私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
二十七話『神龍討伐依頼号令』
私とフーラと名無しがギルド登録し、Bランクに上がってから二日が経った。ギルドに登録してから二週間が経っていて、怒涛の勢いでダンジョンを制覇、ワンランク上の依頼に何度も挑み、【三天王】と呼ばれ始めている。
ミルフィに教えてもらった宿のベッドに私たちは寝そべっている。
ここ二週間、何度かギルマス室に呼ばれはしたが、特に問題はなかった。
「ねえフーラ、本当の問題がここから起きそうだね?」
「そうですね……これ、本当に怖いです」
「いやぁ、竜なんて滅ぼせるでしょ。僕は刀一振りで殺したんだからさ」
フーラは怖いと言いながらも不敵な笑みで、綺麗に包装された手紙を人差し指と中指の間に挟んで顔の高さまで持ち上げた。
その姿は椅子に優雅に座っていて、ただひとつ欠けているのはパジャマ姿だということである。
名無しは相変わらず顔を見せず、真っ黒いフードを被って神秘にマントをなびかせていたが、ふと彼はフーラから手紙を奪った。
丁寧に包装された容姿を破り取り、内容を確認し、フードの中で不敵な笑みを浮かべる。
「やっぱりね。これはフィオさんからじゃないよ、国王様直々の命令だ」
「そうなの!? 名前確認してなかったけど……」
「そうでしたら、早くギルドに行かないと場合によっては首が飛びますね」
「ひええ……でも、今パジャマなのはフーラだけでしょ……?」
フーラのポーズと同じポーズを取った名無しは、指先を魔力で煌めかせると破ったはずの封筒が何事もなかったように元に戻った。
私の言葉にフーラははっ……! と言い、素早い動きで服をきた。
どれくらい、と言葉で表現するなら、名無しにフーラの着替えているところが一ミリも見えなかったという言葉で十分だ。
「フーラ、着替えで体力を失ったらだめだからね?」
「大丈夫です! 体力と耐久力と速度だけは人一倍ですので!」
「魔力と精神力と器用さでは僕が勝ってるけどね? キミメイドだよね、戦闘系の僕に器用系で勝たれてどうするの」
「あーら、名無しさんも体力と耐久力で勝たれているじゃないですか、むしろ精神力と器用さと、私の耐久力と速度で交換してくださいよ」
「いやだよ、精神力はいるし、それに僕が欲しいのはその体力だからね」
二人の火花を散らす喧嘩に私は口をはさむことができない。名無しとフーラは同じ時期に入って来た、対を成す天才ライバルだったそうだ。
同じ時期に入って来た、というのはランク戦のことだ。私は戦闘員ではないのでランク戦についてはよくわからないが、S級になるために火花を散らしていたらしい。
結局、S級になれたのは名無しで、フーラが敗退してしまったようだ。
私は本当は戦闘員になりたかったのだが、突発的な才能の発見によって魔王軍がそれをつかむのに大変になっているのだ。
それは後にして、着替えを終えたフーラと共に街に出る。
ギラギラと私たちの目を照らす太陽が、今は真夏だということを知らせていた。
魔界には季節がなく、いつでもうす寒いままなので人間界がなつかしい。
相変わらず人がたくさんでにぎやかな街は、やはり変わらずギルドの前できっぱりと人が途切れている。と、奇妙なことに気付く。
「ね、ねえ名無し。人が近づかない範囲が増えてない?」
「そりゃあね。情報屋が多いからね、マヤ大帝国は。少なからず伝わってると思うよ。―――竜が出るとか言う大情報、伝わってなきゃ可笑しい」
どこから?
どうやって?
そんなのは聞かなくても分かる。私たち冒険者の話題から盗み聞きした、簡単なことだ。今回の神龍討伐依頼にはBランク以上の冒険者全員が強制参加なのだから。
その中には口が堅い者も軽い者もいるし、こうして私たちのように、いや名無しのようにぽろりと出てきた言葉から情報を得ているのだ。
神龍討伐依頼―――。
マヤ大帝国の山脈に住んでいる、大帝国を守る神龍が何者かの力によって暴走した、という話だ。討伐してどうするんだ、と思わなくもない。
しかし、このマヤ大帝国には聖術を持つ聖女や巫女の才能を持つ者が多々いる。
彼女達の力を借りれば、この帝国を守ることもできるだろう。
「でも、巫女さんと聖女さん、本当に引き受けちゃったのかな……?」
「フィリアお嬢様には受け入れられないかもしれませんが、是が非でもそうしなければいけないようになっているのですよ」
そう言ってフーラは私の手を引いてギルドマスター室に足を踏み入れた。相変わらずフィオが威圧感丸出しで椅子に座っている。
その顔は聖女と巫女に情けをかけた私に甘いよ、と言わんばかりの笑みだ。
「君らがいなかったら私は今ココで笑みを浮かべることすら無理だっただろうな。浮かべるとしたら狂ったときか。本当に感謝する」
「ううん、大丈夫ですよ。誰かを助けるのは冒険者の役目ですよね?」
そう言って微笑みかけるも、―――ごめんなさい、これはただの偵察なんです。
人間界に情をかける気なんて、私ははなからない。
聖女と巫女については可哀そうだとは思ったが助太刀をする気はないし逃がしてやる気もないし、私とは関係ないと思っている。
必要な時は残酷に手を下すときに必要だと思う。
それよりも高い勢力を持ちながら魔王軍に人間が攻めることに、止めない聖女と巫女を恨めるくらいなのだから。
にこりとフィオに微笑みかけて、私はさらに話を進めた。
「神龍討伐依頼についてなのですが、これから私達はどうすればいいですか?」
「……ギルドマスターの権限で全てを騎士がこなすことになっている。貴様らは何も心配をせずにただ戦うことだけを考えていろ」
過保護ですまなかったな、とでも言うようにフィオの顔は少し拗ねているようだ。変な所で子供っぽいな、と子供ながら私は思った。
フィオが資料を手に取り、今度は彼女が話を進めていく―――。
ミルフィに教えてもらった宿のベッドに私たちは寝そべっている。
ここ二週間、何度かギルマス室に呼ばれはしたが、特に問題はなかった。
「ねえフーラ、本当の問題がここから起きそうだね?」
「そうですね……これ、本当に怖いです」
「いやぁ、竜なんて滅ぼせるでしょ。僕は刀一振りで殺したんだからさ」
フーラは怖いと言いながらも不敵な笑みで、綺麗に包装された手紙を人差し指と中指の間に挟んで顔の高さまで持ち上げた。
その姿は椅子に優雅に座っていて、ただひとつ欠けているのはパジャマ姿だということである。
名無しは相変わらず顔を見せず、真っ黒いフードを被って神秘にマントをなびかせていたが、ふと彼はフーラから手紙を奪った。
丁寧に包装された容姿を破り取り、内容を確認し、フードの中で不敵な笑みを浮かべる。
「やっぱりね。これはフィオさんからじゃないよ、国王様直々の命令だ」
「そうなの!? 名前確認してなかったけど……」
「そうでしたら、早くギルドに行かないと場合によっては首が飛びますね」
「ひええ……でも、今パジャマなのはフーラだけでしょ……?」
フーラのポーズと同じポーズを取った名無しは、指先を魔力で煌めかせると破ったはずの封筒が何事もなかったように元に戻った。
私の言葉にフーラははっ……! と言い、素早い動きで服をきた。
どれくらい、と言葉で表現するなら、名無しにフーラの着替えているところが一ミリも見えなかったという言葉で十分だ。
「フーラ、着替えで体力を失ったらだめだからね?」
「大丈夫です! 体力と耐久力と速度だけは人一倍ですので!」
「魔力と精神力と器用さでは僕が勝ってるけどね? キミメイドだよね、戦闘系の僕に器用系で勝たれてどうするの」
「あーら、名無しさんも体力と耐久力で勝たれているじゃないですか、むしろ精神力と器用さと、私の耐久力と速度で交換してくださいよ」
「いやだよ、精神力はいるし、それに僕が欲しいのはその体力だからね」
二人の火花を散らす喧嘩に私は口をはさむことができない。名無しとフーラは同じ時期に入って来た、対を成す天才ライバルだったそうだ。
同じ時期に入って来た、というのはランク戦のことだ。私は戦闘員ではないのでランク戦についてはよくわからないが、S級になるために火花を散らしていたらしい。
結局、S級になれたのは名無しで、フーラが敗退してしまったようだ。
私は本当は戦闘員になりたかったのだが、突発的な才能の発見によって魔王軍がそれをつかむのに大変になっているのだ。
それは後にして、着替えを終えたフーラと共に街に出る。
ギラギラと私たちの目を照らす太陽が、今は真夏だということを知らせていた。
魔界には季節がなく、いつでもうす寒いままなので人間界がなつかしい。
相変わらず人がたくさんでにぎやかな街は、やはり変わらずギルドの前できっぱりと人が途切れている。と、奇妙なことに気付く。
「ね、ねえ名無し。人が近づかない範囲が増えてない?」
「そりゃあね。情報屋が多いからね、マヤ大帝国は。少なからず伝わってると思うよ。―――竜が出るとか言う大情報、伝わってなきゃ可笑しい」
どこから?
どうやって?
そんなのは聞かなくても分かる。私たち冒険者の話題から盗み聞きした、簡単なことだ。今回の神龍討伐依頼にはBランク以上の冒険者全員が強制参加なのだから。
その中には口が堅い者も軽い者もいるし、こうして私たちのように、いや名無しのようにぽろりと出てきた言葉から情報を得ているのだ。
神龍討伐依頼―――。
マヤ大帝国の山脈に住んでいる、大帝国を守る神龍が何者かの力によって暴走した、という話だ。討伐してどうするんだ、と思わなくもない。
しかし、このマヤ大帝国には聖術を持つ聖女や巫女の才能を持つ者が多々いる。
彼女達の力を借りれば、この帝国を守ることもできるだろう。
「でも、巫女さんと聖女さん、本当に引き受けちゃったのかな……?」
「フィリアお嬢様には受け入れられないかもしれませんが、是が非でもそうしなければいけないようになっているのですよ」
そう言ってフーラは私の手を引いてギルドマスター室に足を踏み入れた。相変わらずフィオが威圧感丸出しで椅子に座っている。
その顔は聖女と巫女に情けをかけた私に甘いよ、と言わんばかりの笑みだ。
「君らがいなかったら私は今ココで笑みを浮かべることすら無理だっただろうな。浮かべるとしたら狂ったときか。本当に感謝する」
「ううん、大丈夫ですよ。誰かを助けるのは冒険者の役目ですよね?」
そう言って微笑みかけるも、―――ごめんなさい、これはただの偵察なんです。
人間界に情をかける気なんて、私ははなからない。
聖女と巫女については可哀そうだとは思ったが助太刀をする気はないし逃がしてやる気もないし、私とは関係ないと思っている。
必要な時は残酷に手を下すときに必要だと思う。
それよりも高い勢力を持ちながら魔王軍に人間が攻めることに、止めない聖女と巫女を恨めるくらいなのだから。
にこりとフィオに微笑みかけて、私はさらに話を進めた。
「神龍討伐依頼についてなのですが、これから私達はどうすればいいですか?」
「……ギルドマスターの権限で全てを騎士がこなすことになっている。貴様らは何も心配をせずにただ戦うことだけを考えていろ」
過保護ですまなかったな、とでも言うようにフィオの顔は少し拗ねているようだ。変な所で子供っぽいな、と子供ながら私は思った。
フィオが資料を手に取り、今度は彼女が話を進めていく―――。
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