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ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

オークだった男

 脅威は排除された。どこに隠れていたのか、姿を消していた町民たちが戻ってくる。
 安全を確かめるまで、払拭される事のない不安。
 それが時間の経過と比例して薄れている。
 誰かが声をあげ、指をさす。

 「あの子が魔物モンスターを倒したのか?」

 あの相手――――カスミはビクッと驚いた。 
 それが肯定として伝わったらしい。 
 あとは、もう―———英雄の扱いだ。

 カスミを中心に集まる町民たちの数は数十人――――いや、三桁の数字に届いているだろう。
 誰かが叫ぶ。

 「救世主さまだ!」

 それが始まりとなり、カスミの処遇は決定的になった。
 「あわあわ」と動揺を隠せないカスミ。

 「どうしよう、これ! ねぇミミックくん……あれ?」

 そこで初めて、背中から俺が消えているのに気づいたようだ。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 カスミから距離を取った俺は裏路地に向かった。
 別にカスミと一緒に英雄扱いされるのが、嫌だったわけではない。
 ……いや、多少なりに嫌だと逃げ出したかった感情もあった。
 しかし、それがカスミから離れた理由ではない。

 ずる……
       ずる……

 目抜き通りから聞こえてくる歓喜の声。
 それが遠く聞こえる裏路地には、体を引きずる音が怨嗟の声に聞こえる。
 その声が俺に届いたのは、人間よりも発達した五感によるものだろうか?
 否。
 おそらくは―——— 
 たぶん―――

 ――――ひとえに俺もまた――――同種なのだろう。

 「誰だ!」

 ソイツは叫んだ。
 後ろから這い寄るが影の如く近づく俺を認識したのだ。
 俺は姿を現す。
 姿を現した俺にソイツはどのような表情をしているのだろうか?
 ここは漆黒の闇の世界だが、ソイツの顔が見えないのは闇のせいだけではない。
 黒いのだ。 
 業火に焼き払われたソイツは、全身を焼かれたソイツは、もはや人として区別がつくような顔ですらなかった。
 ソイツは、先ほどまで破壊の権化とも言えるオークだった男だ。

「おぉ、ミミックか。殺しに来たか? この化け物めが」

 ソイツは笑っていた。
 だから俺も笑っていた。
 先に笑いを止めたのは相手の方だった。

 「笑うな!」

 理不尽な怒りだ。だが、理解はできる。
 彼にはそれしか残されていないのだ。彼の中には怒りしか残っていない。
 そして、彼はこう続けた。

 「化け物め、ニンバリさまの理想を理解できぬ怪物め。私がこの力を手に入れるため、なにを代償にしたか聞きたいか?」
 「————いや、聞きたくないが?」
 「あの方が私の前に現れた時、力を授けてくださった。しかし、あの方は、私に芽生えた力を取りなさった。なぜか? わかるか?」
 「————いや、分かりたくもないが?」
 「あの方は、こうおっしゃった。『この力がほしいなら解界しなさい』……と」

 俺は、初めて彼に向かう速度を緩めた。

 「だから……俺はすぐに家に帰り―———殺した。家族を殺し、世界のしがらみを殺し、この世界から逸脱してみせたのだ」

 俺は緩めた速度を速めた。だが————

 「お前はどうだ? お前は何人の人を殺した? だって、お前は―———

 魔物モンスターなのだからな!」

 そしてこう続ける。

 「お前が俺を殺すのか? 怪物? なぜだ? お前と私————

 同族ではないか?」

 おそらく、それは男の本心なのだろう。
 そして、心底理解できないのだろう。

 同じ怪物の自分と俺の差異が―———

 

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