私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
二十六話『フィオさんの憂鬱』
さて。かつてのSランク冒険者であり現マヤ大帝国王都フリーディングギルドマスターフィオ・フレーズ・アイリスの一日を語ろう。
本日、とんでもない者が三人もやってきた。
最初はギルドが騒ぎになっているのを見にいったときは、まだステータス鑑定は済んで居なかった。
私的には、可愛い少女ときれいなメイドとイケメンなような少年がギルドに加入したい、と言っているようにしか見えなかった。
しかしいざステータスを鑑定してみたら、衝撃の結果。
私は耐えられずに、国王から命じられたことを成すために、こんな新人に頼むのはいけないと分かっていながらも飛び出した。
ギルドマスター室に彼らを迎え入れると、意外にも可愛い少女、サテラが私の相手をすることになっているようだ。
しかもあろうことか彼女は私の感情をある程度読んでいた。
彼らの生活に何かするつもりはないが、ギルドから収集がある時には必ず行くこと。そして積極的に戦闘系依頼を受けることを頼んだ。
またまた意外にも、三人は快く受け入れてくれた。私は悔しかった。
―――実力があるはずなのに、どうして怯えて新人などに頼んでしまったのか。
―――Sランクだったころの精神は、何処へ行ってしまったのか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぱたん。
フィオは走らせていたペンを置いて、少々古みと汚れのあるノートを閉じた。たてにフィオの顔の半分ほどある紙の量のあるノート。
Aランクに到達して父が死んでから、毎日そのノートに日記を書き続けた。
「それにしても……ちゃんとスキルを使いこなせているかも問題か……」
「師匠、どうしたんですか? 顔色が悪いですよー?」
金髪に緑の瞳、飾りのついた白いワンピースを着た可愛い系のおよそ十代だろう少女がフィオの顔を心配そうにのぞき込む。
フィオの数少ない弟子である、クリス・フレーズ・アイリスだ。彼女は風、土、植物属性の魔術を扱うことに特化した魔術師。
クリスは下級、中級、上級、超級、超上級、神級、神上級、無級の魔術ランクの中で、最高超上級まで放つことができる才能という言葉ですら余すくらい才能のある持ち主。
ちなみに、魔術師だろうと一生で上級まで扱えたら天才扱いなのだという。
ちなみにフィオはその気になれば神級まで行けるし、追い詰められるならば神上級だって放てる。しかしそれは追い詰められたらの話だ。
「大丈夫だ、クリス。最近は面倒ごとが多くてな。……アリスはどうだ?」
「あ、聞いてくださいよぉ、アリスは六歳なのに、上級魔術まで放てたんですよ!」
「ふむ。そういえばクリスは今年で十五歳になるんだったな」
時は早いな、と微笑み、フィオは健気な弟子に癒される。アリスとクリスは姉妹で、五年前にフィオが路地裏で拾った。
理由は、物凄い才能を秘めていたからだ。
アリスは三歳から下級魔術を放ち始め、六歳で上級魔術まで扱うようになった。
この世界では貴族ならば二歳のころから鍛錬を始める者もいる。
ちなみにクリスは三歳で中級魔術まで扱えるようになった天才中の天才である。
「そうですよっ! ねーねー、師匠、模擬戦やろうよー」
「……そうだな。久しぶりに模擬戦も悪くない」
「やったぁー! アリスアリスー、師匠が模擬戦やってくれるってー!」
語尾に近づくたび、廊下を駆け抜けるクリスの声は遠くなる。その背中を見てフィオは彼女らを拾った時のことを思い出しながら微笑む。
あの時は、二人とも絶望に染まった顔をしていたが、今は明るくなっている。
自分もこの憂鬱を晴らさなければ、と思うが、いざ自分のターンになると、他人のターンで何かをしていた者達は戸惑う。
昔に散々経験してきたのに、未だ改められないのはこの点である。
ノートをポケットがないはずの服に仕舞って、フィオは席を立った。
「あまり速度を上げて走るな。転んだら模擬戦がやれなくなるぞ?」
「分かってますー!」
「クリス、模擬戦がやれるんですか? 師匠が自ら!? わぁーい!」
アリスも模擬戦が可能になったと聞くと同時に飛び上がって喜ぶ。国王の所へ行ったりギルドでの仕事が大変になっていたりと、二人の弟子の相手をしてやる暇がなかったのだ。
たまには良いな、とフィオは満面の笑みでクリスに呼びかける。
――――――早い。
――――――Sランクに居たかつての自分と同じくらいのレベルに登りつめている。
――――――喜べ、私。
――――――フラン、キミの後を継げる者が出て来たぞ。
――――――しかしフランよ。キミは否定するだろうな……。
模擬戦とは本来、模擬と言いながらも意識を別の所に泳がせてしまえば必殺の一撃を喰らう。二人の追撃をフィオは遠い目で見る。
何百年も生きてきて、何十回も記憶を持ったまま転生し続けた。
アリスとクリスは、第十二回目の転生の中で一番の仲間となっている。
「負けないもんねーだ!」
「クリスお姉ちゃん、やるよ―――二人でひとつ、それこそ姉妹」
「全てを打ち砕け」
《世界の王者は我らなり》。
かつてのフィオも、彼女の師匠であるフランの指導の元よく見てきた技だ。少女、サテラもきっと使える。
でも、フィオはきっとサテラを認めることは無い、と思っている。
――――――フラン。キミはどっちを認める? 私は、分からない。
積み重ねていた時が、複雑に絡み合って、逆に答えを見いだせない。
二、三時間の戦闘の後、勝ったのはやはりフィオである。それでもクリスとアリスは満足そうに地面にへたり込んで笑い合っていた。
―――やはりこの憂鬱は無駄なものか。
いくら考えても答えは出ない。
ならば考えるのを辞めてしまおう、とフィオは意識を転換させた。
本日、とんでもない者が三人もやってきた。
最初はギルドが騒ぎになっているのを見にいったときは、まだステータス鑑定は済んで居なかった。
私的には、可愛い少女ときれいなメイドとイケメンなような少年がギルドに加入したい、と言っているようにしか見えなかった。
しかしいざステータスを鑑定してみたら、衝撃の結果。
私は耐えられずに、国王から命じられたことを成すために、こんな新人に頼むのはいけないと分かっていながらも飛び出した。
ギルドマスター室に彼らを迎え入れると、意外にも可愛い少女、サテラが私の相手をすることになっているようだ。
しかもあろうことか彼女は私の感情をある程度読んでいた。
彼らの生活に何かするつもりはないが、ギルドから収集がある時には必ず行くこと。そして積極的に戦闘系依頼を受けることを頼んだ。
またまた意外にも、三人は快く受け入れてくれた。私は悔しかった。
―――実力があるはずなのに、どうして怯えて新人などに頼んでしまったのか。
―――Sランクだったころの精神は、何処へ行ってしまったのか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぱたん。
フィオは走らせていたペンを置いて、少々古みと汚れのあるノートを閉じた。たてにフィオの顔の半分ほどある紙の量のあるノート。
Aランクに到達して父が死んでから、毎日そのノートに日記を書き続けた。
「それにしても……ちゃんとスキルを使いこなせているかも問題か……」
「師匠、どうしたんですか? 顔色が悪いですよー?」
金髪に緑の瞳、飾りのついた白いワンピースを着た可愛い系のおよそ十代だろう少女がフィオの顔を心配そうにのぞき込む。
フィオの数少ない弟子である、クリス・フレーズ・アイリスだ。彼女は風、土、植物属性の魔術を扱うことに特化した魔術師。
クリスは下級、中級、上級、超級、超上級、神級、神上級、無級の魔術ランクの中で、最高超上級まで放つことができる才能という言葉ですら余すくらい才能のある持ち主。
ちなみに、魔術師だろうと一生で上級まで扱えたら天才扱いなのだという。
ちなみにフィオはその気になれば神級まで行けるし、追い詰められるならば神上級だって放てる。しかしそれは追い詰められたらの話だ。
「大丈夫だ、クリス。最近は面倒ごとが多くてな。……アリスはどうだ?」
「あ、聞いてくださいよぉ、アリスは六歳なのに、上級魔術まで放てたんですよ!」
「ふむ。そういえばクリスは今年で十五歳になるんだったな」
時は早いな、と微笑み、フィオは健気な弟子に癒される。アリスとクリスは姉妹で、五年前にフィオが路地裏で拾った。
理由は、物凄い才能を秘めていたからだ。
アリスは三歳から下級魔術を放ち始め、六歳で上級魔術まで扱うようになった。
この世界では貴族ならば二歳のころから鍛錬を始める者もいる。
ちなみにクリスは三歳で中級魔術まで扱えるようになった天才中の天才である。
「そうですよっ! ねーねー、師匠、模擬戦やろうよー」
「……そうだな。久しぶりに模擬戦も悪くない」
「やったぁー! アリスアリスー、師匠が模擬戦やってくれるってー!」
語尾に近づくたび、廊下を駆け抜けるクリスの声は遠くなる。その背中を見てフィオは彼女らを拾った時のことを思い出しながら微笑む。
あの時は、二人とも絶望に染まった顔をしていたが、今は明るくなっている。
自分もこの憂鬱を晴らさなければ、と思うが、いざ自分のターンになると、他人のターンで何かをしていた者達は戸惑う。
昔に散々経験してきたのに、未だ改められないのはこの点である。
ノートをポケットがないはずの服に仕舞って、フィオは席を立った。
「あまり速度を上げて走るな。転んだら模擬戦がやれなくなるぞ?」
「分かってますー!」
「クリス、模擬戦がやれるんですか? 師匠が自ら!? わぁーい!」
アリスも模擬戦が可能になったと聞くと同時に飛び上がって喜ぶ。国王の所へ行ったりギルドでの仕事が大変になっていたりと、二人の弟子の相手をしてやる暇がなかったのだ。
たまには良いな、とフィオは満面の笑みでクリスに呼びかける。
――――――早い。
――――――Sランクに居たかつての自分と同じくらいのレベルに登りつめている。
――――――喜べ、私。
――――――フラン、キミの後を継げる者が出て来たぞ。
――――――しかしフランよ。キミは否定するだろうな……。
模擬戦とは本来、模擬と言いながらも意識を別の所に泳がせてしまえば必殺の一撃を喰らう。二人の追撃をフィオは遠い目で見る。
何百年も生きてきて、何十回も記憶を持ったまま転生し続けた。
アリスとクリスは、第十二回目の転生の中で一番の仲間となっている。
「負けないもんねーだ!」
「クリスお姉ちゃん、やるよ―――二人でひとつ、それこそ姉妹」
「全てを打ち砕け」
《世界の王者は我らなり》。
かつてのフィオも、彼女の師匠であるフランの指導の元よく見てきた技だ。少女、サテラもきっと使える。
でも、フィオはきっとサテラを認めることは無い、と思っている。
――――――フラン。キミはどっちを認める? 私は、分からない。
積み重ねていた時が、複雑に絡み合って、逆に答えを見いだせない。
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