-フォックス×フレンド-

ノベルバユーザー189431

「出会い狐」

6月2日.朝
 「やっべー、遅刻遅刻っ!」
 俺は学校の敷地内を走り、自分の教室へ向かっていた。
 「しまった………一校時体育だった………みんな着替えて体育館行ってるよなぁ………」
ちなみに現在時刻8:37 授業が始まる3分前である。ここから着替えて移動するのに3分で終わらすのは神業だ(確信)。遅刻の原因は夜更かしオンラインネットゲーム。
もしかしたら教室はもう閉まっているかもしれない、という不安があったが、
ガラガラガラ
「お、開いてる。良かった~」
 良かったのはそこまでだった。

 「………………」
 「………………え?」
 教室の中にいたのは、銀髪のショートカット、おっとりした銀眼の小柄な美少女。

しかし、少女はブラとパンツだけの下着姿。
 手には体育着を持ち、今から着替えます状態で固まっていた。こちらを見て。
 「………………」
ドウシテコウナッタ
思わず叫びそうになったが、それは叶わなかった。あるものを見てしまったから。
 下着を、ではなく。

 少女の頭から生えている先が小さく尖っている【獣耳】と、腰から生えている重量感のある【獣尻尾】を見たから。
それらは狐の耳と尻尾のようにも見えた。
 声も出なかった。
いや、声は出ていた。
 「えーと、これは………そ、そう事故だ!てっきり誰もいないって思っていたから………いや、何も見てないよ?!」
そんな弁解の言葉が。
 銀髪銀眼獣耳尻尾の少女は相変わらず下着姿のまま、突然の闖入者(俺)を呆然と見返していた。
 「………と、というわけで~………」(そそくさ)
何が「というわけで」なのか。
 要らぬ弁解をした俺は、教室をあとにしようと、扉を閉める。
ガシッ
「っ?!」
 否、扉を閉めようとする前に細く白い手に腕を掴まれた。教室の内側からのびたその手の主は、
 「………風息燕、だな?」
 下着姿のまま俺の腕を掴んでいた。顔を俯かせていた。
 「HANASE!」
 「………………な」
 「………え?」
 少女は俯きながら小さく呟いていた。その声は変声期前の女の子のようだった。
 「………………見た、な?」
 「………は?」
 「………私の耳、尻尾………見た、な?」
 「………えー、っと、それは―――」
はっきりと見えた。というか、今も見えている。俺は心の中でそう答えた。
 少女は顔を俺に向け、
 「………貴方は、見てしまった」
 「………………」
 「………私の秘密、知ってしまった」
 「………………」
 「………本当は、貴方を、消さなければならない」
 「………………」
 「………でもチャンスを、あげる」
 「………………なんだ?」
 「………私と『友達』の契約、結んでくれたら、消さないであげる………どう?」

キーンコーンカーンコーン
一校時の開始のベルが鳴る中、銀髪銀眼獣耳尻尾少女(長いな)は、顎を引き、上目遣いでそう言った。

 俺の返事
 「とりあえず服着ろよ」

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