-フォックス×フレンド-

ノベルバユーザー189431

フォックス×フレンド 第五話「夏休み狐.Ⅱ」



放課後、俺と狐音は第三美術準備室にて、東御先輩による〝青春全開ッ!高校の夏休みを面白おかしく過ごそう〟の企画を聞かされていた。
 隣には眠たそうに目をこすっている狐音と、面白そうという顔で東御先輩の話を聞き入っている流弥がいる。
 「やっぱり夏といったら海ですよね!この計画だけは絶対確実に実行しますよ?私は勿論、燕くん狐音さん流弥さん玖美ちゃん莉魅ちゃんの6人で行きます。もし誰か誘いたかったら言ってくださいね?その日から、海近くの旅館にお泊まりもするつもりですから、皆さんの都合に合わせて行くつもりです!」
いつも以上に気合いの入っている東御先輩を誰か止められる人はいないのか。俺は心のなかでため息をついた。
この時点で狐音はすぅすぅと寝息を立てて寝ているし、流弥は含みのある笑みを浮かべていた。嫌な予感しかしないのだが……。
 「それはつまり、みんなで合宿ってことかい?メイナちゃん」
いつの間にか仲良くなったのか、流弥は先輩である東御メイナのことをメイナちゃんと呼ぶ。
 「そうです!この報道部にも活気がやってきたので、その勢いで合宿とかやっちゃいましょう!」
そんな自由すぎる東御先輩の話に耐えかねて、俺は割って入った。
 「ちょっと待ってください。他の報道部員はどうするんですか?部長が勝手にそんなことを……」
しかし、東御先輩はあっけらかんと返す。
 「いいんですよ。そもそも報道部員は私一人ですし」
 「……は?」
 「うんうん、でもこれで報道部員が一気に三人も増えて、脱廃部ですね!」
 「いや、報道部に入った覚えなんて毛ほども無いんですけど?!」
 「……ぅ」
 俺が有りもしない言葉に突っ込むと、隣で舟を漕いでいた狐音が小さく呻いて瞼を開いた。
 「あ、わり。起こしたか」
 「……大丈夫。何かあった?」
 「ああ、実は……」
 東御先輩の話を聞いていなかった狐音に、大まかな説明をする。
 狐音はまだ眠たそうだったが、ちゃんと聞いてくれた。
 「……ってことなんだ。合宿とか何考えているんだろうな、あの先輩(笑)は」
 「燕くん、聞こえてますよ?」
 「おっと、失言」
 「……がっしゅく、って何?」
 狐音は意味がわからないように首を傾げる。そういえば、狐音は元は狐なのだから合宿のことを知らなくて当然なのだ。
その事実を知らない東御先輩は、少し考える時間をとると、狐音に向かって言う。
 「合宿っていうものはですね、こういうグループで集まってお泊まり会みたいなことすることを言うんですよ。肝試しや百物語、恐怖映画鑑賞とかもいいですねぇグヘヘ」
この人の頭の中にはホラーしかなかったようだ。合宿とは何だったのか。一体何を企んでいるかは知らないが。
この説明を聞いて、狐音は無表情ながらも瞳をキラキラさせていた。
 「……面白そう」
 「え、マジで?」
 「よし、じゃあ決まりですね!燕くんと流弥さんはちゃんと妹さんに伝えてくださいね?日程を合わせる必要がありますからねっ!」
………………。
 一体どうしてこうなってしまったのか。俺の夏休みプランでは宿題を早急に終わらせて、残りの休みをのんびり満喫ゴロゴロする予定だったのに……。
 嗚呼、マイ夏休みが……。

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