私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
八話『だいけんじゃさまのおうちへ!(3)』
単純に魔力を放出するだけでも威力は出る。私のイメージ力はこの世界の者よりも上なので、技のイメージが完成すればそれで最強になる。
地球で沢山の魔法少女アニメを見たりで魔法のイメージがしやすいからだろう。
笛が鳴ってからのレインさんの攻撃は、本気のようには見える。
けど動きが遅すぎて何度も間合いに入ってしまう。
でもできれば魔王様に教えてもらった魔法で勝ちたいので、倒すことは無い。
「おい……お前、本気で来てねえ、だろ……? 来いよ、待ってやる……」
「ふええ!? いいんですか!? じゃあ……《魔力放出》」
技の名前についてのセンスはあまりないので、もうこれでいいやと自己放棄する。
少しそれらしくない技の名前とは合わず、音速を超える速度で濃密な魔力が射撃されていく。
テーラ様は当たり前の結果を見るように頷いている。
ただでさえ肩で息をしているレインにこの衝撃は耐えきれず、とても大きな訓練場の向こうまで吸い込まれるように吹き飛ばされていく。
「わ、勝っちゃった! テーラ様、ふぃりあ勝ったよ」
「勝ったね。フィリアちゃん、おめでとう」
テーラ様は吹き飛ばされたレインに見向きもせず、私の頭を優しくなでてくれた。久しぶりに感じる魔王様とは一味違った暖かさ。
女子の友情を味わっていると、満身創痍のレインが戻ってきた。
「テーラ様……こんな強いなんて、聞いてねえ……」
「フィリアちゃんに吹き飛ばされるのなら、ボクに挑むのは何千万年早いね。ボクの最上階に一番近いのは君なのに……」
「だ、大丈夫だよレインさん! レインさんは強くなれるもん!」
意気消沈して、戦闘態勢を崩しているレインさんの顔は、その姿に似合わずとても弱々しいものだった。きっと勝たなければいけないのだろう。
勝たなければいけない、そんな訳がレインさんにはあるのだろう。
でもだからこそ、私は彼を励まさなければいけない―――そう思った。
「俺も……情けねえな……こんな小さな子に、慰められるなんてよ」
「ううん、ふぃりあは慰めてなんかいない! できないことはないって、教えてるだけなの。だってやればなんだってできるんだよ」
心から、そう思った。
魔王城のまわりには魔王様に味方する人間たちがいる街―――魔街がある。そこで300年前に行われた戦いの映像を見せられたことがある。
それを見て、初めて《やってみよう》と思ったのだ。
才能が無い者が這い上がっていく―――それこそこの異世界の楽しさのひとつ。
「レインさん、ふぃりあも強くなるから、レインさんも強くなろうよ」
「はは……フィリアが強くなったら今度こそ世界が崩壊するぜ……」
「レイン」
「問題ないさ……そこまで漏らしてねえだろ……?」
「失礼な! ふぃりあは世界を崩壊させることなんてしないよ」
「それは……どうだかな‥‥‥」
私が差し伸べた手をレインさんはぱし、と大きな手で受け取った。レインさんがつぶやいた一言にテーラ様が指摘する。
でも私は何を言っているのか全く分からない。
でも世界を崩壊させる、と言ったのは間違いなく私をちょっと怒らせた。
ほんのちょっとだけ。
ちょっと怒鳴ってみたけれど、やはりレインさんはゆったりした姿勢を崩さない。まあ、元々期待はしていない。
でも、本当に世界を崩壊させるなんてこと、私は絶対にしない。
「じゃあフィリアちゃん。―――訓練しようか!」
「やったぁ! レインさんも来る?」
「俺は……いや、俺も行ってやる……」
一緒に行くことをためらったレインさんだが、すぐに立ち上がって歩き始めた私とテーラ様に付いて行く。
ちらりと後ろを振り向いたテーラ様が薄く笑った。
私はレインさんの過去を知らないけれど、きっと積極的に何かをすることができなくなったりしたのだろう。
私が何か言ったりはできないけれど、せめて。
―――せめて、楽しませてあげたい。
その頃、魔王城ではフィリアの残した手紙に慌ただしくなっていた。
「大体どこに行ったかは分かる……だが探さないで下さいと言っているのに探したら嫌われる……? いや、何処かに行ったことそもそもが……!?」
「魔王様。気をお鎮めください。フィリアお嬢様が誰かを嫌うことなんてよっぽどなことがない限りありませんよ」
「それにフィリア嬢は魔王様命じゃないですか」
魔王ライテリアと魔王第四幹部リゼと魔王第二幹部アリアがフィリアからの手紙を握り、ライテリアが青ざめていた。
それをリゼとアリアが微笑ましそうに見ながら鎮める。
ライテリアとフィリアの生活は見ているだけで楽しいのだ。
「そうですわ。きっとフィリア様はみんなのためにどこかへお出かけになられているのですわよ」
魔王第一幹部サテラが言う。
ちなみにサテラは魔王幹部四天王の中で一番強い伝説の幹部だ。しかしその伝説の幹部も魔王のこととなれば何でもするようになる……。
ライテリアという存在は魔王城の中でいわば癒しの存在。
女性にも男性にも人気―――それがライテリアとフィリアなのである。
「仕方ないっすよ。フィリアお嬢は強いッスし、怪我することは無いっすよ。それに行き先はライティア様が信頼できる所なんッスよね?」
「ああ。ライト。……俺はどうすればいい……?」
「ま、魔王様がお気を取り乱しておりますわっ!?」
第三幹部ライトがそういうと、ライテリアは涙目で問いかける。
「ど、どうすればいいんですのっ!?」
―――ああ。魔王城は、今日も忙しい―――
地球で沢山の魔法少女アニメを見たりで魔法のイメージがしやすいからだろう。
笛が鳴ってからのレインさんの攻撃は、本気のようには見える。
けど動きが遅すぎて何度も間合いに入ってしまう。
でもできれば魔王様に教えてもらった魔法で勝ちたいので、倒すことは無い。
「おい……お前、本気で来てねえ、だろ……? 来いよ、待ってやる……」
「ふええ!? いいんですか!? じゃあ……《魔力放出》」
技の名前についてのセンスはあまりないので、もうこれでいいやと自己放棄する。
少しそれらしくない技の名前とは合わず、音速を超える速度で濃密な魔力が射撃されていく。
テーラ様は当たり前の結果を見るように頷いている。
ただでさえ肩で息をしているレインにこの衝撃は耐えきれず、とても大きな訓練場の向こうまで吸い込まれるように吹き飛ばされていく。
「わ、勝っちゃった! テーラ様、ふぃりあ勝ったよ」
「勝ったね。フィリアちゃん、おめでとう」
テーラ様は吹き飛ばされたレインに見向きもせず、私の頭を優しくなでてくれた。久しぶりに感じる魔王様とは一味違った暖かさ。
女子の友情を味わっていると、満身創痍のレインが戻ってきた。
「テーラ様……こんな強いなんて、聞いてねえ……」
「フィリアちゃんに吹き飛ばされるのなら、ボクに挑むのは何千万年早いね。ボクの最上階に一番近いのは君なのに……」
「だ、大丈夫だよレインさん! レインさんは強くなれるもん!」
意気消沈して、戦闘態勢を崩しているレインさんの顔は、その姿に似合わずとても弱々しいものだった。きっと勝たなければいけないのだろう。
勝たなければいけない、そんな訳がレインさんにはあるのだろう。
でもだからこそ、私は彼を励まさなければいけない―――そう思った。
「俺も……情けねえな……こんな小さな子に、慰められるなんてよ」
「ううん、ふぃりあは慰めてなんかいない! できないことはないって、教えてるだけなの。だってやればなんだってできるんだよ」
心から、そう思った。
魔王城のまわりには魔王様に味方する人間たちがいる街―――魔街がある。そこで300年前に行われた戦いの映像を見せられたことがある。
それを見て、初めて《やってみよう》と思ったのだ。
才能が無い者が這い上がっていく―――それこそこの異世界の楽しさのひとつ。
「レインさん、ふぃりあも強くなるから、レインさんも強くなろうよ」
「はは……フィリアが強くなったら今度こそ世界が崩壊するぜ……」
「レイン」
「問題ないさ……そこまで漏らしてねえだろ……?」
「失礼な! ふぃりあは世界を崩壊させることなんてしないよ」
「それは……どうだかな‥‥‥」
私が差し伸べた手をレインさんはぱし、と大きな手で受け取った。レインさんがつぶやいた一言にテーラ様が指摘する。
でも私は何を言っているのか全く分からない。
でも世界を崩壊させる、と言ったのは間違いなく私をちょっと怒らせた。
ほんのちょっとだけ。
ちょっと怒鳴ってみたけれど、やはりレインさんはゆったりした姿勢を崩さない。まあ、元々期待はしていない。
でも、本当に世界を崩壊させるなんてこと、私は絶対にしない。
「じゃあフィリアちゃん。―――訓練しようか!」
「やったぁ! レインさんも来る?」
「俺は……いや、俺も行ってやる……」
一緒に行くことをためらったレインさんだが、すぐに立ち上がって歩き始めた私とテーラ様に付いて行く。
ちらりと後ろを振り向いたテーラ様が薄く笑った。
私はレインさんの過去を知らないけれど、きっと積極的に何かをすることができなくなったりしたのだろう。
私が何か言ったりはできないけれど、せめて。
―――せめて、楽しませてあげたい。
その頃、魔王城ではフィリアの残した手紙に慌ただしくなっていた。
「大体どこに行ったかは分かる……だが探さないで下さいと言っているのに探したら嫌われる……? いや、何処かに行ったことそもそもが……!?」
「魔王様。気をお鎮めください。フィリアお嬢様が誰かを嫌うことなんてよっぽどなことがない限りありませんよ」
「それにフィリア嬢は魔王様命じゃないですか」
魔王ライテリアと魔王第四幹部リゼと魔王第二幹部アリアがフィリアからの手紙を握り、ライテリアが青ざめていた。
それをリゼとアリアが微笑ましそうに見ながら鎮める。
ライテリアとフィリアの生活は見ているだけで楽しいのだ。
「そうですわ。きっとフィリア様はみんなのためにどこかへお出かけになられているのですわよ」
魔王第一幹部サテラが言う。
ちなみにサテラは魔王幹部四天王の中で一番強い伝説の幹部だ。しかしその伝説の幹部も魔王のこととなれば何でもするようになる……。
ライテリアという存在は魔王城の中でいわば癒しの存在。
女性にも男性にも人気―――それがライテリアとフィリアなのである。
「仕方ないっすよ。フィリアお嬢は強いッスし、怪我することは無いっすよ。それに行き先はライティア様が信頼できる所なんッスよね?」
「ああ。ライト。……俺はどうすればいい……?」
「ま、魔王様がお気を取り乱しておりますわっ!?」
第三幹部ライトがそういうと、ライテリアは涙目で問いかける。
「ど、どうすればいいんですのっ!?」
―――ああ。魔王城は、今日も忙しい―――
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