俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?

まさみゃ〜(柾雅)

閑話的な何か 収穫祭と魔女2

 しばらく歩いていると、ユレイが言っていた村に辿り着いた。しかし、彼女は村に近づくに連れで足取りが重くなっている。ケイトはそれに気付き、質問した。

 「なあ、ユレイ。さっきから足取りが重くなってきている様だけどどうしたんだ?」

 「え⁉︎え、えっと……うん、何でもない。何でもないですよ」

 ケイトの質問にユレイはハッとする。そして急いで誤魔化した。

 「まさかじゃ無いが、村に来れない理由でもあるのか?」

 「ギクッ」

 「当たりか……」

 ユレイがケイトに本心を見抜かれそうになったところで村の入り口に着く。そこでユレイの足は止まった。

 「わ、私はここで失礼します。こ、今夜はこの村でも収穫祭をやっているので是非楽しんできてください」

 そう言ってユレイは魔女の家まで駆けて行ってしまった。ケイトは溜息をつくがすぐにウィスプ達を連れて村に入った。
 村は収穫祭だからか子供達が仮装して騒いだりしていて賑わっており、何故か屋台まで出ていた。屋台にはお菓子がたくさん売られている。

 「…………先代の勇者は馬鹿なのか?それともこの村が可笑しいのか?」

 ケイトはそう呟く。そして、村の子供達にお菓子を迫られても困るのですぐに宿屋へと向かった。




 宿屋に着いたケイトは宿の予約を済ませた後、酒場のカウンター席でマスターにユレイについて話を聞いていた。

 「なあ、マスター。マスターはユレイって言う人物について知ってるか?」

 「ユレイ?知らねぇな」

 「えっと、耳が少し長くて山に住んでる女性なんだが……」

 「耳が少し長くて山に住んでる……ああ!あの忌み子か!」

 忌み子と言う単語にケイトは首をかしげる。

 「忌み子?それはこの村に伝わる何かと関係があるのか?」

 「伝説とかは無いが、人間ウチらより少し長い耳の子供は忌み子って呼ばれてるんだ。一体誰が始めたんだろうな……まあ、兎に角そのユレイって言ったけか?そいつの事はあまりここで探らない方がいい。根も葉もない根拠を未だ信じている奴が多いからな」

 「そうか、ありがとう。じゃあ、1番高くて強い奴頼む」

 「あいよ。兄ちゃんは初めてだし少しはマケとくよ」

 ケイトは他に聞く事はないのでお酒を頼み、夜になるまで飲んだ。









 夜、ユレイはウィスプ達を迎えに村の入り口までやってた。そこで少し違和感に気がついた。何時もは収穫祭の日は賑わっているはずの時間帯だが、今回はやけに静かだ。
 ユレイは何か不安感を抱きながら村の中に駆け込む。そして見た。人化したウィスプ達を大の大人達が物騒な物を構えながら囲んでいる。しかし、誰もウィスプ達に斬りかからない。よく目を凝らして見ると、先程山で会ったケイトがウィスプ達を庇っていたのだ。右手には刀では無く、もう一つの鞘から抜かれた魔剣が握られている。そして彼の目はと言うと、何故か無関心だった。

 「魔女がやってきたぞ!」

 そこで、とある村人男性が声を上げる。その声と同時にガタイの良い男性冒険者がユレイを拘束する。

 「キャッ!」

 ユレイは突然襲われて、少し悲鳴が出る。何が起きているのか、何をされたのかもイマイチ理解しきれていない様だ。

 「おい、さっさとその魔物をこっちに寄越せ!さも無いとこいつがどうなっても良いのか!」

 その男性冒険者は拘束したユレイの首筋にナイフを当てる。しかし、ケイトは何も反応を見せない。相変わらず無関心な眼差しで剣を構えている。ユレイですらケイトが何を考えているのかも分からなかった。

 「チッ、コイツ、何を考えているのかわからねぇ……」

 徐々にナイフの刃がユレイの首筋当てる力が強くなっている。そして、ナイフが首の皮を傷付け始めたその時だった。ユレイの首筋に当てられていたナイフが地面に落ちた。いや、落ちたのはナイフだけでは無い。男性冒険者の腕も落ちていた。その腕は、未だ中に詰まっていた血液を吐き出す様に血が流れ出る。そして男性冒険者はと言うと、情け無い悲鳴を上げ崩れ落ちた。切断面からは心臓のポンプ活動によって出血の勢いが強い。そして数分間恐怖と痛みに苦しみ、気を失った。切断されてからも未だ切断面からは血が流れ出てくる。やがて、その出血量は徐々に少なくなってくる。もう男性冒険者は助からないだろう。

 「何を考えているのか分からない?そりゃあ、だっで興味無いし。個人的にはどうでも良い事だし」

 囲んでいる他の冒険者や男性村人は困惑の表情を浮かべる。何故なら、さっき腕を切断された男性冒険者からケイトまでの間合いがあまりにも距離がありすぎていたのだ。

 「この村は人間至上主義って言うタイプの所かな……」

 ケイトはそう呟く。その時、血迷ったのか1人の男性村人が鍬を構えて襲いかかった。しかし、その攻撃は乏しくケイトは一発の蹴りで鳩尾に決め、制した。そして、気絶した男性村人に回復魔法をかける。

 「俺は村人殺さない。死にたい奴だけ殺しに来な。この剣の名に負けなければ、だがな」

 囲んでいる冒険者達はさらに困惑する。そして声が響いた。

 『我が名は《魔剣:メラン=サナトス》。毒と死を司る魔剣なり。人族よ、我の怒りに触れる前に失せるが良い!』

 剣から女性の声がした。剣は魔を纏い、魔剣と名乗った。その魔剣の名はどの大陸の伝説に登場し、どの種族の恐怖と崇拝の対象であった。しかし、それは過去の話であって現在は御伽噺や神話に登場するくらいの程度であり、今の生命はその魔剣の恐ろしさを実感出来なかった。
 そもそも彼ら冒険者は金に目が昏み、村側に就いた。だから、それが危険な魔剣であっても立ち向かったのだ。
 そして、1人の女性冒険者が矢を放った。その瞬間から冒険者達はケイトに攻撃を繰り出した。放たれた矢は見事、ケイトの右肩を捉えた。そして次々とケイトの身体は攻撃を食らう。斧は左肩を割り、槍は脇腹を右から左へと貫き、短剣は腹を裂き、大剣は首を刎ねた。そこからハルバードは右脚を切断し、棍棒は心臓辺りを潰した。これで冒険者達の攻撃が収まった。しかし、彼らがさっき肉塊にした体から離れたケイトの首が突然笑い声を上げた。

 「クフフフフッアハハハハッハハハハッハハハハッ…………」

 その笑い声は狂気に満ちていた。首だけで笑う現象自体がそもそも狂気に満ちすぎているのだが、更にケイトの笑い声の狂気と合わさり、それに誰もが恐怖した。
 そして笑い声は止む。

 「ハァ……本当に人間は最高の生き物だと思うよ…人間を辞めてからずっと思ったんだけどさ、如何してそんなに無駄な事が平然と出来るのかって。両親とかに言われなかったのか?常識的な人間になれって。いや、そもそもこの世界自体が非常識か。まぁそれは如何でもいいか……」

 その瞬間、ケイトの首が黒い粒子となって消えた。が、すぐにまた話し声が聞こえた。場所は魔剣が落ちている所、つまり冒険者達の中心あたりからだ。

 「さて、初めに言ったよね?“死にたい奴だけ殺しに来な”ってね。じゃあ次はお前らが受ける番だ」

 ケイトは、再び手にした魔剣で横に薙ぎ払う。その横薙ぎは直ぐに冒険者の胴を捉えた。そして魔剣が胴に触れた瞬間、何の抵抗も無く上半身が下半身に別れを告げる冒険者が次々と作られた。中には女性の冒険者や若い冒険者もいる。彼には性別や歳は関係なかった。彼は平等すぎて村人に恐怖を植え付けた。こう思わせただろう。

 『彼は危険だ。人ではない。この惨状をギルドに報告すれば必ずこの村は消えてしまう』

 こうして、ハロウィンの日は終わった。
 その後日、ユレイはケイトにお礼を渡すために村に来たが、彼の姿は見えなかった。そこで彼女は、彼に会うためにこの土地を離れることにした。何が彼女にそう決心させたのか?それは「恋した彼に会いたい」ただそれだけの感情だった。
 旅に必要な荷物を纏め終えたユレイはウィスプ達を連れたて彼を探しに出たのであった。








 余談だが、その日以来、村から差別が消えたそうだ。そして序でに無慈悲な魔剣使いの石像も建っているらしい。

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