鏡の向こうで

白峰 ミコ

6話

南の部屋

たくさんの人形を引き摺りながら、重厚な鉄の扉を開けると、そこはとても広い部屋だった。
壁は見えないほど遠いところにあり天井は見えず星空が広がっている。
部屋は薄暗くまるで夜のようだが、夜空に輝く満月に照らされて活動には苦労しないだろう。
そして、クスクスという奇妙な笑い声とともにサラサラという音が聞こえる。

人形を音のする方に投げると、何かに当たった。
不可視の化け物。不可視の血、ソイツから血を奪うのかと思うと骨が折れそうだ。

不可視の者に人形を与えると、何者かわからない輪郭が見えてきた。
全体が赤く染まって、赤い滴がしたたっていた脈動しうごめくゼリー状の塊。
波うつ無数の触手のついた深紅の塊のような胴体。
そして、触手の先端についた禍々しい口。
見えない生き物。
血を吸ったために、見えない姿が見えるようになったソレに、容赦なくトリガーを引く。

5発とも命中したが、ゼリー状の塊は動かない。
食事に集中しているのか、それとも他の原因があるのか。
動かないならリロードして、もう一度構える。

今度も5発命中、ゼリーの塊に銃弾は効きにくいのか怯む様子が無い。
また次のリロードタイムになると、干からびた人形を捨て、コチラに向かって来る。
ならまた、人形を投げつける。そうしたらソレは人形を触手で捕食している間に、俺が攻撃する。
いいサイクルだ。

そして5発。リボルバーを撃ちきると共にソレは倒れた。ソレの死体は赤い液体を流しきると、また透明になっていく。
その透明になった死骸のある所に、最後の弾丸を漬ける。
するとあら不思議、不可視の弾丸の出来上がり。

これで帰れる。
これで終わる。

薬莢を捨て、不可視の弾丸を入れる。
ソレを持って鏡の部屋に行き、鏡の自分を狙う。

「やめてくれ」そんな声が聞こえた気がした。

もう、そんなことはどうでもいい。

不可視の銃弾は発射され鏡の向こうの自分に飛んでいった。

そして、意識が暗転する。

目を覚ますとそこはもとの世界。
目の前には自分を映すはずのものがあるだろう。
そこにはしっかりと自分の姿が映っている。
あの出来事はなんだったんだろうか。そもそも鏡の自分が意思を持つなんてありあえない。
だってそれは、ただの光の反射なのだから。
鏡は以前と変わらずありのままのあなたを映してくれる。
間違っているときは俺を正し、合っている時は肯定してくれる。

はたして“もうひとり”の自分はどんな思いで自分と入れ替わったのだろうか?

END

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