私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~

なぁ~やん♡

二十二話『人界国家機密会議』

 真っ暗な部屋で、五人は重苦しい雰囲気を纏っていた。王と大将軍と第一王女、そして女王、最高文官であり元冒険者である男性。
 五人は資料を見ながら、眉をひそめていた。舌打ちをする者もいる。

「どうしたらよいのか、私には全く分からないです」

 口を開いたのは女王クラウディア。第一王女エミリアはクラウディアの意見に同意した。実際王であるフライデイルですらも意見の出しようがないのだ。
 最高文官であり戦の司令官も務めるバーネルは肘を机について優雅に微笑んだ。

 いくつも功績を積んでいるクロウス・バーネル・ヒラ・ルーズはなんと今年で二十三歳。この中で二番目に若い年齢だ。
 一方のアース・フライデイル・フライアイル・マヤも三十六歳でありながら世界平和を成し遂げたものだ。

 しかし、目の前のデータの前では何ひとつ意見が出ない。
 マヤ大帝国―――人界の中で最も大きな帝国で、莫大な財力と勢力をもつ。

「余も……これが一体何を意味するのか、読めんな」

 経験を含んだ重い声は、この場を制圧する。しかし発された言葉はこの場を制圧できるほどの威力を持っていない。

 一週間前から、あちこちで魔物が大量出現していたり、暗殺が大量に発生していたり、ギルドの財政が急に危うくなったりと色んなことが起きている。
 ギルドの財政については今一度何とかすることができたが、その影響で魔物大量出現に冒険者を出張させる金の余裕がなくなってしまっている。
 暗殺については無差別でどこで何が起こるかわからないので、手のつけようもない。

「せめてもう少し戦力があるのなら、手を打てたかもしれないけど……」

「無駄だ。マヤ大帝国はこの前キーラ王国と戦争したばかりだ。それほど兵も残されてはいない。こんな時期にミラ皇国が挑発されてこちらと戦争しようとしている。いくら私でもそれほどの対応はできんのだよ。せいぜい十五万の兵を集められていいところだ」

 バーネルの言葉と共に美しい金髪がさらりと揺らめく。いつも余裕の姿勢を崩さないところが彼の特徴である。
 バーネルの言葉に大将軍セリヤ・ゴルト・アーネストが反論する。

 ファース・エミリア・アルト・マヤとウィン・クラウディア・リーズ・マヤは二人して何やらこそこそと話している。

「どうした、エミリア、クラウディア?」

「父様。通らないと承知してはおりますが、魔王軍に協力を要請してはどうでしょう? 母様によると現代魔王ライテリアは平和を重視しているようです。敵視してはおりますが、利用するのに悪くはない人材だと思います」

「問題はその後だ。その後魔王軍と友好的になるのか? そうすれば何代も続いてきた習慣が崩れる。市民に説明がつかんのだよ」

 フライデイルはエミリアとクラウディアの言葉に同意しようとはしたが、直ぐに考えこんで疑問な点を出す。
 何代も続いてきた習慣は、魔王軍を敵視しろというものだ。

 何度人間界が破壊されてきたのか、もう数えきれないのだから、ということ。
 しかしバーネルとゴルトは顔を見合わせ、ぽんと手を叩く。

「じゃあ変えればいいんですよ。この代ではまだ人間界を壊されてはいない。もし下の者が反乱を起こすなら、それこそ魔王軍を利用して散らせれば、WINWINにもなると思いませんか?」

「そうだな……それで魔王軍が散るのならばどちらの目的も達成できる。不安も残ると思うが、そのライテリアに街に出てもらう必要もあるな」

「だが国王様。そのライテリアが反乱を起こしてこないとも限りませんぞ? 魔王軍とマヤ大帝国の勢力は殆ど同じくらいだということをお忘れで?」

 トン、と小さな音がして、後ろの扉が開かれた―――バーネル、ゴルト、エミリア、クラウディア、フライデイルは一斉にそちらを向く。
 紫の髪を足まで延ばした少女がとてて……といすに座る。

 自動的にドアが閉じ、少女はその年齢に似つかわしくない不敵な笑みを浮かべる。

「同じ勢力だというのなら、隙を突いて人質でも取ればいいじゃない。今調べたけど、魔王軍に弱点はあるわ。それはその団結力よ。四天王一人くらい、私がいれば捕まえられるわよ。どう? いい感じじゃないかしら?」

「そうね! アウラがいれば何とかなると思うわ!」

 マヤ大帝国三天王―――策略の大魔導士ファン・アウラ・ヒューゼ。その年十三歳とは思えないほどに魔術を扱えるエルフの少女。
 人に味方している原因は、マヤ大帝国に運命の人がいると信じているから。

 フライデイルはアウラからの資料を受け取り、満足そうに頷く。

「相変わらずの優秀さだな。アウラ。期待しているぞ、これからも」

「そうね、期待されるのは悪くないわ。それに魔王軍に興味もあるしね。そうと決まったら、魔界への手紙を使って伝令をしましょう?」

「そうですねアウラ。父様、いきましょう」

 木が異常なスピードで枯れている超常現象。魔導書の異常な速さでの減少。強い者の暗殺による死亡―――。楽観はできない。
 フライデイルはエミリアとクラウディアを見送りながら、そう思っていた。

 同時にいくつもの事件が起こり過ぎだ。
 もしも黒幕がいるのだとしたら、それはきっとマヤ大帝国の手には負えない。

「ああ、運命体様。マヤ大帝国はどうすればよいのでしょうか……」

「国王様、弱くなっている暇はありません」

「そういやぁ、フライデイルの弱気になっているところは久しぶりに見たわね。自信が付き始めたところをやられた感じかしら?」

 冗談を言っているアウラだが、その額には汗が流れ落ちていく。バーネルもゴルトも、必死に信じる神へ祈りをささげる。
 マヤ大帝国はここまで来たのだ―――もう崩れさせるわけには行かない。

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