私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
十八話『戦略戦争の姫と鬼族』
将軍、ファルナはイリスからの連絡を待っていた。正確にはリクからの伝令を待っていた。馬に乗るわけでもなく徒歩でここまで来ている。
後ろを振り向くと五千の魔王軍が後方に控えている。
「《跳越》」
詠唱をするとともに後ろに向かってジャンプすると、空を飛ぶように五千の軍隊をまたがり、最後方まで下がっていった。
五キロ以下ならばどこにでもジャンプできるのがこの技のいいところだ。
五キロ以上もジャンプする必要はめったにないので、ファルナは満足している。
「ファルナさん―――計画をお届けします」
「―――分かったわ。イリスったら、中々に攻めることをやるわね」
「イリス様、今回の計画には自信を持っておりましたよ」
イリスと同じく《戦略戦争の姫》の異名を貰っていたファルナは、古くからのイリスの最大のライバルである。
強さを見ればファルナの方が強いが、戦略ではイリスの方が勝る。
紅く燃え上がる炎を一本の槍にまとわせる見る者の心を震わせる美しさを持つ旗が、ファルナの手によって振られた。
「全軍―――鬼族区域を侵略しなさい」
それは全体に行き渡るような声ではなかったが―――
全員がその言葉を聞き違えるようなことは無く―――
ファルナの指揮によって士気を上げながら叫び声を上げて突き進んでいく。
ばらけて、二十人ずつ辺りに固まって強い鬼族を一人一人倒していく。まだ鬼族がこの侵略に驚いている間に削るだけ削るのだ。
そろそろ強い相手が出る、と思えるくらいには戦いの時間が過ぎていった。
「イリスの推理が間違っていなければ、此処には確か族長がいるはず」
「オウオウッ! 魔王軍かよぉ、こんなもんやらかしてくれたのはよぉ?」
「ええ、そうよ。でも私達のせいにはしないで欲しいわね、攻めてきたのはそっちからでしょう? 私たちは何もしていないわ」
「―――何もしていない、だと? 我らの食料を強奪していったのは誰だ! 我らの領域に侵略して大殺戮を起こしたのは、誰だ!?」
―――そんなことは、していない。
ファルナは記憶力がいい、どこかの領域に攻め込むなどの大事件、最近のことともなれば覚えていないのはおかしい。
それにファルナは強く、何処の戦いでも出されるのが当たり前だ。
そして魔王の性格からして、古くから友人である鬼族の食料を強奪したり大殺戮などを起こすはずがないのは皆分かっている。
「やはり、貴様ら、洗脳されているわね?」
「あ? 何のことだ? とりあえず死んどけよ、信じたのが悪かったぜ!!」
「ひとつだけ言ってあげるわ。私たちはそんなことをしていないのよ」
少し声を大きくして、ジャンプを使って前に出る。後ろから声を張り上げるのは難しかったけれど、今は至近距離で戦える。
―――久しぶりに、強い敵と戦える。
イリスは最近沢山の任務が入ってきて、ファルナの相手をしている暇がなかった。
今、ファルナの戦闘士の血が、熱く騒いだ。
「《全ステータス限界突破》!!」
ファルナのスキルは、ジャンプと全ステータス限界突破の二つしかない。しかし、この二つだけで戦場を幾度も乗り越えてきた。
初期ステータスが強ければ強いほど、限界ステータスも強くなる。
メリットしかないとも言えるような、そんなオーバーキルなスキルである。
「―――でも、戦えるなら文句は言わないわっ!」
「―――相変わらず、魔王軍にはバトルジャンキーがたくさんいるな」
まるで昔のように、会話を進めている。
しかしその仲は、もう昔のようによくはない。
剣を構える族長―――彼は何があっても名前を教えてくれなかった。何故なのかは未だ分からない。しかしその名を聞くことは、もう無理なようだ。
ファルナは伝説の剣―――精霊剣Ⅱを構えた。精霊剣Ⅱとは、精霊剣最高位のⅣより少し劣るが、魔王ライテリアの操るものよりも一段上。
精霊剣で通常の者は精霊剣Ⅰで、Ⅱになれば高価なものとなる。
族長の剣は精霊剣Ⅰだ。その気になれば勝てるだろう。しかし色々盗られたと言っているのに、貴族でも持つ者が少ない精霊剣Ⅱを持っているとは。
「聞きたいわ。その剣、何処で手に入れたの?」
「ふん。あまり言いたくないところだが、主様に渡されたのだよ。ああ、主様というのはフラネス様のことではない」
「言いたくないのなら何でいうのかしら?」
「言えと言われたのだよ……これ以上は言わん。死ぬがいい!」
―――死ぬわけないじゃない。
族長のバカな物言いに呆れながらも、ファルナは剣を振るった。ファルナが死ぬ前には援護の軍隊が駆けつけてくるはずだ。
あのライテリアとイリスがファルナを手放す可能性は低い。
「はっ!」
「ぐっ……! ふんっ!」
ファルナが腕力に全身体強化を振った渾身の一撃を受けとめ、族長は剣の重さに呻きながらも反撃の一撃を放つ。
その一撃にファルナは手慣れた動きで手早く飛びのく。
ファルナに一撃を与えた敵は、今までにイリスとライテリアしかいない。
逆に言えば、それ以上の敵と戦ったことがないのだが、族長の強さはライテリアを超えていない。反してファルナの実力はライテリアとあまり違わないくらいだ。
(でも。この戦いは私が負ける)
すでに、ファルナたち五千人の兵は二千人まで削られてしまっていた。
対して鬼族はまだまだ戦力がある―――
「っあぁ―――」
「リイ!」
「お兄様―――加勢に参りました」
族長の妹リイは、族長と同じ強さだ。それが、一生の間気配を隠すことだけに専念してきた。いくらファルナでもリイの存在は嗅ぎつけられなかった。
背中から腰までナイフで切り付けられ、ファルナは倒れ、転移する。
最高戦力ファルナを失い、戦場は完全に鬼族の有利になっていた―――。
後ろを振り向くと五千の魔王軍が後方に控えている。
「《跳越》」
詠唱をするとともに後ろに向かってジャンプすると、空を飛ぶように五千の軍隊をまたがり、最後方まで下がっていった。
五キロ以下ならばどこにでもジャンプできるのがこの技のいいところだ。
五キロ以上もジャンプする必要はめったにないので、ファルナは満足している。
「ファルナさん―――計画をお届けします」
「―――分かったわ。イリスったら、中々に攻めることをやるわね」
「イリス様、今回の計画には自信を持っておりましたよ」
イリスと同じく《戦略戦争の姫》の異名を貰っていたファルナは、古くからのイリスの最大のライバルである。
強さを見ればファルナの方が強いが、戦略ではイリスの方が勝る。
紅く燃え上がる炎を一本の槍にまとわせる見る者の心を震わせる美しさを持つ旗が、ファルナの手によって振られた。
「全軍―――鬼族区域を侵略しなさい」
それは全体に行き渡るような声ではなかったが―――
全員がその言葉を聞き違えるようなことは無く―――
ファルナの指揮によって士気を上げながら叫び声を上げて突き進んでいく。
ばらけて、二十人ずつ辺りに固まって強い鬼族を一人一人倒していく。まだ鬼族がこの侵略に驚いている間に削るだけ削るのだ。
そろそろ強い相手が出る、と思えるくらいには戦いの時間が過ぎていった。
「イリスの推理が間違っていなければ、此処には確か族長がいるはず」
「オウオウッ! 魔王軍かよぉ、こんなもんやらかしてくれたのはよぉ?」
「ええ、そうよ。でも私達のせいにはしないで欲しいわね、攻めてきたのはそっちからでしょう? 私たちは何もしていないわ」
「―――何もしていない、だと? 我らの食料を強奪していったのは誰だ! 我らの領域に侵略して大殺戮を起こしたのは、誰だ!?」
―――そんなことは、していない。
ファルナは記憶力がいい、どこかの領域に攻め込むなどの大事件、最近のことともなれば覚えていないのはおかしい。
それにファルナは強く、何処の戦いでも出されるのが当たり前だ。
そして魔王の性格からして、古くから友人である鬼族の食料を強奪したり大殺戮などを起こすはずがないのは皆分かっている。
「やはり、貴様ら、洗脳されているわね?」
「あ? 何のことだ? とりあえず死んどけよ、信じたのが悪かったぜ!!」
「ひとつだけ言ってあげるわ。私たちはそんなことをしていないのよ」
少し声を大きくして、ジャンプを使って前に出る。後ろから声を張り上げるのは難しかったけれど、今は至近距離で戦える。
―――久しぶりに、強い敵と戦える。
イリスは最近沢山の任務が入ってきて、ファルナの相手をしている暇がなかった。
今、ファルナの戦闘士の血が、熱く騒いだ。
「《全ステータス限界突破》!!」
ファルナのスキルは、ジャンプと全ステータス限界突破の二つしかない。しかし、この二つだけで戦場を幾度も乗り越えてきた。
初期ステータスが強ければ強いほど、限界ステータスも強くなる。
メリットしかないとも言えるような、そんなオーバーキルなスキルである。
「―――でも、戦えるなら文句は言わないわっ!」
「―――相変わらず、魔王軍にはバトルジャンキーがたくさんいるな」
まるで昔のように、会話を進めている。
しかしその仲は、もう昔のようによくはない。
剣を構える族長―――彼は何があっても名前を教えてくれなかった。何故なのかは未だ分からない。しかしその名を聞くことは、もう無理なようだ。
ファルナは伝説の剣―――精霊剣Ⅱを構えた。精霊剣Ⅱとは、精霊剣最高位のⅣより少し劣るが、魔王ライテリアの操るものよりも一段上。
精霊剣で通常の者は精霊剣Ⅰで、Ⅱになれば高価なものとなる。
族長の剣は精霊剣Ⅰだ。その気になれば勝てるだろう。しかし色々盗られたと言っているのに、貴族でも持つ者が少ない精霊剣Ⅱを持っているとは。
「聞きたいわ。その剣、何処で手に入れたの?」
「ふん。あまり言いたくないところだが、主様に渡されたのだよ。ああ、主様というのはフラネス様のことではない」
「言いたくないのなら何でいうのかしら?」
「言えと言われたのだよ……これ以上は言わん。死ぬがいい!」
―――死ぬわけないじゃない。
族長のバカな物言いに呆れながらも、ファルナは剣を振るった。ファルナが死ぬ前には援護の軍隊が駆けつけてくるはずだ。
あのライテリアとイリスがファルナを手放す可能性は低い。
「はっ!」
「ぐっ……! ふんっ!」
ファルナが腕力に全身体強化を振った渾身の一撃を受けとめ、族長は剣の重さに呻きながらも反撃の一撃を放つ。
その一撃にファルナは手慣れた動きで手早く飛びのく。
ファルナに一撃を与えた敵は、今までにイリスとライテリアしかいない。
逆に言えば、それ以上の敵と戦ったことがないのだが、族長の強さはライテリアを超えていない。反してファルナの実力はライテリアとあまり違わないくらいだ。
(でも。この戦いは私が負ける)
すでに、ファルナたち五千人の兵は二千人まで削られてしまっていた。
対して鬼族はまだまだ戦力がある―――
「っあぁ―――」
「リイ!」
「お兄様―――加勢に参りました」
族長の妹リイは、族長と同じ強さだ。それが、一生の間気配を隠すことだけに専念してきた。いくらファルナでもリイの存在は嗅ぎつけられなかった。
背中から腰までナイフで切り付けられ、ファルナは倒れ、転移する。
最高戦力ファルナを失い、戦場は完全に鬼族の有利になっていた―――。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
22803
-
-
55
-
-
310
-
-
841
-
-
267
-
-
58
-
-
1168
-
-
89
-
-
37
コメント