私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
五話『まおうさまの魔法』
それから二日後、本当は全回復したのに魔王様が私を心配して訓練させてくれないので、色々勉強して一日を過ごすことにした。
だって、皆魔王城修復で暇だから構ってくれないんだもん。
でも魔王様は優しくて、忙しいはずなのにいっぱい構ってくれる。
勇者たちは神の加護を貰ってるし、神を召喚できるから私が倒れただけで、それに訓練もあまりしていないから―――と魔王様は励ましてくれている。
でも、私は強力な敵も一瞬で倒せるくらい、強くなりたいなあ。
「フィリア。人はね、強力な攻撃魔法ばかり使って攻撃すると思う?」
「えっとね、罠魔法を使って影ながら落としたり、毒を使って麻痺させたり、分身を使ってどこを狙えばいいかわからなくしたりする!」
「そうだな。フィリアの場合は―――」
魔王様の手から淡い黒の光が出て、それが収まった時、そこには真っ黒な魔導書―――禁魔導書が乗っていた。
魔王のみに与えられる、真の禁断だ。
「《複製》」
ピカー、と辺りが光る。目を覆いたかったけれど、私は美しい光をずっと眺めていた。光が収まると魔王様の手の中には禁魔導書が二つ置かれていた。
ご丁寧に、手のひらの真ん中に。
魔王様は満足したように微笑み、その中のひとつを私に差し出した。
「この中のモノをマスターできるといいかもしれないね」
「図書館のはどうするの?」
「……そうだな、それについてはしばらくやらなくてもいいかもしれない。あそこには―――」
「何かあるの?」
「いや。少しフィリアにとって不利なものがあるだけだよ」
そう言った魔王様の顔にははっきりと罪悪感が書いてあった。昔から感情が顔に出やすいのは、私が一番よく知っている自信がある。
私にとって不利なもの。
人より上だと言えるこの脳でも、理解することは不可能だった。
私に、不利なもの。
考えても考えても、その答えを導き出せることはない。
「そうだな。いまからフィリアのステータスが他人にどう映し出されるか、見てみよう」
「ふぃりあ、気になる!」
魔王様の手が私に向けられる。
「《ステータス鑑定・魔神級》」
今回はあまり光らなかった。私の目の前に薄いパネルが出てきて、ステータスらしきものが映し出される。
これがステータスとみて間違いはないだろう。
種族:魔王の娘
レベル:
名前:フィリア・ミルシア
スキル:全知全能LV∞
ステータス:筋力SS×∞ 耐久SS×∞ 敏捷SS×∞ 魔力SS×∞ 幸運SS×∞ 特殊SS×∞
「ふぃりあのスキル、結構少なく見えてるんだね……」
「全知全能スキルにはフィリアが取得したスキルを全部内包する。全知全能というスキルそのもので世界のスキルを取得できるが、それは何もしない場合だ。使い方によっては《複製》スキルでユニークスキルまでコピーできるからな」
「ふぃりあ、強い!」
「さらに《強奪》を使えばそのユニークスキルはフィリアの物になる……複製スキルと強奪スキルは学ばせておかなければならないな」
「うん! 勉強する! ふぃりあ、強くなる!」
目をキラキラを輝かせて魔王様に詰め寄ると、魔王様はまた困った顔、でも優しい顔をして「や、やめろよ……」と言った。
全知全能スキルは全てのスキルを内包する、それまではいいが。
《改良》
《魔術作成》
この二つの現存するユニークスキルを合体させれば大変なことになる。
魔術作成で作った魔法を改良したり、《改良》だけでも現存するすべてのスキルを改良することができる。
さらにその際《強奪》を使えば元の主だった者はそれらを使えなくなる。
完全に私の勝利、ということだ。
可能性も無限大、私はわくわくして仕方がなかった。
「よし。フィリアの部屋に帰ろう。禁魔導書や《複製》と《強奪》を学ばなければいけないからな」
「うん!」
部屋に帰ると、早速禁魔導書を机に置いて魔王様を見た。
「何かを奪いたいと思え……」
「何かを、奪う……」
腕に魔力を流す。何が欲しいのか、イメージを膨らませながら。スキルが、欲しい。みんなを守れるようなスキルがほしい―――!
《スキル《強奪》を取得しました。これからの《欲しいというイメージ》については他人のスキルに限ります》
「わーい! 魔王様! ふぃりあ、取得できたよ」
「す、すごいな、フィリア……ちょっと恥ずかしいが、俺は一日かかったよ」
普通に話しているが、人間ランクにとっては信じられない話だ。
スキルを取得するのに、天性的なものではなく自分から取得する場合は、それこそ血反吐でも吐くくらいの努力が必要だ。
《強奪》ほどのスキルともなれば、一か月以上は必要だ。
「ね、ねえねえ魔王様。人間達って魔法のことをまじゅちゅっていうの……あ……えへへ、噛んじゃった」
「そうだな。人間は魔法のことを魔術という……俺もたまに噛んでしまうから心配するな。魔術と言って一回も噛んだことのない者はこの城にはいない」
だから、先程《魔術作成》を説明した時、魔法ではなく魔術だったのか。
やっと理解した。
人間と魔王城の文化が違いすぎて、私は少し理解に追いつかないのだ。
噛んだことのない者はこの城には居ない、というが、人間はきっと噛まないのだろう。
やっぱり分からない。
「じゃあ、《複製》に入ろうか」
「うん」
そのまま私は魔王様と訓練をし続けた。
禁魔導書も五分の二ほど進めたとき、魔王様がふと空を見上げた。
「もう遅いな。次は明日にしよう」
「……うん」
「すまないな、フィリア。君はとてもいい子だよ」
「えへへ」
魔王様はそっと私の髪を撫でて行って、去っていった。突然話し声も消えて人も私しかいなくなった部屋は、とても淋しかった。
知らぬ間に出てきた涙をぬぐって、私はベッドにダイブした。
だって、皆魔王城修復で暇だから構ってくれないんだもん。
でも魔王様は優しくて、忙しいはずなのにいっぱい構ってくれる。
勇者たちは神の加護を貰ってるし、神を召喚できるから私が倒れただけで、それに訓練もあまりしていないから―――と魔王様は励ましてくれている。
でも、私は強力な敵も一瞬で倒せるくらい、強くなりたいなあ。
「フィリア。人はね、強力な攻撃魔法ばかり使って攻撃すると思う?」
「えっとね、罠魔法を使って影ながら落としたり、毒を使って麻痺させたり、分身を使ってどこを狙えばいいかわからなくしたりする!」
「そうだな。フィリアの場合は―――」
魔王様の手から淡い黒の光が出て、それが収まった時、そこには真っ黒な魔導書―――禁魔導書が乗っていた。
魔王のみに与えられる、真の禁断だ。
「《複製》」
ピカー、と辺りが光る。目を覆いたかったけれど、私は美しい光をずっと眺めていた。光が収まると魔王様の手の中には禁魔導書が二つ置かれていた。
ご丁寧に、手のひらの真ん中に。
魔王様は満足したように微笑み、その中のひとつを私に差し出した。
「この中のモノをマスターできるといいかもしれないね」
「図書館のはどうするの?」
「……そうだな、それについてはしばらくやらなくてもいいかもしれない。あそこには―――」
「何かあるの?」
「いや。少しフィリアにとって不利なものがあるだけだよ」
そう言った魔王様の顔にははっきりと罪悪感が書いてあった。昔から感情が顔に出やすいのは、私が一番よく知っている自信がある。
私にとって不利なもの。
人より上だと言えるこの脳でも、理解することは不可能だった。
私に、不利なもの。
考えても考えても、その答えを導き出せることはない。
「そうだな。いまからフィリアのステータスが他人にどう映し出されるか、見てみよう」
「ふぃりあ、気になる!」
魔王様の手が私に向けられる。
「《ステータス鑑定・魔神級》」
今回はあまり光らなかった。私の目の前に薄いパネルが出てきて、ステータスらしきものが映し出される。
これがステータスとみて間違いはないだろう。
種族:魔王の娘
レベル:
名前:フィリア・ミルシア
スキル:全知全能LV∞
ステータス:筋力SS×∞ 耐久SS×∞ 敏捷SS×∞ 魔力SS×∞ 幸運SS×∞ 特殊SS×∞
「ふぃりあのスキル、結構少なく見えてるんだね……」
「全知全能スキルにはフィリアが取得したスキルを全部内包する。全知全能というスキルそのもので世界のスキルを取得できるが、それは何もしない場合だ。使い方によっては《複製》スキルでユニークスキルまでコピーできるからな」
「ふぃりあ、強い!」
「さらに《強奪》を使えばそのユニークスキルはフィリアの物になる……複製スキルと強奪スキルは学ばせておかなければならないな」
「うん! 勉強する! ふぃりあ、強くなる!」
目をキラキラを輝かせて魔王様に詰め寄ると、魔王様はまた困った顔、でも優しい顔をして「や、やめろよ……」と言った。
全知全能スキルは全てのスキルを内包する、それまではいいが。
《改良》
《魔術作成》
この二つの現存するユニークスキルを合体させれば大変なことになる。
魔術作成で作った魔法を改良したり、《改良》だけでも現存するすべてのスキルを改良することができる。
さらにその際《強奪》を使えば元の主だった者はそれらを使えなくなる。
完全に私の勝利、ということだ。
可能性も無限大、私はわくわくして仕方がなかった。
「よし。フィリアの部屋に帰ろう。禁魔導書や《複製》と《強奪》を学ばなければいけないからな」
「うん!」
部屋に帰ると、早速禁魔導書を机に置いて魔王様を見た。
「何かを奪いたいと思え……」
「何かを、奪う……」
腕に魔力を流す。何が欲しいのか、イメージを膨らませながら。スキルが、欲しい。みんなを守れるようなスキルがほしい―――!
《スキル《強奪》を取得しました。これからの《欲しいというイメージ》については他人のスキルに限ります》
「わーい! 魔王様! ふぃりあ、取得できたよ」
「す、すごいな、フィリア……ちょっと恥ずかしいが、俺は一日かかったよ」
普通に話しているが、人間ランクにとっては信じられない話だ。
スキルを取得するのに、天性的なものではなく自分から取得する場合は、それこそ血反吐でも吐くくらいの努力が必要だ。
《強奪》ほどのスキルともなれば、一か月以上は必要だ。
「ね、ねえねえ魔王様。人間達って魔法のことをまじゅちゅっていうの……あ……えへへ、噛んじゃった」
「そうだな。人間は魔法のことを魔術という……俺もたまに噛んでしまうから心配するな。魔術と言って一回も噛んだことのない者はこの城にはいない」
だから、先程《魔術作成》を説明した時、魔法ではなく魔術だったのか。
やっと理解した。
人間と魔王城の文化が違いすぎて、私は少し理解に追いつかないのだ。
噛んだことのない者はこの城には居ない、というが、人間はきっと噛まないのだろう。
やっぱり分からない。
「じゃあ、《複製》に入ろうか」
「うん」
そのまま私は魔王様と訓練をし続けた。
禁魔導書も五分の二ほど進めたとき、魔王様がふと空を見上げた。
「もう遅いな。次は明日にしよう」
「……うん」
「すまないな、フィリア。君はとてもいい子だよ」
「えへへ」
魔王様はそっと私の髪を撫でて行って、去っていった。突然話し声も消えて人も私しかいなくなった部屋は、とても淋しかった。
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