私は魔王様の騎士なのです~最強幼女が魔王様のために行く!~
四話『まおうさまが大好き』
三十分くらいの間、激しい攻防があちこちで繰り返されていた。私は死の神タナトスに何度も殺されては暗黒覇王の力で何度も死に戻る。
禁断の力を解放し、淡いクリーム色の髪を真っ黒に染めている私。
呪いの力を放出しては、タナトスの自己回復能力に怒りを覚える。殺せない。
「娘よ。なぜそこまで魔王を守るのだ?」
「魔王様は、優しいの! 前代達みたいじゃなくて、本当に平和を夢見てるの―――ふぃりあはそんな魔王様が、大好きなの!」
私は杖を振り上げて、また振り落とす。振り落とした場所から順に冷たい氷が地面を這いつくばるように上に伸びながら進んでいく。
タナトスがそれに手を向けると、死の力で消滅する。
その間に私は同じ魔法を生成し続ける―――。
「―――」
《言霊》
体中が青い光に包まれ、その光が収まったころ、紅と黒の瞳は消え、今度は真っ青になり、私の表情もあまり表されなくなった。
言霊とは、言った言葉がそのまま実行されるスキル。
私のユニークスキルで、世界をも超える《運命体》の力を借りて発動する。
「【死の祝福を】」
「きゃ!?」
「タナトス……様……絶対斬撃……」
死の祝福を打ち消す私の隙を見て、男は知らない間に別の神を召喚して補注していた魔力を使い、私の肩から腹にかけて斬撃を撃ちだした。
見事に当たってしまった。
膝をついて、口から血を吐いてタナトスを見上げる。
「ソーマさんは、召喚士、だった、ん、だ、ね」
「ほう? この状況でそれが言えるか、貴様はもう死ぬのだぞ?」
「うう、ん。ふぃりあ、は、死なないよ、魔王様、が、いる、から」
憎たらしそうにソーマとタナトスを見るのではなく、私は純粋な微笑みを彼らに向けた。手をそっと首のペンダントに当てる。
これは魔王様にもらった――――――。
「【死滅】」
「がっ」
頭の上から圧力がかけられ、そう、例えるなら先程私が人間達にかけたように重力を体に乗せる魔法が放たれた。
頭から潰れて倒れた私。
でも体の原形は整っていて、頭も完全につぶれたわけではない。
全ステータスは固定されているもの以外秒で減っていくのが分かる。命を繋ぐための生命力や体力、魔力も秒で減っていく。
減りすぎて無限まであった魔力が数字で表せるようになっていく。
「……《全ステータス修復》」
でも、私は諦めない。
虚ろな瞳で、傷だらけの体で、それでもかろうじて手を動かして、ペンダントを触る。この呪文を唱えれば、全ステータスが初期に戻る。
そして体の全異常も通常状態に戻されるという代物だ。
落としてしまったシルヴィアを持ち直して、傷ひとつない体を起こす。疲労は確かにたまっている。このペンダントじゃあ決して消えない。
でも、魔王様の所にタナトスを通したら、どうなるかわからない。
「あぁあああああああ――――――っ!!」
全魔力を乗せて、言霊を唱えた。
「《この者に―――死の呪いを》」
これこそ、失われた真の禁断魔術。人間はこれを―――欲しがっていた。
タナトスが信じられないという顔をしながら、塵となって消えていった。私はあまりの疲労でその場に崩れ落ち、地面に倒れ伏せた。
小さな手で必死に地面を支えてまた立とうと踏ん張る。
「フィリア!!! 大丈夫か!! やめろ、無茶をするな!!」
「まおう……さま……?」
走ってきた魔王様にキャッチされて、私は小さな震える声で問いかける。体力が無さ過ぎて、いろいろ話したいのに声も出ない。
神様に勝てて嬉しいのに、魔王様の顔は哀しそうで。
魔王様は駆け出し、全速力で魔王城の私の部屋に駆け出していく。
意識が薄れる。
でもだめだ、まだ伝えたいことがある―――!
「まおうさま……」
「どうした?」
「大好き!」
満面の笑みでそういって私は魔王様の腕の中で眠った。
「やれやれ、仕方ない人だ、君は」
眠る寸前、そんな声が聞こえた気がした。
―――えへへ。でも、嘘じゃないんだよ。
守り抜いた。
魔王様の所へ行かせなかった。
今は達成感から来る喜びで心がいっぱいになり、とっても幸せな夢を見た。
「仕方ないねえ、フィリアは」
《運命体》
そう名乗った少女。
彼女はいつもどこにいるのか―――その答えは無い。無限の虚無の空間の中で、彼女は世界を観察し続けるのだ。
しかし、フィリアが次元旋風で次元を曲げ続けたせいで、運命が捻じ曲げられて少女がこの空間から出られるようになってしまったのだ。
「ボクのミライまで変えてしまうなんて、さすがボクの見定めた子だよ」
最初から、現実世界で少女はフィリアに祝福を与えた。天才的頭脳、明晰な意識、見た物を記憶する能力、容姿端麗、性格優美―――。
様々な祝福と加護を与えて、フィリアのことをとても気に入った。
「まあ―――性格優美はいらなかっただろうね……」
フィリアが死んだあと、少女はフィリアの性格優美の加護を取り消したのだ。しかしその性格は全く変わらず、驚いた。
しかも、運命体の作ったものまで捻じ曲げるとは。
「これはボク、向こうの世界に行かないと気が済まないみたいだね―――」
久しぶりに、好奇心の血が騒いだ。喧嘩では誰にも負けないし、誰かが傍に来るだけで強大な力に押しつぶされて死んでしまう。
だが、フィリアならばなんともないかもしれない。
少女は座っていた椅子から立った。
美しい銀髪がその動作に合わせて、優美に揺れ動いた――――――。
禁断の力を解放し、淡いクリーム色の髪を真っ黒に染めている私。
呪いの力を放出しては、タナトスの自己回復能力に怒りを覚える。殺せない。
「娘よ。なぜそこまで魔王を守るのだ?」
「魔王様は、優しいの! 前代達みたいじゃなくて、本当に平和を夢見てるの―――ふぃりあはそんな魔王様が、大好きなの!」
私は杖を振り上げて、また振り落とす。振り落とした場所から順に冷たい氷が地面を這いつくばるように上に伸びながら進んでいく。
タナトスがそれに手を向けると、死の力で消滅する。
その間に私は同じ魔法を生成し続ける―――。
「―――」
《言霊》
体中が青い光に包まれ、その光が収まったころ、紅と黒の瞳は消え、今度は真っ青になり、私の表情もあまり表されなくなった。
言霊とは、言った言葉がそのまま実行されるスキル。
私のユニークスキルで、世界をも超える《運命体》の力を借りて発動する。
「【死の祝福を】」
「きゃ!?」
「タナトス……様……絶対斬撃……」
死の祝福を打ち消す私の隙を見て、男は知らない間に別の神を召喚して補注していた魔力を使い、私の肩から腹にかけて斬撃を撃ちだした。
見事に当たってしまった。
膝をついて、口から血を吐いてタナトスを見上げる。
「ソーマさんは、召喚士、だった、ん、だ、ね」
「ほう? この状況でそれが言えるか、貴様はもう死ぬのだぞ?」
「うう、ん。ふぃりあ、は、死なないよ、魔王様、が、いる、から」
憎たらしそうにソーマとタナトスを見るのではなく、私は純粋な微笑みを彼らに向けた。手をそっと首のペンダントに当てる。
これは魔王様にもらった――――――。
「【死滅】」
「がっ」
頭の上から圧力がかけられ、そう、例えるなら先程私が人間達にかけたように重力を体に乗せる魔法が放たれた。
頭から潰れて倒れた私。
でも体の原形は整っていて、頭も完全につぶれたわけではない。
全ステータスは固定されているもの以外秒で減っていくのが分かる。命を繋ぐための生命力や体力、魔力も秒で減っていく。
減りすぎて無限まであった魔力が数字で表せるようになっていく。
「……《全ステータス修復》」
でも、私は諦めない。
虚ろな瞳で、傷だらけの体で、それでもかろうじて手を動かして、ペンダントを触る。この呪文を唱えれば、全ステータスが初期に戻る。
そして体の全異常も通常状態に戻されるという代物だ。
落としてしまったシルヴィアを持ち直して、傷ひとつない体を起こす。疲労は確かにたまっている。このペンダントじゃあ決して消えない。
でも、魔王様の所にタナトスを通したら、どうなるかわからない。
「あぁあああああああ――――――っ!!」
全魔力を乗せて、言霊を唱えた。
「《この者に―――死の呪いを》」
これこそ、失われた真の禁断魔術。人間はこれを―――欲しがっていた。
タナトスが信じられないという顔をしながら、塵となって消えていった。私はあまりの疲労でその場に崩れ落ち、地面に倒れ伏せた。
小さな手で必死に地面を支えてまた立とうと踏ん張る。
「フィリア!!! 大丈夫か!! やめろ、無茶をするな!!」
「まおう……さま……?」
走ってきた魔王様にキャッチされて、私は小さな震える声で問いかける。体力が無さ過ぎて、いろいろ話したいのに声も出ない。
神様に勝てて嬉しいのに、魔王様の顔は哀しそうで。
魔王様は駆け出し、全速力で魔王城の私の部屋に駆け出していく。
意識が薄れる。
でもだめだ、まだ伝えたいことがある―――!
「まおうさま……」
「どうした?」
「大好き!」
満面の笑みでそういって私は魔王様の腕の中で眠った。
「やれやれ、仕方ない人だ、君は」
眠る寸前、そんな声が聞こえた気がした。
―――えへへ。でも、嘘じゃないんだよ。
守り抜いた。
魔王様の所へ行かせなかった。
今は達成感から来る喜びで心がいっぱいになり、とっても幸せな夢を見た。
「仕方ないねえ、フィリアは」
《運命体》
そう名乗った少女。
彼女はいつもどこにいるのか―――その答えは無い。無限の虚無の空間の中で、彼女は世界を観察し続けるのだ。
しかし、フィリアが次元旋風で次元を曲げ続けたせいで、運命が捻じ曲げられて少女がこの空間から出られるようになってしまったのだ。
「ボクのミライまで変えてしまうなんて、さすがボクの見定めた子だよ」
最初から、現実世界で少女はフィリアに祝福を与えた。天才的頭脳、明晰な意識、見た物を記憶する能力、容姿端麗、性格優美―――。
様々な祝福と加護を与えて、フィリアのことをとても気に入った。
「まあ―――性格優美はいらなかっただろうね……」
フィリアが死んだあと、少女はフィリアの性格優美の加護を取り消したのだ。しかしその性格は全く変わらず、驚いた。
しかも、運命体の作ったものまで捻じ曲げるとは。
「これはボク、向こうの世界に行かないと気が済まないみたいだね―――」
久しぶりに、好奇心の血が騒いだ。喧嘩では誰にも負けないし、誰かが傍に来るだけで強大な力に押しつぶされて死んでしまう。
だが、フィリアならばなんともないかもしれない。
少女は座っていた椅子から立った。
美しい銀髪がその動作に合わせて、優美に揺れ動いた――――――。
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