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ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

マイクロフトという男

 
 「魔物モンスターの『転生冒険者』ですか……珍しい」

 マイクロフトの視線は俺を射抜く。

 「……なんの用だ?」

 俺は前に出る。

 「そうですね……ここは一手ご指南をお願いします」

 言うが早いか、マイクロフトは剣を抜く。 
 ダンジョンに溢れる魔力の影響か?ビシビシと空気が音を鳴らす。高濃度の殺気が質量を帯び、空気を弾く音だ。

 「マリア……少し、下がっていろ」

 マリアは「ミッくん……」と不安げに俺の名前を読んだ。
 やがて、決心したのか俺とマイクロフトから距離を取った。

 (……それでいい。距離を取ってくれれば、マリアに害は及ばない!)

 「毒触手流拳法 聖散果林の拳」

 先手必勝、先ほど子鬼に使った技を選択。
  俺はマイクロフトに向けて猛毒を吹きかける。
 しかし―――

 「避けた……だと!!」

 マイクロフトは跳躍。
 そして、着地。―――どこに? ダンジョンの天井に……だ。
 だが、マイクロフトの体は、重力に従い落下する事はなかった。
 二本足が天井に張り付いているのか? 

 (既存の魔法やスキルじゃない。奴のオリジナルか?シンプルに魔力を足に流して粘着力に転換させているように見えるが……だが、甘い!)

 俺の散布した毒は空気よりも軽い。天井は安全地帯ではない。
 俺は天井のマイクロフトに対して触手で物理攻撃を繰り返す。
 それをマイクロフトは避け続ける。
 構わない。全ては毒がマイクロフトのいる天井に届くまでの時間稼ぎ。
 それは間もな―――

 「なにっ!?」

 マイクロフトは剣を向ける。自身に向かって来る不可視のはず毒に向けてだ。
 そして、一振り。ただ、それだけだった。
 その剛剣は一振りで俺の毒を四散させてみせたのだ。
 マイクロフトは天井から降り、地面へ着地した。
 そのまま、コツコツと足音を刻みながら歩いていく。
 マイクロフトは無防備。その顔にはニヤリとした笑みを浮かべた。

 (挑発?いいだろう!乗ってやるよ) 

 俺もマイクロフトと同質の笑みを浮かべて見せた。
 マイクロフトは俺の攻撃射程圏内に入っている。
 だが、我慢。我慢我慢我慢我慢……
 マイクロフトは剣の間合いに到達した。
 互いにギリギリの間合い。
 限界値の臨界点。そして―――
 それは爆発した。

 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……!?」

 俺は全ての触手で連続でマイクロフトに攻撃を仕掛ける。
 対するマイクロフトは―――

 自身の剣で受ける、反らす、弾く、そして捌く捌く捌く……

 俺の触手が精密な動きも可能な理由は、僅かな神経が通っているからだ。
 だから、切られると微妙に痛い。しかし、そんな我儘を言っている場合じゃない。
 それに―――

 ドーパミン?アドレナリン?エンドルフィン?

 俺の体に、脳内麻薬が備わっているのかわからない。
 しかし、それに類するものは存在しているらしい。
 最高にハイって状態に精神が昂ぶっていく。
 それが俺の触手にも宿り、攻撃の回転力が上がっていく。

 「まだまだッ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラ……」

 放たれた触手のラッシュ。マイクロフトの捌き。
 まるでチキンレースだった。
 ルールは単純。引いたら負け。

 終りの見えない攻防。それが永遠に続くのだと信じていた。
 だが、終りはあっけなく訪れる。
 マイクロフトが持ち場を破棄したのだ。
 不意にマイクロフトが後方へ飛び触手を回避する。

 「お前ッ!芋を引きやがったな!」

 俺は感情を制御できずに怒鳴った。
 まだマイクロフトの顔には笑みが浮かんでいる。
 十分に余裕を残したうえで、攻防を破棄したのだ。

 「僕も貴方と同じで楽しくなってきたのですよ。でも、それは本来の目的から離れてしまいますよね?」
 「本来の目的……とはなんだ?」
 「最初に言った通りです。一手ご指南を……と言いましたよね?」 

 マイクロフトは腰のベルトから剣を鞘ごと抜いた。
 左手で鞘を掴み、体を捻る。右手は柄に添える。
 空気が変わる。戦いの舞台ステージが変わったのだ。
 先ほどまでの戦いの中に芽生えていた娯楽感は消滅した。
 マイクロフトの顔から笑みも消え失せている。

 (……この世界での抜刀術か!)

 『異世界の知識』により高速で情報分析が行われていく。
 連続で流れてくる情報が解析されていき……

 (―――今ッッッ!?)

 マイクロフトの姿が消えた―――否!
 目前から消えて見える程の超スピード。
 俺は、触手を放つ間すらなく―――

 コツ

 俺の体にマイクロフトの剣が触れた音がした。

 「ぐっ……速いッッ!」

 体が……脳が……一瞬で敗北を認めされた。
 笑みが消えたマイクロフトは―――それほどまでに強かった。


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