんを背負ってか?」
「……うん」
「なら、俺の家に来いよ。ここから20分くらいだし。何より、お前ら獣人だろ?」
「なんでそれを……。まさか、術が解けて」
少女は頭を触るも、耳はない。
「実はな、俺は魔眼持ちなんだ。だから、それでちょっと覗かせてもらった。ごめん」
「ううん、いいの」
そう言ってこそいるが、少女は目に涙をためて、震えている。
「大丈夫。君が思っているようなことはしないから。俺はシード」
「私は、ユーリ。それで、お母さんが、セレス」
「よろしく。それじゃ行こう」
俺は、少女改二、ユーリに手を差し出す。ユーリは、おずおずと手を取る。
「おっといけない。忘れてた」
俺は、残った魔力を使って土の馬車を作る。そして、光魔法でユニコーンのような馬を召喚する。
「これに乗って行こう」
「すごーい!」
俺とユーリは、セレスさんを馬車に乗せ、俺の家に向かったのだった。



























「ただいまー!今帰ったよー」
俺は、門の前で待っていた、執事セバスチャンに、声をかける。
「お帰りなさいませ、シード様。お夕飯の準備はもうできております」
「ありがとう。急で悪いんだけどさ、あと2人分夕飯を作ってもらえないかな?」
「それはよろしいですが、何故?更に言わせていただきますと、この馬車はなんですか?」
「ああ、これは魔法で作った。夕飯は、この二人の分だよ」
俺は、馬車の中にいる二人を見せる。
「わかりました。旦那様には、私からご報告いたしましょうか?」
「それは大丈夫。夕飯よろしくね。このユニコーンは……………なんとかしといて」
「かしこまりました。お二人はどういたしますか?」
「とりあえず、俺の部屋に寝かしといて」
「了解です」
ユーリとセレスさんをセバスチャンに頼み、俺は、ロストの元に向かうのだった。
コンコン
ロストの部屋をノックする。
「誰だ?」
「僕だよ」
「シードか。入れ」
俺は、部屋に入り、ロストの前に立つ。
「お父さん!まずは遅くなってごめんなさい」
「それはいい。シードが無事に帰ってきたからな。でもなんでこんなに遅くなったんだ?」
俺は、ロストに森であった出来事について隠さずに告げた。
「そうか。それで今その2人はどこに?」
「僕の部屋だよ」
「そうか。それにしても、初めての森で、ブレードレッドベアにゴブリン・ジェネラル、ロードとは……。
やはりお前は天才だな!」
「ありがとう。それじゃあお風呂とかいってくるから」
「わかった。えっとセレスさんだっけ?その人は、お母さんの部屋にうつしておく」
「え?ユーリは?」
「それはお前の部屋だ。急に空き部屋を2つも用意はできんからな」
「わかった」
俺は、いろいろなものを洗い流すために、風呂場に向かうのだった。





夜になり、俺の部屋はなんとも言えない空気に支配されていた。
いや向こうはただの5歳かも知んないけど俺は、中身おっさんなんだよ!同い年の女の子と2人っきりはちょっとね………………。
「あ、あの!まだおきてますか?」
「ああ。起きてるよ」
「今日はありがとうございました。さっきはちょっと動揺しててあんな言葉遣いに……」
そこまでいって、ユーリは頬を朱色に染める。
「言葉遣いはどっちでもいいけどさ、さっきから無理してない?メイドに笑顔で振舞ったり、お母さんに心配ないって。もっと、感情をあらわ気していいと思うけど?」
「私は……別に大丈夫です…………」
図星なのか、元気がない。
「怖かったんなら怖かったっていっていいんだよ?そんなに大人ぶらなくたって。まだ5歳と少しだろ。泣いたっていいんだよ」
「私……怖かった。死んじゃうかと思った。でもお母さんが………いなくなっちゃうと思ったのが、本当に怖かったようっ!ふえぇぇぇぇぇぇん!」
何かが切れたように、感情を露わにし、泣きじゃくるユーリ。
「大丈夫。みんな生きてる。だから、泣いていいんだ」
ユーリを抱きしめ、落ち着くまでそうしていた。ユーリは、しばらくすると、スゥ、スゥとかわいい寝息をたて出した。
今日は、いろいろあったし疲れたんだろう。これで、大丈夫そうだ。
ユーリの心のケアを終え、俺も眠りにつく。
今日は、本当に疲れた。

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