話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

マリアの交渉術


 「両方じゃダメですか」

 マリアはそう言った。 

 「「え?」」

 俺とルナティックさんは声をそろえた。2人共、マリアの言葉の意味がわからなかったのだ。

 「ミッくんは転生冒険者として登録、私も魔獣使いの登録をするって言うのは……」

 ダメですか?とマリアは言った。

 「ダメではありませんが……ありませんが……」

 ルナティックさんは頭を抱えながらも、辛うじて返事を返す。
 ギルドとしては、本人の意志を優先する決まりでもあるのだろう。

 「職業選択の自由ってやつか」 

 俺の呟きにルナティックさんは「しかし、それはそれ。これはこれです」と少しだけ語気を荒げた。
 ルナティックさんのいう事はもっともだ。
 マリアが3つの職業を有する。それはギルドに取って不利益を被る事になる。
 ギルドだってボランティア団体ではない。国営なのか、民営なのかは知らないが……
 冒険者のサポートをする事で利益を得ている団体なのだ。

 特殊職業ユニークジョブ

 それを2つ有しているマリアはギルドにとって有益だ。
 人材としても有益であり、研究対象としても有益という意味だ。

 『極度に成長した冒険者は、時として国すら動かしてみせる』

 有名な冒険者になれば、個人で国と対等に交渉する事もある。
 そういう意味の格言があるらしい。それが人材として有益という意味。

 そして、研究対象とは……言葉通りだ。
 特殊職業ユニークジョブを含めた強力な能力。
 それらは十分に研究対象に成り得る。
 もしも、それらに能力者に共通性を見つけ出したら?
 それがきっかけに―――

 『自分が望んだ強力な能力を自由に手に入れる』

 それを現実にするのがギルドの目的でもある。
 つまり、冒険者の能力を技術転用して莫大な利益を生む事もギルドという団体の一面なのだ。

 以上、ユニークスキル『異世界の知識』より―――

 しかし、それはマリアだってわかっているはず……

 「どうして、急に両方なんて言い始めた?」

 俺はストレートに聞いてみる。

 「だって……私が猛獣使いの職業を身につけると、私のテイミングモンスターであるミッくんにも恩賞が入るでしょ?」
 「むっ、それは……」

 確かマリアの言う通りだ。 猛獣使いという職業から得られるスキルには、テイミングモンスターへの強化バフ効果があるものが多い。……いや、むしろそれがメインと言ってもいい。
 魔獣使いを一行で説明するならば―――

 自身を強化するよりも相棒である魔物モンスターを強化する職業

 という事になる。

 「それにね」とマリアはルナティックさんを見ながら話を続ける。

 「ミッくんは『転生冒険者』として登録するなら、ギルドはどうします?」
 「……どうします?とは?」
 「特殊職業を2つ持っている私と魔物モンスターである『転生冒険者』のミッくん。ギルドはどちらを重視しますか?」
 「ギルドとしましては、どちらも重要な人材……冒険者です。どちらを重視すると天秤にかける事ですらあり得ません」
 「だから、両方なんですよ」

 「?」とルナティックさんは、マリアの言葉に疑問を浮かべる。

 「ギルドに取って、私のミッくんの価値が同じくらいなら……2人でチーム組んで私が支援しながら成長した方が効率的だと思いませんか?」
 「っ!?」

 ルナテックさんは言葉を詰まらせる。対してマリアは追い打ちをかける。
 優しげな声で―――

 「最初に言った通り、私は猛獣使いを極めるつもりはありません。ただ、ミッくんを支援する最低限のスキルを身につけるだけで十分なんですよ」

 頼むような口調でありながら、それは交渉の場では攻撃でもあった。
 もうルナティックさんに反撃の手は残ってないのだろう。
 暫く沈黙の後―――

 「……これ以上は私よりも上の判断する事です。でも……」

 ルナテックさんは立ち上がったかと思うと机の引き出しから紙を取り出した。
 その紙には『職業登録書』と書かれていた。

 「ここまでギルド職員であるルナティックの発言。ここからは……」

 最初に会った時と同様、気怠そうな表情にかわり、机に伏せた。

 「ルナテックさん、個人の意見だよ」

 伏せた状態のまま、「ほら…」と紙を差し出してくる。
 「いいの?」と確認するマリアに―――

 「いいの。いいのマリアちゃんには敵わないわ。それに最近のギルドは金儲けに走りすぎ。冒険心を遮るのはギルドの初心から外れてるっての!」

 冒険者は自由であるべきです。ルナティックさんは、そう続けた。
 マリアは職業登録書に必要事項を記入して「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。
 俺も「ありがとうございます」とマリアに続けた。

 「はい、お疲れさま。 知ってると思うけど、ギルドに職業登録しただけじゃ猛獣使いのスキルは身につかないから、技能講習スキルアップを受けるのよ。ミミックさんは『転生冒険者』に必要な資料は後日、マリアちゃんの家に送るから、記入後に持ってきてね」

 最後にルナテックさんは「ばいばい」と付け加えた。

 こうして1階へ階段を降りる途中、俺はある事に気がつく。

 (あれ?転生冒険者の登録で人権が与えられるなら、俺が猛獣使いのマリアのテイミングモンスターってのは、問題があるような……)

 「……まぁ、いいか」

 こうして、ギルド1階に戻ると―――

 騒めきと視線。

 最初にギルドに入ってきた時に浴びた冒険者たちの敵意。
 それが別の色に変化している。
 その色には好奇心と期待が秘められている。
 一体、この短時間で何が起きたというのか?

 俺は、その理由をすぐに知る事になる
 

「ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く