茶師のポーション~探求編~

神無乃愛

迷宮主を考える


 休憩は今まで以上に交代制で。結界石に限りがあるため、結界石以外で場所の確保が出来るものはそちらで。淡々とベテラン勢で決定事項が増えていく。

 ここで反対するものがいないのは大変ありがたいとマスターたちは思った。

 マスターたちは一切気づいていないのだが、割り振りがあまりにも「公平」過ぎて文句の出ようがなかったのだ。
 グループの組み分けを再度行い、一つのグループだけで数層攻略できるよう揃えてある。そして、その中に必ず結界などを使える者、回復魔法の使える者、攻撃魔法の使える者、薬師が配置されている。
 結界を張れる者がいないのはマスターたちが所属するところだけ。これはマスターが阿形に預けているからである。最悪そこから捻出していけばいい。使った結界石はまた買えばいいだけの話である。

 ここからは四つのグループに分かれて行動する。二グループが探索している間、もう二グループは採取とマッピング、それから調査まとめと休憩を。一日おきにそれを繰り返す。結界石を必要最低限だけ使い、なるべく多くを残しておく。
もし、分断されたグループで死なない、、、、よう注意する。
 たったそれだけのことだが、それが難しい。それをここにいる探求者たちは嫌というほどに知っていた、
「さて、行きますよ」
 最初に探求に向かうのはマスターたちだった。


 文書に記されていないが、おそらくここの迷宮主は火竜だろう、それがサブマスターの言葉だった。
「え? サラマンダーじゃないの?」
「おそらくだけど、違う。サラマンダーだったら何度か姿を目撃されていてもおかしくない」
 日本の迷宮で主に一番多いのが火属性。次いで土属性、その次が水属性だ。風属性は北海道に数か所確認されているだけだ。

 これは、日本の土地柄仕方がないと言えば、仕方がない。迷宮付近で温泉がある=火山活動があった=火属性の迷宮主である可能性が高い。そしてプレートに挟まれている島国だ。こちらも、そういう場所にある迷宮には、大抵地属性の迷宮主がいる。そして水属性。有名どころで琵琶湖迷宮主や、川にある迷宮の主がそれにあたる。
「それを顧みると、ここの迷宮主は火竜。しかも古竜扱いになるんじゃないかな。……まぁ、大陸とかに比べると小さいと思うけどね」
 多分、中国の巨大火蜥蜴くらいじゃないかな? それがサブマスターの見解だという。
「なるほど。可能性は高いですね」
 古竜は温厚な性格なものが多い。若い竜ほど気性が荒いのも特徴だ。
「出来れば火竜のテリトリーには入りたくないのですが」
「それは同感。大人しい竜ほど、キレると手に負えない」
 ほんわかと話していても、サブマスターが魔獣を葬る手は休まない。
「あ、弟子君。そういうやり方すると刃こぼれを起こしやすくなるから、斬る時は……こう」
「……こう?」
「そう。型は誰に教えてもらったのか、いいと思うよ。だけど、実践ではどうやって刃こぼれを起こさないかも気にしながら振るっていくのがいい」
「はいっ」
 接近戦が苦手なマスターではこういうアドバイスをしてやれない。サブマスターに感謝だ。

 丸一日狩り続け、成果を報告して休憩に入る。

 それを繰り返すこと一週間。来た道が騒がしくなった。

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