クラス転移キターっと思ったらクラス転生だったし転生を繰り返していたのでステータスがチートだった

名無しシャン

第76話「姉弟」

「さてさて、あちこちで始まったみたいだよ、姉さん」
「そうね。さっさと終わらして混ざろうかしら」

 四方八方からの攻撃を捌き続けるセリア。攻撃の隙間で数体のレビンに攻撃するが、攻撃の当たった部分が煙に触れたようにダメージを与えた感触がない。

「大体今、10対1ぐらいかな?」
「ほんとに、さっさとかかってきなさいよ。本体」

 散らした煙が再び体の形になり、襲いかかる。散らして数を減らしては、体の形に戻ってレビンの数が増える。これの繰り返しが5分以上続いている。

「姉さん、全力で動き続けて5分。疲れてない?」
「こんな煙程度で疲れる訳ないじゃない」
「挑戦権の恩恵ってやつかな?」
「察しが良すぎるんじゃない?」
「いやいや、察しが悪くても流石に分かるよ」
「さて、ウォーミングアップは終わりましょうかしら」

 周りを囲っていた全ての煙を一足で散らしたセリア。再び形を戻そうとする煙だが、どれもが不自然に空間に固定される。

「煙に攻撃力があるのは不思議だったけど、単純な仕掛けでしかなかったわね」
「流石にバレるか。まぁ、僕の方も姉さんの挑戦権について予想はついたよ」
「どっちの方かしら?」

 空を見上げながら問うセリア。

「どっちもって言いたいけど、どっちの効果か分からないだよね」
「それはそうとして、早くおりてきなさいよ」
「あれ、場所までバレてる感じかな」
「そうね。見えてはないけど、感覚的なものね」

 背中から羽を生やしたレビンが姿を現しながら、空から降りてくる。
 しかし、羽は鳥のような毛の生えたものや、物語などで伝え聞く天使のような神々しいものではない。
 肉はなく茶色の皮膚のような皮が張り付いたような骨と、骨同士の隙間を埋めるかのように張ってあるゴムのような不透明の分厚い皮の羽だ。

「私より先に人間辞めてるわね」
「飛翔の効果だよ、飛翔の」
「その羽、ドラゴンとかに近いわね」
「そういえば、このスキル、家にいる時は数回しか使ったことなかったけ」
「そうね、私は初めてみたわ」

 一対の羽は片側で幅2mはあるだろう。そして、レビンが地に立つと羽は傘を畳むかのように小さくなっていく。
 小さくなった羽だが、完全に消えることはなく肩から少し見える程度の大きさで止まる。

「完全には消さないのね」
「まだ飛ぶからね」
「それで、次はどうするのかしら。もうあの煙は使えないけれど」
「煙で少しでも姉さんが疲れてくれればと思ったんだけど、疲れすらないのは予想外だ」
「流石になめすぎよ」
「なめてないよ。ただただ、姉さんが強すぎなだけ。成長しないってルールはどうなってんのさ」
「成長しないじゃないわ。これまでは年齢とかステータスとかその他諸々を、挑戦権が勝手に戻していただけよ」
「不老不死というより、老いた分戻ってるって感じか」
「不死がどうなって起こるかはまだ教えられてないけれど、不老は時間の流れから自分を完全に外すことで完成になるらしいわ」
「それで、前段階として戻すんだ。それでも、十分すぎると思うけど」
「前段階だからこその欠点はあるわ。言わないけれど」
「なら勝ったら教えてもらおうかなっ」

 数メートルはあった距離を一歩の踏み込みで縮めるセリア。それに合わせて自分の後ろ側の空中へと飛ぶレビン。そしてゆっくりと地へと降りてくる。

「あっぶな。直感に頼ったけど飛んでよかった」
「面倒ね。スキルもなしに直感が良く当たるの忘れてたわ。それと飛翔も厄介ね」
「視認できない速度が出せるステータスじゃないよね。それも挑戦権の効果かな」
「ほんと、面倒な相手だわ」

 再び構えて距離を詰めるセリア。3体の煙のレビンを作り一緒に攻撃するレビン。
 蹴りの一撃で一体の煙を散らし、煙の動きが固まる。しかし、煙はすぐに消え去り、レビンの横に新しい煙のレビンが現れる。そして攻撃に参加する。
 ほぼ一方的と言える程の攻撃をしていたレビンが突如地面を転がるようにして下がる。そして、数舜遅れて攻撃していた煙たちは透明な板に押しつぶされたように消える。

「障壁ってそんな使い方出来るんだ」
「動かせないなんて言ったことあったかしら」
「さぁ、忘れたよ」
「なら言っといて上げる。上から下程度なら疑似進化状態で動かせるわ」
「簡単には飛べなくなった訳か」

 何かに気づいたように再び斜め後ろに転がるレビン。
 そしてその数舜後、半透明の球体がレビンのいたところを通る。

「嘘よ」
「流石に信じ切ってはいないよ」

 半透明の球体を躱し続けるレビン。半透明で見えにくい球体が避けられているのは、異常な直感があるからこそだろう。

「防戦一方のレビン、眺めてる私。さっきまでとは逆ね」
「回避しか出来ないから、正確には逆ではないよ」
「余裕みたいね」
「余裕に見えるなら、疑似進化でおかしくなってるよ。目」
「煙でも出して防げば?」
「姉さん、人のこと言えないぐらい、性格悪いよ」

 数十分にも及ぶ1対多での戦いのストレス、それを解消しているかのように良い笑顔のセリア。

「実際はダメージを受けていないが、ダメージを受けたと誤魔化すこと。ってところから」
「その通りだよ。熱いと思いこませた状態で、冷たいものに触れると、目隠して触れると火傷することの、応用だよ」

 半透明の球体を避けながら説明するレビン。

「成る程ね。だから触れるだけで形の崩れる煙が、攻撃出来たわけね」
「実際は思い込みだけどね」

 不規則なタイミング、不規則な速度で攻撃していた半透明の球体は二つになりレビンへと襲いかかる。
 レビンの避けた球体同士がぶつかり合い、甲高い音を響かせながら軌道を変える。

「避ける数は増えたけど、動きがシンプルになってるよ。一つの方が厄介だったよ」

 軌道が変わり、背後から迫る球体を振り向きもせずに体を少し傾けて避ける。

「えぇ、そうね。だって、私が出るのも」

 直感に従って、右足を軸に半回転しながら左足で背後へと蹴りを放つレビン。
 足同士がぶつかる鈍い音がする。

「いってぇ」
「飛んで避けるかと思ったわ」
「飛んでたら直撃コースだったからね」
「一瞬口調崩れてたよ」
「知らないね」

 互いが次の一撃を構える。

「姉弟喧嘩に、嫁と妹と母追加だ」

 少し離れたところから聞こえる声。
 それとほぼ同時に2人の間に飛んでくる二つの人影。
 なんとか受け身の取れたリアと琴の2人だ。
 そして、笑みを浮かべながらこちらに寄ってくるレナ。

「4人纏めてこいよ」

コメント

  • ノベルバユーザー601714

    ランキングから拝見しました。クラス転移じゃなくてクラス転生する作品は珍しいですね。

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