私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
十一話『人形使いの女の子は』
泥だらけになったり、刺されて回復されたり魔法陣を作りまくったり魔力を極限までつかってみたり。テーラ様によるとステータスに限界は無い。
神眼を取得した後に見てみると、無限にプラスされた量が見えた。
元のステータスの限界は『0』が百個付いたら終わりらしい。神眼を使えば、百個以上も見れる。私はゼロ百個の上にまた千個付いていたらしい。
ちなみにテーラ様は何兆個くらい付いているらしい。
その後オロオロしながらも魔王城に戻ると、ちょっとだけ怒られた。
頭をこつん、とグーで叩かれて今私はしゅんとしながら部屋で正座している。
「ごめんなさい……」
「いや、いいんだ。……フィリア。逆に大賢者のところにもう一度行ってほしい」
「え? なんで? ふぃりあ悪いことした!?」
「フィリアは悪くないんだ。でもこれからやる事に巻き込みたくない」
魔王様の後ろにいる、ぬいぐるみを抱いた小さな女の子。私より小さくて、とてもかわいい、肩までの黒い髪の毛で、フリルのドレスを着ている。
不安気にこちらを見ているが―――この子が関係あるのか。
「―――どこかの一族が、攻めてきた、なの」
「ナタリー!?」
「そのどこか、というのは、鬼の一族、で、すごーく強い、なの」
それならもっと―――私が必要なのでは。
途切れ途切れに紅い瞳でまっすぐ私をとらえて話す女の子―――ナタリー。
顔は不安気なのに、その瞳はまるで私を射抜こうとしているようだ。
「なら、もっと私が必要なんじゃ―――」
「奴らは異世界人を嫌う。俺達のことを構わずフィリアだけを攻撃した場合、今の君に反撃の術はない」
「そんな」
「おとなしく、話を聞いて、ワタシが、いるなの。テーラ様の所へ、いって、なの」
魔王様は私のことを信頼している、鈍感じゃないからわかるよ?
でもそんな魔王様でさえ、私をテーラ様の家に行かせようとする。
ナタリーが只者じゃないのは、私にもわかる。けど。この間に魔王様を守ると宣言したばかりなのに、なぜ私だけ逃げるのだろう?
小説の主人公みたいな優しい心とかじゃなくて、直感的にそう思った。
良心が刺激された、と言っても正しいかもしれない。
「だめ。ふぃりあ、残る。ふぃりあは魔王様の力になることで、やっと此処に居る意味が与えられるって気づいたんだよ」
「危ないの。フィリア、やめよ――――」
「そうか。ナタリーに勝てたら鬼族への攻撃を許そう。勝てなかったら戦場へ行くことは許さない。鬼族が攻めて来るまで残り一週間―――」
「一度でも勝てたら、ふぃりあ、戦場行くね!」
「―――ライテリア、甘い、なの。まあ今回は、許す、なの」
というか私、ナタリーと戦うということ。ナタリーは謎だらけで、鑑定でステータスを見ることができない。
それに、魔王様を名前で呼び捨て。魔王様は気にした感じもない。
不安気なナタリーの顔が、ふと優越感をふつふつと漂わせる不敵な笑みに変わった。
「―――ない、なの」
「へっ? 何ですか?」
「ワタシに、勝てた奴、なんて、いない、なの!」
にやぁ。
ナタリーの表情は、そんな効果音を使うのに、よく似合っていた。
「ナタリーさんッ! 行きましょう!」
「ちょ、なの」
私はそんなナタリーの表情を気にもせず、ナタリーの手を引いて歩き出した。ナタリーはぬいぐるみを抱いたまま私についてくる。
フィリアが去ったあとに、金髪に紅い瞳のやはり豪華なフリルのドレスを着た、フィリアと同じくらいの女の子がライティアの後ろから近づいた。
「ふん、まったく恐ろしいデスのよ。こんなゴスロリ一家が元吸血鬼一族だとは、誰が知っても驚きますデスの」
「そうだな―――全く魔王は敵が多い」
「そうデスわね。でも、ライテリアならきっといけますデスわ」
ふと自分の心に問いかけてみると、ライテリアは今いるこの現実が本当に正しいのか疑えてしまうときがある。
「なあ、アシュリア。俺は合ってるか?」
「合ってるデスよ。少なくとも間違っていることでは無いデス」
アシュリア―――昔滅びた吸血鬼一族の生き残り、その家族の母なる人物だ。ナタリーはアシュリアよりも強い、アシュリアの娘だ。
ライテリアは自身の行いを肯定するアシュリアの言葉に、静かに頷いた。
「時間が来たら、フィリアを元の世界に返すつもりだ」
「やっぱりそうデスのね」
「此処は危険が多すぎる、やっとできた大切な人をここで見送りたくはない」
「せめて安全な所に居て欲しい―――そういうことデスのね?」
「ああ、そういうことだ」
アシュリアの言葉を繰り返し、ライテリアは確かめるようにまた自分の心にも問いかけた。合っているかという答えは永遠に帰ってこない。
こんな危険な場所でフィリアを死なせるわけにはいかない―――。
それだけは言えた。
もしかしたらフィリアは怒るかもしれない。もしかしたらフィリアはライテリアのことを嫌うかもしれない。
でも、死地へ送り込むよりはいいんだ―――。
「急げ―――《人形使い》。操られている原因を探るんだ」
「仰せのままに。ライテリア」
しゅん……。
アシュリアが転移して急に静かになった部屋が、意外にも心地の良いものだった。
ライテリアは、考えていた。
何代も続けられた人間への暴行を、あの人間が簡単に許すはずはない。
まず、謝りに行く前に戦争が終わらない。
こんなことを始めた自分が悪い。
こんな世界から消えられるのなら、消えてしまいたいけれど――――。
「まだだ、まだ消えちゃダメだ」
涙を、こらえる。
蒼い髪をした、足まで長い髪の少女を―――思い出す。
「俺は―――フランのためには、まだ―――」
久しぶりに、涙が流れてしまったようだ。
神眼を取得した後に見てみると、無限にプラスされた量が見えた。
元のステータスの限界は『0』が百個付いたら終わりらしい。神眼を使えば、百個以上も見れる。私はゼロ百個の上にまた千個付いていたらしい。
ちなみにテーラ様は何兆個くらい付いているらしい。
その後オロオロしながらも魔王城に戻ると、ちょっとだけ怒られた。
頭をこつん、とグーで叩かれて今私はしゅんとしながら部屋で正座している。
「ごめんなさい……」
「いや、いいんだ。……フィリア。逆に大賢者のところにもう一度行ってほしい」
「え? なんで? ふぃりあ悪いことした!?」
「フィリアは悪くないんだ。でもこれからやる事に巻き込みたくない」
魔王様の後ろにいる、ぬいぐるみを抱いた小さな女の子。私より小さくて、とてもかわいい、肩までの黒い髪の毛で、フリルのドレスを着ている。
不安気にこちらを見ているが―――この子が関係あるのか。
「―――どこかの一族が、攻めてきた、なの」
「ナタリー!?」
「そのどこか、というのは、鬼の一族、で、すごーく強い、なの」
それならもっと―――私が必要なのでは。
途切れ途切れに紅い瞳でまっすぐ私をとらえて話す女の子―――ナタリー。
顔は不安気なのに、その瞳はまるで私を射抜こうとしているようだ。
「なら、もっと私が必要なんじゃ―――」
「奴らは異世界人を嫌う。俺達のことを構わずフィリアだけを攻撃した場合、今の君に反撃の術はない」
「そんな」
「おとなしく、話を聞いて、ワタシが、いるなの。テーラ様の所へ、いって、なの」
魔王様は私のことを信頼している、鈍感じゃないからわかるよ?
でもそんな魔王様でさえ、私をテーラ様の家に行かせようとする。
ナタリーが只者じゃないのは、私にもわかる。けど。この間に魔王様を守ると宣言したばかりなのに、なぜ私だけ逃げるのだろう?
小説の主人公みたいな優しい心とかじゃなくて、直感的にそう思った。
良心が刺激された、と言っても正しいかもしれない。
「だめ。ふぃりあ、残る。ふぃりあは魔王様の力になることで、やっと此処に居る意味が与えられるって気づいたんだよ」
「危ないの。フィリア、やめよ――――」
「そうか。ナタリーに勝てたら鬼族への攻撃を許そう。勝てなかったら戦場へ行くことは許さない。鬼族が攻めて来るまで残り一週間―――」
「一度でも勝てたら、ふぃりあ、戦場行くね!」
「―――ライテリア、甘い、なの。まあ今回は、許す、なの」
というか私、ナタリーと戦うということ。ナタリーは謎だらけで、鑑定でステータスを見ることができない。
それに、魔王様を名前で呼び捨て。魔王様は気にした感じもない。
不安気なナタリーの顔が、ふと優越感をふつふつと漂わせる不敵な笑みに変わった。
「―――ない、なの」
「へっ? 何ですか?」
「ワタシに、勝てた奴、なんて、いない、なの!」
にやぁ。
ナタリーの表情は、そんな効果音を使うのに、よく似合っていた。
「ナタリーさんッ! 行きましょう!」
「ちょ、なの」
私はそんなナタリーの表情を気にもせず、ナタリーの手を引いて歩き出した。ナタリーはぬいぐるみを抱いたまま私についてくる。
フィリアが去ったあとに、金髪に紅い瞳のやはり豪華なフリルのドレスを着た、フィリアと同じくらいの女の子がライティアの後ろから近づいた。
「ふん、まったく恐ろしいデスのよ。こんなゴスロリ一家が元吸血鬼一族だとは、誰が知っても驚きますデスの」
「そうだな―――全く魔王は敵が多い」
「そうデスわね。でも、ライテリアならきっといけますデスわ」
ふと自分の心に問いかけてみると、ライテリアは今いるこの現実が本当に正しいのか疑えてしまうときがある。
「なあ、アシュリア。俺は合ってるか?」
「合ってるデスよ。少なくとも間違っていることでは無いデス」
アシュリア―――昔滅びた吸血鬼一族の生き残り、その家族の母なる人物だ。ナタリーはアシュリアよりも強い、アシュリアの娘だ。
ライテリアは自身の行いを肯定するアシュリアの言葉に、静かに頷いた。
「時間が来たら、フィリアを元の世界に返すつもりだ」
「やっぱりそうデスのね」
「此処は危険が多すぎる、やっとできた大切な人をここで見送りたくはない」
「せめて安全な所に居て欲しい―――そういうことデスのね?」
「ああ、そういうことだ」
アシュリアの言葉を繰り返し、ライテリアは確かめるようにまた自分の心にも問いかけた。合っているかという答えは永遠に帰ってこない。
こんな危険な場所でフィリアを死なせるわけにはいかない―――。
それだけは言えた。
もしかしたらフィリアは怒るかもしれない。もしかしたらフィリアはライテリアのことを嫌うかもしれない。
でも、死地へ送り込むよりはいいんだ―――。
「急げ―――《人形使い》。操られている原因を探るんだ」
「仰せのままに。ライテリア」
しゅん……。
アシュリアが転移して急に静かになった部屋が、意外にも心地の良いものだった。
ライテリアは、考えていた。
何代も続けられた人間への暴行を、あの人間が簡単に許すはずはない。
まず、謝りに行く前に戦争が終わらない。
こんなことを始めた自分が悪い。
こんな世界から消えられるのなら、消えてしまいたいけれど――――。
「まだだ、まだ消えちゃダメだ」
涙を、こらえる。
蒼い髪をした、足まで長い髪の少女を―――思い出す。
「俺は―――フランのためには、まだ―――」
久しぶりに、涙が流れてしまったようだ。
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