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ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

叫び 第一部完


 翌日―――

 ギルドには地下があった。
 広い地下室……いや、会議室と言ったほうが正しい。
 おそらく、一般冒険者は足を踏み入れる事ことはない場所だ。
 ここでギルドの方針。今後の行き末が決定される場所。
 ある意味では冒険者に取って不可侵の聖域なのかもしれない。
 不可侵の聖域。しかし、それは一般冒険者にとっての話だ。

 会議室には、複数人のギルド職員が壁際に立っている。
 例外な司会役の老エルフのみ。
 本来、ここで会議の中心となるのはギルド職員たち。
 彼らが席を譲った者達は―――冒険者だ。 
 緊急時に招集がかかる3人の冒険者。無論、一般冒険者ではない。
 周辺に影響力の強い特別な冒険者たち。

 第1席―――
 岩のような男だった。短く刈り込まれた頭髪。隆起した筋肉。
 服装も酷くシンプルだった。
 マントとパンツ。腰に帯びた剣のみ……
 あとは靴ぐらいだろうか? ほぼ裸の男は寡黙で席に着いてから一言も発してない。 
 男の名前はフルームス。
 この国、最大規模の戦闘軍団バトルレギオン。その頭領マスターだ。


 第2席―――
 こちらは服を着ている。
 しかし、パーティに出席するつもりなのか?そう思わせるような服装規定ドレスコード
 その腰には剣を帯びていない。いや、武器すら持っていないのかもしれない。
 少なくとも、そう思わせるような男だった。
 男の名前はサガント。
 彼の軍団レギオンは膨大だ。各国の経済界や王室に根を張らせ、細かな商業と貿易で荒稼ぎをしている……らしい。

 第3席―――
 空席だった。
 遅れているらしい。

 そして、この場に俺とマリアがいた。
 俺達は、魔族憑依事件の目撃者として召喚されたのだ。

 時たま、第1席フルームスと第2席カガントが、俺たちを観察するような視線を飛ばしてくる。
 視線だけで逃げ出したくなる威圧感。
 会議は第3席の到着と共に始まる予定らしい。早く来てほしいのだが……
 そう思っていると―――勢いよく扉が開かれた。

 「はっはっ……どうやら、私が最後のようだな。もしかすると遅刻してしまったかな?」

 笑いながら登場した人物。
 第3席―――

 シーラ女王だった。

 
 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 ―――昨日―――

 「私が犯人だ」

 気配も脈略もなく現れた自称犯人。
 そのまま、不気味な笑みを浮かべたかと思うと、コウ少年が埋もれている武器の山に指を向ける。

 「どーん」

 それだけだった。
 彼がそれだけ言うと、武器の山が左右に割れた。
 そして―――

 「いやぁ、助かりましたよ」とコウ少年が浮き上がってきた。

 「念力サイコキネシス!それも質量も無関係って!?」

 マリアは叫び声に似た声をあげる。それは俺も同意見だった。
 怪物。その二文字が思い浮かぶ。
 見た目は、ただの中年男性に見えて、保持している戦闘能力は―――
 俺とマリアの二人掛かりでも抑えきれるレベルじゃない。

 『どうやってコウ少年のベットの下に魔法陣を書いたのか?』

 そんな事を考えていたのが馬鹿らしくなってきた。
 彼は、堂々と鍵のかかった窓や家のドアを開けて入ってきたのだ。
 その念力を使って……

 マリアを目がある。
 互いに撤退の意志がすぐに伝わる。

 「あれれ?逃げるんですか?2対2で面白くなってきた所じゃないですか?」

 そう言ったのはコウ少年だった。
 後から現れた自称犯人の男。おそらく、彼も魔族だろう。
 2対2どころか……1対2でも勝てる気がしない。
 しかし、それを否定したのは自称犯人の男だ。

 「止めろ、コウ。貴方の暴走で計画がバレたのだ。ただの行方不明として処理されれば、不要な手間は省けたものを……」
 「……」

 男は、コウ少年が黙ったのを確認すると、一度言葉を切り、俺たちに顔を向けた。

 「始めまして冒険者諸君。私の名前はニンバリ。今日は手打ちの申し出に来ました」

 ニンバリと名乗った男は慇懃無礼な口調に変わった。

 「手打ち?」と俺は疑問を言葉に出した。

 「新たに目覚めた同胞を失う可能性もあります。それに目的は果たしました」
 「目的……とはなんだ?」
 「そんな肩を張るような目的ではありませんよ。ただ、魂の定着前に肉親は障害になるのでね……」
 「なるほど……2つの魂が融合する前は不安定だから……コウの母親を攫うのか?」
 「その通りです。理解が早い。さすが……転生者ですね。魂の定着は経験済みですか?」
 「―――ッ!?」

 一緒にするな!
 俺に、そう怒鳴る事ができなかった。

 だが―――

 「一緒にしないで!」

 俺の代わりにマリアが叫んでくれた。
 それだけで救われる気がした。

 

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