俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?

まさみゃ〜(柾雅)

閑話的な何か 収穫祭と魔女1

 ハロウィン、それは秋に行われる収穫祭。そして、その日にやってくる魔族を脅かし追い返す日である。
 勇者召喚により、異世界から来た勇者が収穫祭をハロウィンと言った為、今ではハロウィンと呼ばれている。しかし、初めの説明は勇者が間違えた伝え方をしていた為、この世界のハロウィンは少し違う。

 「ついにこの日が来た」

 1匹のウィスプが言った。

 「ああ、遂にこの日が来たな」

 そのウィスプの言葉に1匹の火蝙蝠フレイムバットが同調する。

 「今夜で遂に危険なかった一年の終わり、そしてその一年の始まり……しかし‼︎それでも我等は人間に屈しない‼︎」

 そして、ジャック・オー・ランタンは少しズレた謎の発言をする。

 「フッフッフッフー今回こそはアチシが勝ってやるからね!」

 ピクシーも何処かズレている?いや、元から何の話をしているのだろうか?

 「「「「今回こそ誰がお菓子をたくさん貰えるか勝負‼︎」」」」

 そう、彼らは別に大した野望なんて無かった。人族の祝い事?であるハロウィンに紛れ、ただお菓子を貰いたいだけだったのである。
 ただし、この姿のままでは直ぐに狩られてしまうので彼らはいつものところへ向かう。彼らのいつもの所は魔女の家であり、人族であるのに村から孤立した森の中にある。
 そして彼らは、いつもの魔女の家に着いた。
 っと、先に魔女の事について話しておこう。
 彼女は橘の月29日目(5月29日)に生まれ、今住んでいる森の近くにある村で育った。名はユレイ。生まれた時から他の子供と魔力量が異なり、耳も他の子より尖っていた。だから村の中ではほぼ孤立していた。だから現在進行形で人見知りである。
 そんな10歳頃の退屈な日の夜、彼女は夢を見た。それは幸福な夢では無く不幸な夢でも無い。遠いようで近い。眩しいようで眩しく無い。そんな夢に現れた剣になる「彼」は何者か?何物か?「彼」を濡らしているのは水か血液か?朝が来れば記憶が混濁する。だからなのか、彼女は気になった。その夢を見たのはハロウィンの前日、夢で見た風景は魔女の家。特徴を何も知らない「彼」に自分は魅かれている。そして、何故か「彼」に会わなければならないと言う使命感が湧き上がって来た。
 それが魔女の家に住む魔女の正体だ。
 ここからは彼らとユレイが出会った頃の話だ。
 その夢を見た日から彼女は森にある魔女の家に向かうようになった。魔女の家と言ってもただの廃墟であり誰も住んではいない。あるのは濃密な腐敗臭とその発生源、小さな可愛い魔物達だけであった。
 壊れた扉から家を覗くと、中にはウィスプ、火蝙蝠フレイムバット、ジャック・オー・ランタン、ピクシーがいた。彼らは何やら本棚を漁って居るらしい。しかし、ユレイの魔力を感じたのか直ぐにユレイの居る扉の方へ駆け寄って?来る。
 どうやら彼らはユレイの魔力を、魔女の家の持ち主のものと勘違いしたらしい。そこでユレイは本棚を漁り、彼らが探して本を見せた後に彼らに〈人化〉の魔法を掛けた。その日以来、彼らに会うためにユレイはよく魔女の家に泊まるようになった。
 だから今回も、彼らはユレイの下へとやって来たのだ。

 「魔女様、今回もよろしくお願いします!」

 ウィスプが代表としてそう言う。ユレイは微笑みながら頷きいつも通り彼らに〈人化〉の魔法を掛ける。
 その時、外から何かが転がり落ちて来る音が聞こえ、そして家の前で止まった。人化した彼らとユレイは気になりこっそりと窓から外を覗き込むと、家の前には蛮族ヴィジレンスであるオーガの様な巨体が土煙を上げながら倒れていた。土煙が晴れると、そこには返り血が滴っている1人の刀と剣を腰に下げた青年と、2mほどの巨体の男性が四肢を切られた状態で倒れていた。

 「ハァァァァァ…………やっと倒れた……てか返り血がヤバイ……動脈を切ったのは失敗か………」

 青年はそう言って、濡れた前髪を搔き上げる。ユレイは、その光景に見覚えがあった。かつて自分が幼かった頃に見た夢に登場した、「水も滴る良い男」成らぬ「血も滴る良い男」だった。

 「確か人の血って三日間匂いが「あ、あのっ!」ん?」

 ユレイは思わず話しかけてしまった。しかし、人見知りな彼女は恥ずかしいとは思わなかった。何故なら彼女の心境は、「恥ずかしい」より「やっと会えて嬉しい」と言う感情で占領されていたからだ。

 「あの、「おにーさんはだれー?」あ、コラッ」

 ユレイが青年に名前を訪ねようとした時、人化したウィスプの幼女が青年に質問する。

 「ん?お兄さんって俺の事か?俺は……ケイト、ケイト=オリサカ。で、君達は?」

 青年はケイト=オリサカと名乗った。響き的にオリサカ ケイトの方がしっくりくるので恐らく東の人だろうとユレイは思った。ユレイは青年、いや、ケイトに名前を訊かれたので答えようとした。しかし、答えようとした時に彼らが自己紹介をし始めた。

 「わたしはうぃすぷっていうの!」

 「私は火蝙蝠フレイムバット!」

 「我輩はジャック・オー・ランタン」

 「アチシはピクシーなのね‼︎」

 ウィスプを名乗る幼女、火蝙蝠フレイムバットを名乗る少女、ジャック・オー・ランタンを名乗る少年、ピクシーを名乗る少女と言う順番だ。青年は彼らの名前が魔物の名前であることに気が付いたが、刀を鞘から抜かなかった。そして口を開いて言った。

 「ああ、お兄さんは少し嘘をついてたことを君達に謝ろう。お兄さんの本当の名前はメラン=サナトス。毒と死の《魔剣》だ」

 ユレイはその言葉に衝撃を受けた。廃墟には沢山の資料があったが、魔剣が人の形を象った事例がないのだ。ましてや最凶と言われる魔剣と名乗られも脳が理解しきれない。そして、ケイトがユレイの事を見ていることにユレイは気が付いた。そう言えばまだ、ユレイは自己紹介をしていなかった。

 「あ、も、申し遅れました。私はユレイって言います。一応18歳です」

 「ユレイ…か。俺より年上だからユレイさんと呼んで良いか?」

 「あ、呼び捨てでも構いませんよ。その方が話しやすいと思いますし……」

 ユレイは少し恥ずかしそうに言う。それを見ていたウィスプは疑問を口にしようとした。

 「まじょさまは、まけんさまのことが(ムゴッ!「そ、そ、そ、そんな訳ないでしょう?そ、それにどうしたらそんな考えに辿り着くのかしら?」……プハァ…ごめんなさい。なんでもないのです」

 ユレイは安堵の表情でケイトに話しかける。

 「そ、それで、ケイトは何故ここに?」

 「気が付いたらここに。それで、この肉塊が急に襲いかかってきたから応戦してここまで至る」

 ケイトは四肢を切られて絶命した巨漢の山賊の上に立ったまま簡潔に説明した。しかし、簡潔にし過ぎたためウィスプ達は理解しきれていなかった。

 「そうですか……良かったらこの近くの村に案内しましょうか?」

 ユレイはウィスプ達が理解しようとしている間にケイトに提案する。「村」と言う単語が耳に入ったウィスプ達は考えるのを止め、村へと向かい始めたユレイとケイトの後に続いた。

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