春と高嶺と高貴な花

ヒウリカ

学園でしか使えない、面倒な首輪

二人と握手をあらためてしていると、クラス中の何かが、ぴこんっと鳴った。
みんながそれぞれ取り出したのは、さっき配られたばかりのタブレット端末だった。




薄い顔の担任はにこやかに言った。

「では、今日からよろしくね。
林道さん」


「ええ、よろしくお願いします。」


にこやかに返事をすると担任は、ほっと安心に多様に口元を緩ませた。
そして、手に持っていた二つのタブレットの内の一つを手渡してくる。


「先生これは?」


「これはね、名桜学生のみが使えるタブレット端末さ。みんな呼び方は好きなようにしているよ。一番多いのは名桜パッドかな?
ここの学園では試験的にこういう最新鋭の教育教材を使っているんだ。
ここの生徒は、基本的にこのタブレットで連絡しあっているんだ」

「え、そうしたら学校側は、生徒の監視をいつでもできるってことですよね。
プライバシーの問題とかないんですか?」


鈴香は内心、面倒だなと思っていた。
こんなものがあったら先生の目を潜り抜けてお遊びするのが大変になるじゃないか。


「そうだね。
だからこそ、いじめの防止やインターネット上における事件の予防につながっているんだよ。
それに、教師は生徒のタブレットの中身を見ることはできない。専門の委員会が動いていて、そこの監視下にあるから、何か問題が起こったときにのみ僕ら教師はタブレットの中身を見ることが許されるんだ。」


「そうですか。なら安心ですね。」 


担任は少し疲れた顔をして笑う。何が安心なのかはわからないがと自身で思いつつ言った。


「ただ、最近少し問題があるらしくてね。
問題と言っていいのかどうか…グレーのラインに踏み込んできているらしいと噂になっているんだ。
まあ、細かいことはすぐわかると思うよ。君みたいな子はとくに標的にされそうだしね。
そんな話題が出ていたのを思い出した。」







意味深な話の切り方で、気になっていたんだよな。なんとなく、その話題に関係しているかもしれないなと鈴香は考えた。
綾と、道佳のタブレットの画面を見せてもらう。
開いている画面は、某SNSサイトに似た作りになっていて。たぶんそのサイトをもとにして作ったものだと思われた。
使い方はほとんど同じようで、自分のアカウントを作って好き勝手に投稿していくものらしい。ただ、みんな一つのアカウントをフォローしていて、通知が来るように設定してある。


名桜学園新聞部
それがそのアカウント名だった。


「なんで新聞部?」


綾はニヤニヤと笑いながら言った。


「まあ、見てればわかるって」



その投稿には、私と綾が握手している写真と、コメントが付いていた。

{期待の転校生は、流星のように女王様たちの仲間入り。嫉妬に押しつぶされないよう頑張ってね
林道鈴香さん?}

上から目線の嫌な女の口調だった。


「皮肉がよく効いてるね」


「いつもの事よ」

いかにもお嬢様な道佳は笑う。
今どきそう珍しいことでもない。SNSが発達した今なら。ここまで過剰で先生公認というのは珍しいけど。

「ここでは、こんな風にいつも監視されてるわけだ。」

私は苦笑する。


「そうね。生徒同士が、この新聞部に写真を送ったりしてるわ。新聞部自体も撮ったりいろいろしているらしいけど。存在自体が謎なのよ。
まあ、せいぜいここの常連にならないように気を付ける事ね。
もう手遅れそうだけど。」


「まあ、気を付けるようにするよ。」


そういいながら、私はアカウントを作って、二人と新聞部をフォローする。もちろん通知は常に来るように設定して。

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