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ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

パンタ師匠

 「なんで……」とマリアは呟いた。

 聖騎士団。

 そのフレーズを聞いた直後、マリアの表情は強張り、顔色も青く変わっていく。

 「マリアさん、ギルドはあなたの事情も把握しています。そんなに心配なさらずとも聖騎士団が本拠地になる宗教都市『ハンチカ』から、こちらへ到着するまで3日必要です。それまで国境を越えるような遠征クエストか、あるいは長期間ダンジョンに潜るクエストを選択していただければ、ギルドとしましては全面的にバックアップするような体制を整えて、支援させていただきます」

 老エルフは深々と頭は下げた。
 しかし、マリアの様子は……

 「いえ、そういう話ではなくてですね……」

 言いよどむマリアに会議室にいた全員が不思議そうな表情を浮かべる。
 なぜ、マリアは不安げなのか?その理由はすぐに明らかになった。

 「その通りだマリアよ。我々は既に来た」

 バーンと勢いよく会議室の扉が開く。
 新たに入室してくる人物に全員が注目した。

 「聖騎士団団長兼武芸師範 パンターニモ。呼び出しに応じ、ただいま参った」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 パンターニモと名乗った人物は――― 
 聖騎士団団長兼武芸師範を名乗った人物は―――
 小柄な老人だった。
 禿げ上がった頭部。腰辺りまで伸びた白い髭。白い簡素は服。
 大きな杖に体を預けて、立っている姿は聖騎士というよりも仙人のイメージに近い。

 「久しいな、マリアや」

 「はい、パンタ師匠」とマリアは直立不動。いつもは天真爛漫なマリアに緊張が見てとれる。
 その緊張感は周囲に伝播していった。
 マリアは聖騎士団から脱走した。その時、聖騎士団が秘匿していた情報を奪い去った。
 マリアのした事は……おそらく大罪。
 聖騎士団の長であるパンターニモ団長が、マリアに対して、どう対処するのか?
 もしもの時は俺も……
 そう決心した直後、パンターニモ団長はマリアに向けて杖を伸ばす。

 (攻撃魔法、この場所で?弁解の余地もなしか!)

 突然の臨戦態勢。誰かが動けば戦闘が始まる。
 しかし―――

 「では問題じゃ、ハンチカから3日必要のはずが、どうして我々がここにいるのか?」

 !?

 ク、クイズ? 今、クイズを出題したのか?

 俺だけではなく、その場にいた全員―――パンターニモ団長をマリアを除く全員が不意打ちを受けたような顔つきになった。

 「はい!絶対となる前提条件は3日という日時のみです。そこから導かれる答えは、3日前には既に魔族の情報を入手。即座に出発していたという事です」
 「うむ、正解じゃ。思考力は衰えておらぬようだな」

 次の瞬間にパンターニモ団長は破顔一笑。純粋にマリアを褒めていた。
 一体、どういう事だ?
 マリアも同じ疑問を浮かべていたようだ。彼女は「あの…その…」と躊躇を見せた後に

 「騎士団を抜け出した私に、怒ってないの?」

 彼女は、そう訊ねた。対してパンターニモ団長の答えは―――

 「たわけ!聖騎士団は主の守護者じゃ。お前のおこないは神への叛逆に等しい」

 言い捨てるような口調。思わずマリアは目を背けた。
 しかし、パンターニモ団長は、こう続けた。

 「だが……同時に我々は家族でもある。家族が家族を断罪する法なぞ皆無よ。神をお許しになるであろう」
 「え?パンタ師匠?」
 「現に、お前の職業は『聖騎士』のままじゃろうが?」
 「……あっ、私はまだ……」
 「カッカッカッ…どうじゃ?もう暫く家出は続けるつもりかな?非行娘め」

  もうパンターニモ団長は好々爺にしか見えなくなっていた。

 「……さて、再開を喜ぶのは後にして、本題にはいるとしようかな」

 「よっこらせ」と腰を掛けたパンターニモ団長は眼光を鋭く光らせた。

 「魔族を狩る。これこそが、我ら聖騎士団の本懐よ」

 その威圧感からか……誰も言えなかった。
 今、「よっこらせ」と腰を掛けたのは俺の体だという事を……


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 「カッカッカッ…これは失礼。椅子かと思っていたら、まさか『転生者』だったとは……愉快愉快」

 会議は終わった。マイクロフトの帰還を待ち、聖騎士団へ詳細な情報の引き継ぎが終了次第、魔族狩りを行う運びとなった。
 ギルドの用件は終わり、パンターニモ団長と一緒に外に出る。すると―――
 「みんなぁ」とマリア。
 外には、統一された団体が、ずらりと並んでいた。
 一目見てわかる。彼らこそが聖騎士団なのだ。


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