鏡の向こうで

白峰 ミコ

5話

鉄扉の前に立つ。

~僕はしばらく留守にするから ポチに餌をあげておいてね 餌は北の部屋にあるから たくさんあげてね~

そう書かれた貼り紙。この空間を調べていたら、色々分かってきた。
餌は北の部屋、つまりあの鏡の部屋に置いてある人形の事だろ。
たくさんあげておいて、と書かれているなら。お望みどおりたくさん持ってきてやろう。

そう思い至り、鏡の部屋に行くと。前に入った時には無かった少女が居た。

白髪、赤目、異常なほどに白い肌、生まれつき色素の薄い、アルビノと呼ばれる突然変異。

その少女は、話しかけようとした俺の言葉を無視し、無表情で語りだす。
曰く、「私はこの空間の審判」
そして、「どうやってこの空間に来たか」「もうひとりとは誰か」「この質問の答えを言えたなら、あなたを元の世界に帰す方法を教える」と言った。

その質問に俺は、あまり時間をかけずに答えた。
「精神交換という呪文を使われた」
「もうひとりは、そこに居る俺」
鏡に写る自分を指さす。

すると少女はニヤリと笑い、「正解」と言ってメモを渡す。

最後のメモ

~不可視の血を塗った弾丸でもうひとりを殺せ さすればもうひとりだけを殺すことができるだろう~

「これが最後。聞く気があったら、私の独り言を聞いて」
「これは、私の個人的な考え。もうひとりは常に踏み台にされ否定されてる」
「たとえば、朝起きて、寝癖を治すとき、鏡を使うだろう。
鏡の中の自分は常に君を映してくれて、そのおかげで、よりよい君でいられる」
「それはつまり、鏡の中の自分を踏み台にして、よりよい自分でいるんじゃないか」
「私はそんな風に思った」
「それで、私は意思を与えて、精神転移の呪文を与えた」
「そのあとは君の推理どうり。不可視の血は南の部屋、頑張って取って」
「じゃあね」

そう言って少女は消えた。
まるでそこには、初めから何も無かった。そう言いたげな虚空が残る。

少女いったい何だろうか?
イタズラ好きのカワイイ神様。そんな表現が似合う気がした。

「次に少女にあった時、なんて言おうか?」そんな事を考えながら、南の部屋へ行く。
もちろん、人形エサをたくさん持って。

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