ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

禍々しい魔法陣

 コウ少年の部屋。
 出入り口は窓とドアの2つのみ。
 部外者が依頼者である母親に気づかれずに侵入した。鍵のかかった窓、あるいは扉から堂々とした侵入だ。
 そして、コウ少年を連れ出し、窓、あるいは扉の鍵を閉めて帰った。わざわざ……ね。

 「そう仮定しても、無茶苦茶だ。急いで現場から離れたいはずの犯人が、鍵を閉めてから逃走する必要性がない」

 普通に考えたら母親の勘違い。息子がいなくなった依頼人は気が動転して、鍵がかかっていたと勘違いした。
 あるいは―――

 「母親が犯人か……」

 俺は呟いた。

 「そう考えるのは早い過ぎない?」とマリア。

 「むっ、確かにそうだが……」

 俺はマリアの背中から飛び降りる。
 そのまま部屋の真ん中を陣取り、瞳を閉じると意識を集中させる。

 (もし、犯人がいるならどこから侵入した?)

 俺は「せいっやぁ!」と裂帛の気合。
 体内に収納している108つの触手。その全てを同時に体外へ放出させる。
 空気の流れを感じ、部屋の素材を調べ、隠し通路や特別な仕掛けの有無を確認する。
 あるいは、皆が見落としている痕跡……
 俺は期待してなかった。少年が行方不明になって5日。
 5日という時間は有効的な情報、決定的な証拠能力は低下……あるいは消滅させるには十分な時間だからだ。
 だが―――

 「……魔力が残っている」

 少年が寝ていたベットから魔力の残り香を感じる。

 「何者かがベットで魔力を使用した。それから……」

 ほぼ、四散している魔力の流れ。感知不能だが……予想はできる。

 「少なくとも魔力を使った者はベットからドアに向かっている。いや、待てよ……何かを見つけた!」

 室内に残る異物の場所はベットの下。
 俺は触手でベットを持ち上げる。すると、そこには―――

 「信じられない」と俺。
 「これ……一体、誰が書いたんだろ?」とマリア。

 そこに書かれていたモノ……
 それは魔法陣だった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・・


 禍々しい魔法陣だ。邪悪の2文字が似合う。
 発動して5日が経過していると推測されるのに、今だに黒い瘴気のようなモノが見える。 

 「マズいなぁ。コイツは念入りな仕掛けだ。使用された後に調べられないように呪いを仕込んでいやがる」

 俺は魔法陣に近づく事すら躊躇した。
 しかし、マリアは逆に魔法陣に向かって進む。

 「お、おい!」
 「大丈夫だよ。私のジョブには呪いに耐久があるから」
 「だが……それは……」

 俺は言葉を飲み込んだ。
 確かにマリアの特殊職業ユニークジョブは『聖騎士』と『巫女』。
 呪いに強いのが職業ではあるが、マリアはその特徴を『スキル』まで昇華できていない。
 呪いの完全無効化できるほどの力はないはず……

 「んっ!」

 魔法陣に触れるとマリアの口から苦痛の声。

 「…っ!こ、これくらい…これくらいなら!私でもっ!」

 マリアに抵抗するように黒い瘴気が倍増していく。
 けれども、魔法使用後の魔法陣。その抵抗はすぐに、マリアの手によって分解、消滅させられていった。

 「…はぁ…はぁ…」と肩で息をするマリア。
 力を使い果たしたのか?そのまま彼女は座り込んだ。
 俺はマリアが倒れないように肩を抱きしめた。

 「無茶し過ぎだ」
 「今日は特別優しいみたいだね、ミッくん」

 疲れ果て、それでも精いっぱいの笑みを返すマリアには、俺は「馬鹿野郎……」と笑みを返す。
 そのまま、急かすマリアを強引に休憩させてた。

 休憩後、マリアは魔法陣について説明し始めた。




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