人喰い転移者の異世界復讐譚 ~無能はスキル『捕食』で成り上がる~
65 無意味な事象などこの世に存在しない - MINUS6
車輪が大きめの石を踏み、カーゴが大きく跳ねると、その衝撃で百合は目を覚ました。
外はすでに白んでいる、いつの間にか夜が明けていたらしい。
太ももの上には、胸を枕にして眠るエルレアが。
右には窓枠で頭を支えて、涎がたれそうなほど口を開いたラビー。
そして左肩には、百合の肩にもたれかかり寝ているフランサスの姿があった。
「アカバネ、起きたか。エクロジーからは随分離れたぞ、もう戦いに巻き込まれる心配をする必要もあるまい」
目を開いた百合に向けてクリプトが言った。
その声は以前よりも低い。
桂に殴打され吹き飛ばされたレニーは、即死していた。
首がありえない方向に曲がり、クリプトが駆け寄った時にはすでに絶命していたのだ。
アニマを発現させたまま死んだ彼を運ぶわけにもいかず、遺体はまだエクロジー周辺に放置されている。
クリプトは、遺体を放棄したことも含めて、彼の死を、悔やんでも悔やみきれないと言った心境だ。
普段は何かと軽い発言の目立つ彼を叱ってばかりだったが、能力は認めていた、あれで人格の方も実は嫌いではなかった。
戦いに身を置く人間として、死という別れの可能性は常に頭のどこかで意識していたはずなのだが。
その喪失感は、思っていたよりもずっと大きい。
「ごめんなさい、こんな時なのに寝てしまって。クリプトさんはずっと起きてたんですか?」
「寝たくても寝れんよ、この状況ではな」
「……そう、ですよね」
「そう萎縮するな、君らを諌めたわけではない。むしろ羨ましいぐらいだ。眠るべき時に眠れるというのは、それだけで重要な才能だからな」
そうは言うが、百合も罪悪感を覚えていないわけではない。
岬は今も戦っているかもしれないのに、自分たちだけこうして逃げて、呑気に眠っているなんて、と。
昨晩、百合やクリプトたちは、エクロジーの住民を避難させるのに全力を尽くした。
おかげで、今のところはレニーを除いて犠牲者は1人も出ていない。
そしてエクロジーからある程度離れた場所でスキャンディー運輸を呼び、こうして住民共々複数のカーゴに別れて、帝都へと輸送してもらっているというわけだ。
「すごいですね、スキャンディー運輸って。こんな危険な場所にも来てくれるなんて」
百合は窓の外に視線を向けながら言った。
そこからは、並走するピンク色のアニムスたちの姿が見える。
「確かにな、彼らが帝国の発展に与えた影響は大きい。もっとも、今回の仕事はさすがに割増で請求されるだろうがな」
「国から出るんですよね?」
「国は国だが、俺の部隊の予算から差し引かれるだろう。まあ、生命に変えられるものではない、喜んで払うさ」
予算、という言葉を聞いて、それに悩まされるのはどこの世界でも一緒なのだな、と百合は苦笑いを浮かべた。
会話が途切れる。
すると当然、頭に浮かんでくるのは岬のことだ。
眠ってしまう前は、遠くにウルティオと桂が戦闘していることを示す光が見えていたのだが。
今はもう、外が明るくなってしまったこともあるのかもしれないが、全く見えない。
いっそ戻って岬の無事を確認してしまいたかったが――果たしてあの桂に本当に勝てるのだろうか、という疑念が衝動的な行動を抑止していた。
「まだまだだな……私」
自分の命なんてどうでもいいと思えるほど、岬に全てを捧げていたはずなのに。
本当なら、ここで何もかもを打ち捨てて戻るべきなのに。
「あまり自分を責めるな。人類が初めて直面する相手なのだ、この状況では何が正しかったかなど誰にもわからん」
「でも……」
「悔やむ余裕があるなら前を見ろ、あれが王国の手によって生み出された化物だというのなら、1機だけで終わるわけが無かろう」
クリプトはすでに次の危機の対処へと思考を移行させていた。
もしもオリハルコンを全身に装着したアニマ――王国では全身に装着するパーツのことを、アニマが乗り込むアニムスという意味でアニマ・アニムスと呼んでいたが――それが量産されたとすれば。
あれは空を飛ぶことができる、故に防衛線を容易く突破して帝国領内へと攻め込んできた。
ならばやることは1つ、本拠地への直接攻撃だろう。
クリプトが王都に戻ることを急いでいるのには、そういう理由があった。
王国との国境付近にある基地には通信設備が作られているが、そこに向かうぐらいなら帝都に戻った方が速い。
一刻も早く皇帝らに情報を伝えなければならない。
そのためには、もどかしくはあるが、地道に進むしか無いのだ。
「次に来るとしたら、複数だろうな」
「岬無しで、勝てるのかな……」
「死にたくなければ勝つしかあるまい」
正直言って、クリプトもあの化物に勝てる気はしなかったが。
それでも、気持ちで負ければ、那由多の分岐に眠っているかもしれない、唯一の勝利の可能性に辿り着くことは無いだろう。
だから折れない、いかなる相手の前でもぶれず強い将であり続ける。
そんな彼を見て、百合は『やっぱり本物の軍人さんは違うんだな』とため息をついた。
彼女は、元々ただの女子高生だ。
すぐに強くなれるわけじゃない、岬が居なければ途端に心は不安定になる。
不安からか強く下唇を噛み締めながら、百合は流れていく荒野の景色を眺めていた。
◆◆◆
王都に召喚された人間の数は、水木を含めて39人。
岬と百合を除けば37人である。
岬が王都を出るまでの間に19人が死亡、残り18人。
王都から帝国への逃走中に7人が死亡、残り11人。
そして岬の手により桂が死亡し、王都に残る生存者は残り10人となっていた。
生き残った人数は、水木を除けば女子4名に男子5名。
誰もが”次は自分だ”と怯え、食事の時以外はほとんど部屋から出なくなっていた。
昨日、聖典を盗むために大聖堂に侵入し、鞍瀬、嶺崎、吉成の3人が捕まってしまった。
もちろんその情報はすぐさま宿舎に広がり、”また減るのか”と生徒たちの絶望を与える。
しかし、聖典の盗難で囚われていた3人は、翌朝になってあっさりと解放されたのだった。
6名の生徒、水木、アイヴィが食堂で朝食摂る中、彼らは姿を表す。
生徒たちはその顔を見た瞬間に立ち上がり、笑顔で駆け寄った。
完全に死んだと思っていたクラスメイトとの再会は、6名の生徒たちに大きな勇気と歓喜を与える。
わいわいと楽しそうに騒ぐ彼らだったが――一方で水木はそのやり取りを冷めた目で眺め、アイヴィは戻ってきた3人を懐疑的に観察していた。
果たして、あの教会が彼らを無傷で返すことなどありうるのだろうか、と。
「くーちゃん、無事でよかったよぉ……!」
残った数少ない女子の1人、六平が鞍瀬に抱きついた。
ほとんどの生徒が親しい友人を亡くす中、彼女たちだけは奇跡的に2人揃って生き残っていたのだ。
鞍瀬も六平の背中に腕を回し、再会を喜ぶ。
「心配かけてごめんねむーちゃん、でももう大丈夫」
「本当に?」
「ええ、何も心配することは無いわ」
六平は鞍瀬の言い回しに若干の違和感を覚えながらも、再会に喜びに比べれば些細なものだったのか、その後も楽しそうに歓談を続けた。
嶺崎と吉成も、各々で比較的仲の良いクラスメイトと会話を交わしている。
高校生らしく騒ぐのは久しぶりだった。
年相応にはしゃぐと、少しずつ荒んだ心が癒やされていく。
『まだ諦めるには早すぎるのかもしれない』、何人かの心の中にそんな思いが芽生え始めた頃。
「そうだ、くーちゃんお腹空いてるよね? 私たちちょうど朝ごはんを食べてたところだったんだ、おばちゃんに言ったら3人の分も用意してくれるはずだからっ」
六平が鞍瀬の手を引っ張ってテーブルへと連れて行く。
「あ、待って」
鞍瀬は足を止めると、ポケットに手を突っ込んで、小さな袋を取り出した。
数人の視線が袋に集中する。
もちろん六平もその数人の中に含まれていた。
不思議そうな顔をして見つめる彼女の手のひらに、鞍瀬は袋を乗せる。
「これ、なに?」
「みんなまだなんだよね。スープに入れて飲むだけで良いんだって」
それが六平の問いへの答えになっているかと言えば、微妙なところだ。
すでに鞍瀬の目はどこか違う世界を見つめていて、もはや彼女の意識は六平へと一切向けられていないようだった。
「オリハルコンはとっても素敵な物質でね、だからみんなもその素晴らしさを理解するべきだと思ったの。力も湧いてきて、頭もすっきりして、とてもとても素晴らしいんだよ?」
――食堂の空気が凍りつく。
「いやっ」と悲鳴じみた声をあげながら、差し出された袋を地面に落とす六平。
凍りつく5人の生徒に、にやつく水木、真剣な眼差しで事の顛末を見届けるアイヴィ。
本当はわかりきっていたのだ。
生徒たちだって、3人が無事に戻ってくるとは思っていなかった。
それでも、一縷の望みに縋らなければ立っていられないほど、彼らはすでに弱っていたから。
だから信じて、そして裏切られる。
「そうだ、みんなもオリハルコンを摂取するべきだ! アニマの力も強くなる、もっと素晴らしい力を得ることができる!」
嶺崎が言う。
「それだけじゃない、気分も最高でさ。素晴らしいんだ、オリハルコンは素晴らしい物質なんだ、なあわかるだろう? どうしてわからないんだ? なあ、なあ!?」
吉成が言う。
誰も、返事はしなかった。
まるで死体でも見るように、失望に満ちた視線が3人に向けられる。
しかし当の3人は食堂に満ちた冷めた雰囲気など歯牙にもかけず、壊れた笑顔で、しつこくオリハルコンを勧め続けた。
結局、それはアイヴィが止めに入るまで続き、どうにか逃れた6名は、朝食も食べずにそれぞれ部屋に戻っていった。
「どうして止めるんですか? オリハルコンは素晴らしい物質なのに。アイヴィさんも”まだ”なんですね? どうしてですか? オリハルコンは素晴らしい物質なのに」
「そうだよ、おかしいよアイヴィさん。オリハルコンは素晴らしい物質なのに」
「断るのはオリハルコンの素晴らしさを知ってからでも遅くはありません。アイヴィさんもどうぞ、さあ、さあ早く、オリハルコンの素晴らしさを一緒に知りましょう」
まとわりついてくる3人を振りほどくと、アイヴィも食堂を後にする。
そんなやり取りを見ながら、水木は1人心底愉快そうに、声を押し殺しながら笑っていた。
◆◆◆
「全員集まったな、鞍瀬たちにも付けられてないか?」
生存している生徒のうちの1人、木暮大地が集まった5人を見ながら言った。
身長は170cmとちょっと、運動そこそこ、成績そこそこ、あまり目立つ人間でもないが、決して地味でもない。
木暮はそんな生徒だった。
本来ならばリーダーになど成りえない存在だ。
しかし、6名しか残っていない現状、紛いなりにもリーダーシップを発揮出来るのはもはや彼だけだった。
「どうしたの大地、急に部屋に呼び出したりして」
咲崎梨里が言った。
長めの髪を後ろで結んだ、つり目気味の気の強そうな女子だった。
もっとも、彼女も百合や金持の影に隠れて、以前はさほど目立たない存在だったのだが。
彼らが集められたのは、宿舎内にある木暮の部屋だ。
話をするのなら広い食堂でもいいはずだし、こうして自室に呼び出したということは――
「やっぱり、大事な話なのかな」
気の弱そうな、ふっくらとした女子、姶良希の言う通り、重要な話である可能性が高い。
姶良の言葉を聞いた木暮はこくりと頷く。
木暮の隣に居た、目が前髪で隠れた明らかに暗そうな少年、長穂英介は、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「ど、どど、どうするの? こ、このまま居たら、ボクたちも、オリハルコンとかいうわけわかんない奴に洗脳されちゃうんだよね?」
梅野駿は明らかに怯えながら言った。
小太りで気の弱そうな彼だが、持っているアニマがいわゆる”当たり”だったため、生徒たちが生き残っていた頃までは非常に調子に乗っていた。
今は、とっくに昔と同じ、さえない少年に戻ってしまっているが。
「くーちゃん……くーちゃん……」
親友である鞍瀬を失った六平は、うつむきながらひたすらに彼女の名前を呼んでいる。
ここに来れたのも、咲崎が無理やり引っ張ってきたおかげだ。
放っておけば死ぬまで、正常だった頃の親友の姿を追い続け、自分の世界に浸り続けるだろう。
「梅野の言う通りだ、ここに居たら全員がおかしくなってしまうのは間違いない。もう逃げるしかないんだよ」
「……でも、どこに?」
長穂は聞こえるか聞こえないか微妙な音量で、ぼそりと呟く。
「俺は、帝国しか無いと思ってる」
「帝国って……確か、白詰が逃げた先が帝国なんじゃないかって話があったよね」
咲崎が言った。
彼らが持っている岬に関する情報は、王都から逃亡後、破壊活動を行いつつ南下したという情報だけだ。
帝国に入ったことを知っているのは、現状ではプラナスだけ。
しかし、王国と南側に隣接している国といえば、インへリア帝国ぐらいのものだ。
岬の行き先が読まれてしまうのも仕方のないことだった。
「で、でも、本当に平気なの? 行ったら、殺されたり、しない?」
「俺達は敵国だ、その覚悟も必要かもしれない。でも――このままわけもわからずに、洗脳されて野垂れ死にするよりは遥かにマシだとは思わないか?」
「確かに……何もしないで死ぬよりは、何かをやって死ぬ方がいいよね」
姶良の言葉に、木暮は大きく頷く。
他の4人も――鞍瀬を失ったショックから立ち直れない六平を除いて、反対するものは居なかった。
「決まりだな」
「帝国に到着するには……アニマでも3日はかかるんじゃないかな……」
「長穂ってそういう細かい計算好きだよね、今は役立ってるからいいけどさ」
「……咲崎さんみたいに明るくはなれないから」
「つまり3日をどうにか追っ手から逃げ切らないといけないってことだ。なら相手に計画を悟られ無いよう、一刻も早く計画を実行に移したい」
木暮は目を閉じると、意を決して宣言した。
「今夜、決行しよう」
その言葉に全員が――六平までもが、驚きを露わにした。
◆◆◆
ドアをノックする音を聞いて、アイヴィは「どうぞ」と返事をした。
姿を表したのは、例のごとくプラナスだった。
アイヴィも察しがついていたので、無防備に来訪者を部屋に招き入れたのだ。
「今日は随分と来るのが早いな」
「アイヴィこそ、城に行かなくてもいいんですか?」
「近頃はすっかり王の信用を失っていてな、居場所が無いので午後は暇していた所だ」
「それは良いことですね」
あんな王の信頼を得られる人間なんて、もはや人間と呼ぶべきじゃない。
もっとも、これまで地道に気づきあげてきた信頼が、こうもあっさり崩れると――こんな状況でも、落ち込まずにはいられないのが人の心というものなのだが。
「ところでアイヴィ、面白い情報を仕入れたのですが」
にやりと笑いながらプラナスが言う。
「この状況で面白い情報とは、貴重だな」
「どうやら生き残った生徒たち6名、今夜にでも脱走しようとしているみたいですよ」
「……なんだと!?」
アイヴィは思わず椅子から立ち上がった。
「グラティア教に捕まえられてた3人、戻ってきたそうですね。ばっちりオリハルコンを投与されて」
「ああ……残された6人はかなりショックを受けていたようだな」
彼らの悲痛な表情が脳裏に浮かぶ。
「それがトドメだったんでしょうね。さすがに私も同情しますよ、同僚が尽く殺されたり洗脳されたり、それで生き残ったのは6人って……あれ、私たちと状況が似てますね」
「だからこそ、逃げるのを手伝えと言いたいんだな?」
見事言い当てられ、プラナスは「さすがです」と感激した。
まあ、部屋に入ってきた彼女の表情を見れば誰にでもわかったことではあるのだが――とアイヴィは考える。
実はそれが、アイヴィにしかわからない事だということに彼女は気づいていなかった。
「だが逃げてどうする、この世界のどこに安全な場所があると言うのだ」
「帝国に行くつもりみたいですね。まあ、さすがに亡命までは面倒見きれませんが」
それは嘘だ。
オラクルストーンで連絡さえ取れれば、帝国との交渉も進めることが出来る。
彼女は岬の生存を盲目的に信じているわけではないが、もし生きていたら、おそらく彼女は6人が帝国に亡命することを望んだだろう。
何せ、直接手を下すチャンスなのだから。
「ですが、王都から出る分にはどうにかなるのではないですか?」
「確かに、腐っても騎士団長だ。影響力が落ちつつあるとは言え、警備の穴を作ることぐらい造作も無いな」
「それは今夜でも?」
「容易い」
「さすがです、頼もしいです」
プラナスに褒め称えられ、アイヴィは満更でもない様子だった。
おだてられずとも最初からやるつもりではあったのだが、俄然やる気をだしたアイヴィは、早速、警備兵たちの居る詰め所へと向かうために部屋を出る。
「そう時間はかからない」とアイヴィが言っていたので、プラナスは1人で部屋に残ることにした。
一緒に居るのならともかくとして、1人で想い人の部屋に残されると言うのは、いくら付き合いの長いプラナスとはいえ緊張してしまうもので。
最初のうちは椅子に座りながらそわそわしていたのだが、次第に堪えきれずに立ち上がり、部屋を歩き回るようになった。
さらに我慢できなくなると、ついには部屋を物色しだす。
決して引き出しを開けたりはしない、表に出ているものを見ているだけだ。
「……決して見たいわけではないですよ」
服やら何やらが入っている引き出しの前で立ち止まると、そんな独り言を言ってみたり。
そうして時間を潰していると――ふいに、開きかけた、机の引き出しが目に入った。
部屋に閉まっていたり、大っぴらに開いているより、中途半端に開いた引き出しというのは好奇心をくすぐるもの。
ましてや、プラナスは王国魔法師という名ではあるものの学者である、知的好奇心の塊である。
我慢できるわけがなかった。
若干の躊躇の後、開きかけた引き出しに手をかけ、中身を拝見する。
幾多の書類、いくつかの文房具、そして――
「これは……」
小さな布袋に入った、粉末状のオリハルコンが入っていた。
とくん、とくん。
心臓が高鳴り、不安が頭にまとわりつく。
どくん、どくん。
アイヴィはただ調べていただけだ。
でも調べるすべなんて彼女にあったろうか、アイヴィがこれを持っていたからと言って何か意味があるだろうか。
何より――袋の中身に、減った形跡があるような気が――
「考え、すぎです。は、はは、心配性もここまで行くと笑えませんよ、私」
そう自分に言い聞かせて、プラナスは袋を元の状態に戻すと、乱暴に引き出しを閉めた。
オリハルコンを警戒ししているアイヴィが、粉末を持っていたからと言って何の問題がある。
何もない。
理由も無いが、問題だってなにもない。
アイヴィが詰所から戻り、いつもと変わらぬ笑顔を見せるまで――プラナスは、消えない不安と戦い続けたのだった。
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コメント
にせまんじゅう
最近誤字が多い気がするんですがしっかりと休んでくださいね。
紅神
薬物はやめよう。他にお金かけようだね