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ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

ニンバリという装置?

 錯乱している男―———ニンバリは本人に違いないだろう。
 彼の背後から朧げに見える魔力の放出は高濃度。
 人が発せられるものではない。
 だとしたら————

 (次の段階。チャンネルというわけか)

 魔族の復興。人間への憑依。そして、チャンネル。
 まだ、その全貌は掴めていないが……

 「その野望。ここで断たせて貰う」

 有無を言わせず、僕は駆ける。
 そして、ニンバリへ肉薄すると同時に剣を抜く。
 人が知覚できる速度すら超える剣撃は、ニンバリの肉体へ刻まれた。

 ————そのはずだった。

 僕は「なっ!」と驚きを隠せなかった。
 刀身から伝わる手ごたえは幻ではなく現実の物。
 しかし、ニンバリの肉体は健在だった。
 剣から伝わった感触では……
 その衣服を切り————皮膚を————腹筋を————背骨を切断して、背中を通り抜けたはず。
 水気に包まれた柔らかなハラワタを切断した感触すら残っている。
 ならばなぜ? ――――いや、疑問と驚きが浮かんだの一瞬だけ。
 戦いの最中に思考の檻へ囚われてはいけない。
 すで、そういうもの・・・・・・だと認識を変えて、剣を踊らせる。
 二太刀、三太刀と浴びせてもニンバリの肉体は傷程度のダメージすら受けた様子がない。
 それどころか、ニンバリ本人は攻撃を受けている認識があるように見えなかった。
 今も視線は宙を揺らぎ、立ち姿は幽鬼の如く揺らめいている。

 (……潮時か)

 僕は思考を撤退に切り替える。
 しかし、直ぐにそれは不可能だと気づいた。
 『気配察知スキル』が新たな敵影に反応を示したからだ。
 ソイツは――――

 「こんにちは」

 当たり前のように顔を見せ、当たり前のように近づき、そして―――
 当たり前のように手刀を放った。

 「——————ッッッ!?」

 避けれたは僥倖。息をつくのも一瞬、攻撃は続けられた。
 手足の末端部分、それも動脈を的確に狙われる。
 剣の間合いよりも内側に潜り込まれて、僕は防戦を余儀なくされる。
 けど――――

 「けれども、付き合いませんよ」

 僕が放ったのは掌底。
 スピード重視でノーモーションのソレは、乱入者の動きを一瞬だけ停止されるには有効だった。
 そのまま、前蹴りで相手を蹴り剥がす。
 これで間合いはできた。これは、剣の間合いだ。
 無酸素運動の代償か、互いに動きを止める。 一呼吸、二呼吸……その間、乱入者の正体を探る。
 乱入者は金髪の青年。他に得られる情報は…… 
 僕は脳の回転力を上げた。 

 (魔族? どこかで見たような……あっ!)

 僕は既視感の正体がわかった。
 彼は似ているのだ。
 攫われた―――否。魔族に魂を定着させられたコウ少年に。

 「いいや、違うね」
 「!?」

 僕の思考を読んだかの様に彼は言った。
 まるで宣言するように堂々と―———

 「似てるのではなく、本人なのだよ。容姿は変わっているけどね」
 「……何を、何を言っている?」
 「急成長をしてみたのさ。始まりの村でミミックの魔族が私を打破してみせたようにね」
 「……」

 彼の言葉が真実ならば、コウ少年本人という事になるが、それを鵜呑みにして言いのか?
 動揺をさそっているのならば……

 「なら、あのニンバリはどうなっている。僕には彼が錯乱しているようにしか見えない」

 できるだけ情報を引き出させる事に専念する。
 嘘なら嘘でも構わない。持ち戻った情報を精査さる人間は僕ではないし、情報解読能力は僕よりも優秀だろう。
 そんな僕の内心を知ってか、知らずか……「彼? もう言っちゃっても構わないかなぁ」とコウ少年は笑った。

 「彼―――ニンバリは装置になったのさ。ストックしていた魔族の人格を内部に取り込んで、世界に向けて発射するための装置さ」

 「装置だと?」と彼の言葉に乗った振りをする。
 僕は思考を停止させた。僕の目的は、ただ録音機のように彼の言葉を正確に録音して持ち帰る事にシフトしている。
 だから、今の僕は脱出の算段に集中している。

 「もう彼はニンバリであって、ニンバリではない。あえて名前を付けるならば機械仕掛けの————」

 彼の言葉はそれで止まった。
 僕が手首のスナップだけで飛ばした球体に気づいたからだ。
 すでに僕はコウに背を向けて走り出している。
 その直後――――球体は周囲に閃光をばら撒いた。 


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