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ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

酒場の乱闘

 夜は明けた。

 「熱いな」と僕は悪態をついた。

 昇った朝日はギラギラとした熱を放出する時間帯へ変化している。
 夜通し馬を走らせ着いた場所は————

 魔族ニンバリの足跡が色濃いく残る街。

 例え本人がこの街にいなくとも、事件の前にいたのは間違いない……はず。
 「まずは……」と僕、マイクロフトが目指した場所は酒場だ。
 この街には、ギルドの影響が少ない。だから、多くの冒険者はギルドへ登録せず、その日暮らし。
 そこら辺に出没するモンスターを狩る無秩序な街だ。
 だからこそ、僕は酒場を選んだ。
 昼間から、ならず者と冒険者の違いがわからぬような連中が入り浸っていると相場は決まっている。
 そして、そいつ等は、例外なくヤバい奴の情報を持っている。
 彼ら自身が真っ当ではない仕事に片足を突っ込んでいるからだ。
 そうして、僕は酒場の暖簾をくぐった。
 それと同時に視線を浴びる。僕の入店に気づいた全員が探るような視線を向ける。
 よそ者に対する警戒心の表れか?それとも……
 僕は無言で進み、カウンター席に腰を下ろした。

 「マスター、人を探しいている。名前は……」
 「うちは酒場だぜ、坊や」
 「むっ確かに。ならば、この地域産のきつい酒を所望させてもらうよ」

 一瞬、マスターが関心するような表情に変わった。
 それから「すぐ用意するよ」とグラスに大き目の氷を投げ込んだ。
 気が付けば、赤いボトルを手にしてる。なるほど、ボルドの絵柄からして『きつい酒』というオーダー通りだと想像がつく。

 「あいよ」とグラスに琥珀色の液体が満たされている。
 大き目の氷が溶けると共にバランスを崩し、グラスとぶつかっては涼しげな音を出している。
 僕はそれを手に取り―――そして、一口で飲み干した。
 「……ほう」とマスターが横目で感心したかのような声をあげた。
 その酒は確かにキツメだった。けど、今の僕に気付けとして相応しい。

 「実を言えば、飲まず食わずで1日、馬を走らせたばかりだ。マスター、酒以外で悪いが、食べ物はないか」

 僕の問いかけにマスターは「あるよ」と応じ、直ぐにメニューをこちらに投げ渡した。

 「……メニューがあるのか」

 酒場の雰囲気から、勝手にないものと決め込んでいた。意外だった。
 それがマスターの耳にも入ったらしく「やれやれ」と首を振っていた。
 僕はメニューを開いた。やはり肉食系の食べ物が多い。
 意外と思われるかもしれないが、馬に長時間乗り続けると激しく体力が消費させていく。
 一方で、内蔵へのダメージも気づかぬうちに蓄積されている。油を使った料理は避けたい。
 一瞬、馬刺しという選択肢が思い浮かぶが、外で待たせている愛馬の顔が浮かんで選択肢から削除する。
 結局、僕が選択した食べ物は、冷えたスープに小麦で出来た麺を絡めて食べる料理だった。

 「それで、おたくは人探しだっけ?誰探してるの?」
 「悪人だよ」

 その一言で酒場の空気が凍り付いた。それだけですぐに察しがつく。

 「なるほど。冒険者よりも、本当にならず者の性質が強いって事ですか」

 要するに、店内にいる全員が悪人って事だ。
 金属音。誰かが剣を抜いた。
 そして、それは1人だけではなかった。何人か?すでにわからない。
 小声で魔法詠唱を開始している者さえいる。
 なるほど、酒場を破壊して構わないって思ってるのか……

 「させないよ」

 まず1人、詠唱を行っている者の背後に立つ。
 ソイツは僕の姿を見失っていたらしい。「え?」と随分なマヌケな声を出した。
 僕は、微小の魔力を込めた手刀を叩き込んだ。
 延髄にダメージを受けた事すら認識できなかっただろう。ソイツは意識を失い倒れた。

 ざわ……
      ざわ……

 騒めきが起きる。何が起きたのか認識できないらしい。
 戦いの最中に、随分と悠長な連中だ。

 「何をお前ら、さえずいていやがる! 囲んでしまえ」

 大柄な男が叫んだ。途端に周囲の連中に変化が起こる。
 練度は低いが、一応は統率されてる。速度は遅いがジリジリと僕を囲むように移動してくる。
 囲みを破るなら簡単だ。破るだけなら……
 だが、できない。何人か魔法詠唱を終えた者がいるからだ。
 僕はテーブルを倒して、盾にする。

 衝撃と音。
 閃光が周囲に溢れる。
 僅かな遅れがあり爆発。

 「今だ! いけぇやぁ!」

 頭の男が発した号令。
 今、僕がいた場所は、モクモクと白煙が上がる。
 部下達(?)は、視界が効かないにも関わらず、お構いなしに飛び込んでくる。
 しかし、そこには僕はいない。それに僕は飛び上がり、天井へ張り付いた。 

 それも今————

 目標の落下地点は、頭の男。自由落下を開始する。
 空中で反転。体勢を直して―――
 着地。それと同時に頭の首筋に剣を突きつけた。



 

 

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