ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

回想は現在に収拾された

 「さて、我々は引き継ぎが終了と同時に魔族を追う。お主等、2人はどうする?」
 「どうする?……とは?」

 俺の疑問にパンターニモ団長は「カッカッカッ」と笑った。

 「決まっておるじゃろ?マリアは一時的に復帰して、ミミック殿は一時的に入団して、一緒に魔族を追うか?と聞いている」

 「う~ん、私はミッくんの判断に任せるかな?」とマリア。
 それに合わせて、聖騎士団の皆さんは俺に視線を向ける。
 魔物モンスターの俺を見ても動揺は見て取れない。
 統率の練度が高い……と言うよりも魔物の『転生者』に慣れているのか? 
 たしか、宗教都市『ハンカチ』……じゃないや。『ハンチカ』だったけ?
 もしかしたら、宗教都市という場所的に、『転生者』が多く集まって慣れているのか?
 この世界の宗教は『異世界の知識』から入ってくる情報がによると……抽象的でよくわからない。

 「それでどうするのじゃ?ミッくんとやら、お主も我が聖騎士団に入団するか?」

 俺は一瞬、悩む。
 思い出してみれば、シーラ女王の軍団レギオンの勧誘も受けている。
 しかし、それも一度だけであり、マイクロフトの接触以来、勧誘はない。
 さて……おれは―――

 シーラ女王のもとへ?
 パンターニモ団長のもとへ?

 どちらを選択する?


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「ようこそ、我らが聖騎士団へ」

 俺は聖騎士団を選択した。
 理由はシンプルだ。あくまで一時的な入団という条件だからだ。
 これで、シーラ女王やマイクロフトにも角が立たない……はず。
 俺とマリアは、街はずれに作られた聖騎士団のベースキャンプ地に連れてこられた。
 聖騎士団の人数は50人くらいか?全員がマリアと同レベルの手練れと考えれば、凄い戦闘集団になるだろう。
 団員はマリアに対して家族のように迎えられた。
 すぐに団員に溶け込み、気がつけば俺は彼女の姿を見失った。
 いや、今なおマリアは団員なのだから、迎えられたは不適切か。 
 迎い入れられたのは俺だ。団員達は俺に対しても……

 「よう、肉食え。肉を」「いやいや、酒だろう。兄弟の契り酒だ、飲め飲め!」

 ……あれ?なんだか聖騎士団というよりも荒くれ冒険者みたいだぞ。
 宗教的な厳しい規律とかないのか?それどころか魔物の俺にも、普通の人間として接してくれる。

 「……家族か。俺にもいたのだろうか?」

 転生前の記憶は、今も不安定だ。転生者としての実感はない。
 だから、こそ―――俺は―――今―――

 「ミミック殿、飲んで食っているか?」

 不意打ち気味に話しかけられた。
 「えっ?」と俺は相手を見る。すると、そこには―――

 「パンターニモ団長」
 「いやいや、お主も団員の仲間じゃ。ワシは団長と同時に武芸師範でもある。マリアを見習ってパンタ師匠とでも呼びなさい」

 俺は一瞬、「ん?」と言葉に詰まった。
 それはつまり……

 「そう、お主が察している通り、明日からは師範としてお主を鍛え上げる」

 「……鍛え上げる?」と俺はパンターニモ団ち……いや、パンタ師匠の言葉を繰り返した。

 「まずは、お主の実力を見極めるために組手からじゃ、この面子で一番未熟な者から戦って貰う」

 俺は周囲に見渡した。視線を感じたのだ。
 視線の主はすぐにわかる。なぜなら、その場にいた全員が俺を見ていたからだ。
 全員が同時にニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。

 「開始は夜が明けてすぐに開始よ!」

 「「「おー」」」

 俺を除いた全員の声が重複した。

 「いや、マリアはダメじゃ。聖騎士として本来の『力』を取り戻せねばなるまい」

 「えー」といつの間にか近場にいたマリアは不満げな抗議の声を上げた。
 いや、お前も俺と戦いたかったのかよ……
 マリアの本来の『力』とやらに引っかかるものはあったが、明日の事を考えれば、そこに深く切り込む余裕がなかった。
 まぁ、組手が終わったら聞けばいいだろう。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 よし、回想終了。俺は、第一戦で敗北した。
 一番下であるクノイチであるカスミに『忍法空車落とし』だったけ?その技を受け、地面に叩き付けられる直前にパンタ師匠に組手を止められたのだった。
 そのあと、カスミは聖騎士団のベースキャンプへ帰って行った。
 逆に言えば、俺は居残り練習だ。

 「ミミック殿よ、カスミをどう思った」
 「……強い。相手にしてもらえない…俺が遊ばれるほどに強かった」

 俺は正直に言った。戦いにすらならなかった。
 横で誇らしく薄い胸を張るカスミ。その姿に屈辱を感じるほどの余裕も残っていない。
 要するにボコボコに凹まされたのだった。
 あれは戦いなんて生易しいものではなく……まるで狩り。
 カスミが狩人で、俺は―――狩られる側だった。
 森に浸透していくように気配が希薄になっていくカスミ。
 俺の気配遮断スキルですら見破り、一気に距離を詰めてきた。

 「彼女には俺のスキルが通じなかったように思えたが?」 
 「なるほど……初手合わせで感じ取るとは見込むがあるな。では聞こうミミック殿。

 スキルとは何ぞな?」

 

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