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ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

ギルドからの刺客?

 その日の内にギルドからの返信が送られてきた。
 近場にあるギルドの支店と情報共有を開始。
 すでに何人かの冒険者がニンバリの屋敷周辺に潜伏。監視を開始しているそうだ。
 「やれやれ」と僕はベッドに倒れ込み、天井を見つめた。

 「お役目御免ですね。早く帰りたい」

 思い浮かぶのはシーラ女王の姿だった。
 僕は傷あとを確認するように擦る。

 「また無茶をしたと怒られるでしょうね」

 熱くなり過ぎるのはいけない癖だ。
 それは散々、シーラ女王からのお叱りと実体験で身に染みているはずなのだが……
 自重するために振る舞いや言動を洗練させたが、悪い癖は直らない。
 むしろ、年々と酷くなっている気すらしてくる。

 「………さん……マイク…トさん……マイクロフトさん…」

 !?
 どこからか自分を呼ぶ声がする。
 小さな声だが……確かに……
 敵ではないと断言できる。敵ならば僕が気づく前に襲えば良い。
 それに、僕でも存在を気づかせないほどの『気配遮断スキル』の使い手になると限られている。
 おそらくは―――

 「ギルドからの使いです」

 その男はベッドの下から現れた。
 長時間、ベッドの下に潜っていたはずだが、その姿に汚れは見て取れなかった。

 (なんらかの魔法……いや、スキルか?)

 「マイクロフトさんの護衛を任せられました。ポートといいます」

 おそらく年上? 20代後半かな?
 真紅の衣服。髪まで赤く染めている。
 片手にはステッキ。それも赤い。
 ポートを名乗った青年は、ギルドが特殊な依頼クエスト時に発行する身分証明を見せてくる。
 今は何も表示されていない、無地のカードだが……
 僕が手で触れ、極小の魔力を流すと、徐々に文字が浮き出てきた。
 間違いなくギルドが依頼した冒険者だ。 

 「ポートさん。ギルドはどう動きます?魔族の動きは?」
 「まぁまぁ、慌てずに、落ち着いて。ギルドからマイクロフトさんへ連絡は来ているでしょう。そのままですよ。まずは魔族たちの監視に牽制……それも専門家集団である『聖騎士団』の到着までですが」

 「……なるほど」と僕は落ち着きを取り戻した。
 しかし、落ち着いてみると奇妙な違和感が生じてきた。
 あのニンバリの屋敷には、魔族が2人。
 ニンバリ本人と負傷したコウ。そして、コウの母親が監禁されている。
 コウの母親は除いても、2人の魔族がいる。それも戦闘不能の状態でだ。
 敵対戦力は、ほぼ沈黙。
 それは囲うだけと言うのは……安全策にしては慎重すぎやしないか?
 人員が集まってない?いや、それはない。
 この町だって冒険者はいる。
 いくら荒くれぞろいと言っても、ギルドからの仕事となれば真剣に受ける者も少なくないはず。
 ならば、この膠着状態は意図的に起こされているという事か?
 なんのために……
 視界の隅で何かが光った。

 (あの煌めき……白刃か!)

 無手の僕はベッドから転がるようにして剣撃を避ける。

 (体の反応が遅い。怪我の影響かッ!)

 避けきれなかったのか真白な病院着に切れ目が入り、そこが赤く染まっていく。
 僕は敵影に声をかけた。

 「なんのつもりですか? ポートさん? やはり貴方は――――ギルドからの刺客だったのですね」

 確信はない。しかし、襲われたという事実は何よりの証拠だ。
 敵影は、僕の声に答えるようにゆらりと揺れた。
 そして、姿を消した。

 (消えた?僕よりも上位の『気配遮断スキル』といい……職業は『暗殺者アサシン』ぽいな)

 と言っても『気配遮断スキル』だけで姿そのものを消滅させる事はできない。
 ならば、他にも特殊なスキルを有しているのだろう。
 ……いや、そんな分析をしてる場合じゃないか。なぜなら―――

 風切音。

 体を丸めてやり過ごす。頭の上に剣が通過していく風を感じる。
 次に感じたのは打撃。蹴りの連続。
 避けられない打撃から鈍痛を与えられた。
 だが、攻撃の瞬間にはポートは姿を現す。

 (反撃を!)

 そう思った次の瞬間には、離れた場所から風切音が再び近づいてくる。
 僕は地面に転がるシーツと枕を見えない敵に投げつける。
 シーツが切り裂かれ、一瞬だがポートの太刀筋が見えた。
 僕は魔力を使い、足から天井へ張り付く。

 「むっ……どこへ?」

 ポートは姿を現した。
 キョロキョロと周囲を見渡している。

 (……? 姿を消している間は、周囲が見えないのか?)

 ならば、ここが勝機。
 天井から一気にポートの背後へ————足に力を入れて飛び立つ。
 しかし―――

 「かかったな。ばぁかめがっ!」

 ポートの目は俺を捕えていた————いや、目だけではない。
 仕込み杖の白刃も真っ直ぐに僕を捕えている。
 こいつ、最初から見えない振りをしていただけだったのか!

 死

 その一文字が脳裏を埋め尽くしていく。
 しかし、そうはならなかった。

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 甲高い叫び声。
 声の主は、この病院の看護師だった。おそらくはたまたま、偶然にも、通りかかっただけなのだろう。
 しかし、その叫び声によってポートの剣先は大きく乱れ、僕はギリギリで弾く事に成功する。
 それだけではない。予期せぬ目撃者の出現に『暗殺者アサシン』であるポートは、反射的に目撃者排除の優先を考えたのだろう。
 それが大きな油断となっている。
 僕の拳は、ポートの顔面にあっけなく到達。
 そのまま彼の顔面を―――

 打ち抜いた。


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