話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

まどろみの哲学

 
 マイクロフトと別れた俺たちはギルドで、子鬼の角を提出。
 依頼達成の賃金を受け取り、帰宅の途につく。
 そして、宿屋―――俺はマリアに言う。

 「正直に言うと、俺に目的はない」
 「え?」
 「転生者として覚醒したのは、2日前だ。前世の記憶もないし、人間としての自我も安定していない」

 俺の独白じみたセリフにマリアは、目を丸くしながらも「うん」と頷く。

 「俺は何かしたいとか、目指したいものとか、何て言うのか……目標?目的意識が希薄だ」
 「うん」
 「だから、その……マリアにしたい事があれば、俺はマリアについていく……」
 「……」

 マリアは沈黙した。 俺はマリアの顔をチラリと盗み見る。
 先まで目を丸くして驚いていたマリアの表情は、さらに瞳を見開いて、これ以上にないほどの驚きを表現していた。

 「ど、どうした?マリア?」
 「……え?いや、だってミッくんが急にプロポーズしてくるなんて、想像にしていなかったから……」
 「はぁ?プロポーズって何の事だ?」
 「え!?今言ったよね?『俺はマリアについていく……』って、それってつまり……プロポーズだよね?」
 「だぁ!違う違う!マイクロフトの勧誘の話だ」

 「あー、そっか。そうだよね。……少し、残念」とマリアは呟くように言った。

 「私もね……目的はないんだ」

 俺は驚いた。マリアの目的は―――復讐だと思っていた。
 そのために規律の厳しい聖騎士団に入り、情報収拾能力と生きす術を身につけて脱走して冒険者になった。俺はそう思っていたからだ。

 「私もね。子供の頃は、『絶対に復讐してやる!?』なんて思って無茶もしていたんだ。でも、段々と復讐心も記憶と共に薄れていって……今じゃ『どうして私たちを襲ったの?』って疑問だけが残ってるだけになっちゃったの……」

 「……マリア」と俺は言いよどむ。

 「だから、もう私に取って過去の出来事……過去の疑問は冒険者として生きる『ついで』でしかないの……だから、だからね―――

 私もミッくんについていくね」

 彼女は笑みを浮かべた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 夜はふけていく。
 俺とマリアは考え続けなければいけないのかもしれない。
 けれども、それと同じくらい睡眠も大切だ。
 いや、思考を続けるよりも日常生活を維持する方が、多くの人は主張するかもしれない。
 さて―――

 しかし、俺は眠れずに思考を続けていた。

 「俺にも目標や目的ってものがあって転生したのだろうか?」

 俺の持論では、転生したと言っても転生前の人間と転生後の人間を同一人物だと考えていない。
 何らかの原因で別の人間が記憶が継続しているだけに過ぎない。
 なぜなら、脳そのものが別人なのだから……。
 だから、転生後では、転生前と比べて活動的になる傾向が多々あるのではないか?
 俺はそう考えている。 しかし、別の考えもある。

 それは『死』のエネルギーだ。

 『死』には爆発的なエネルギーが備わっている。
 例えば、平凡で穏やかな男性が妻の死をきっかけに復讐鬼に変貌を遂げる。
 フィクションの世界なら、ありふれた設定だ。 
 しかし、ありふれた設定というのは万人を納得させるほどの説得力が備わっている。
 何十年と年月を培って育ったはずの男の人格が1夜にして豹変しても万人が納得するほどの説得力だ。

 ならば―――
 その『死』のエネルギーは死者である本人には、どのような影響を与えるのだろうか?

 もしも、前世の俺が強い復讐心を抱いて死んでいたら?

 その記憶が戻った時、今の俺は消滅して『転生者』として新たなる俺が誕生するのだろうか?

 それは―――

 少しだけ怖いと思った。

 それと―――

「ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く