-フォックス×フレンド-

ノベルバユーザー189431

-フォックス×フレンド-第五話「夏休み狐.Ⅰ」

「〝夏に輝く太陽!海ではお約束のポロリ!ホラーで期待される吊り橋効果!〟をモットーに限られたハイスクールライフを存分に楽しみたいと思うのですよ!この報道部部長著作権キラー、東御メイナ!張り切っていきますよーっ!!」

 冒頭からこのような頭の悪いセリフを聞かせてしまって、とても申し訳ないと思っている。
この風息燕が、頭の悪い東御先輩の代わって謝罪させて頂きます。申し訳なか。

どうしてこのようなことになったのか。
 時は四時間ほど前に遡る―――

それは俺と狐音が、校内中庭にて昼食を摂っていたときであった。
 「あ、その果物みたいなもの。美味しそうだな」
 「……食べてみる?」
 「いいのか?」
 「……じゃあ、鮭と交換、しよ?」
 「おう、いいぜ。そんじゃ……(パクッ)甘っ!」
 至って平和な、雲ひとつない快晴の昼の一時。
そんな中、突如嵐が吹いた。
 「あーっ!いたいた、燕くん狐音さん!丁度探していたところなんですよーっ」
 東御メイナという、人型歩く自我を持った嵐が。
 「嵐なんて失礼な。私はいつでもそよそよ春風ですよ?」
 「何故俺の周りには地の文を踏むやつばかりいるのだ……」
そこは空気を読んでくださいよ。と歩く嵐こと東御先輩に文句を垂らした。
 「それはともかく、お二人さんは夏休みをどう過ごすか決まってますか?」
その質問に、俺の身体に電撃が走った。
 「しまった……もうすぐ夏休みか!」
 「え、素で忘れてたんですか?」
 「……気がつかなかった」
 「狐音さんも?!」
そういえばHRホームルームでそんなことをいってたような気がする。もっとも、俺は絶賛爆睡中だったのだが。
 「狐音は知らなかったのか?」
 「……本読んでて、耳に入らなかった」
 「あ、分かるわそれ」
 本に集中すると、周りの音を気にしなくなるよね。
 「お二人さん……念のため言っておきますが、夏休みは明後日からですよ?」
 「マジか。じゃあ教室に置いてる荷物を持って帰らなきゃな」
 「……たくさんある。2日じゃ大変」
 「そーじゃなくてえ!ですよ!」
 急に割り込んできて、変な敬語になった東御先輩が、俺と狐音の頭をペシペシと叩く。何ゆえ叩かれるのだ……?
 「じゃあ何なんですか?」
 「夏休みをどう楽しく過ごすか、考えてるんですかーっ!」
あ、なるほど。そういうことか。と俺は理解した。
 「つまり、東御先輩には夏休みを一緒に過ごす相手がいないから、俺たちに構ってきたと」
 「そうなんですよ……って違います!ちゃんと友達100人いますから!」
 「……東御メイナ。私は友達だから〝ぼっち〟ではない」
 「お気持ちは嬉しいですけど、狐音さんまで私のことをそんな目で見てたんですか?!」
 東御先輩は今にも泣き出しそうである。前々から思っていたが、東御先輩ほど弄りがいのある人はいないと思う。
 「冗談はさておき」
 「あ……冗談だったんですか……」
 「俺は夏休みの予定は特にないですよ。狐音は?」
 「……私も、特にはない」
 夏休みの課題は7月中にやっておくことがセオリーだ。家庭にもよるが、旅行にいったりキャンプしたりなど約一ヶ月の期間を満喫するだろう。
しかし、俺(と狐音)はやることがナッシング。
 「で、それがどうしたんです?」
 「それです、それが本題です!」
 無駄にテンションの高い東御先輩は、ここで溜めを取って言う。
 「もし予定が無いのでしたら、今日の放課後に報道部室に来てもらえますか?」
 「え、どうして……ですか?」
 「……報道部室って、どこ?」
 「部室は第三美術準備室です。放課後は報道部の貸し切りなので。内容はその時にお話ししますよ。」
と、ここで東御先輩が顔を近付けて、声をひそめて言う。
 「……絶対に来てくださいね?でないと……燕くんと狐音さんの2ショット写真を校内にばらまきますよ?」
 「著作権侵害で訴えられても文句は言えませんよね」
 「とにかく、絶対来てくださいね!」
それだけ言うと、さっさと退散していった。

そして、今に至るのである。

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