異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

卵焼き

 いつも通り船で行きたい……とは思うのだが、今回ギルドはあてに出来ない。
 そう思った俺は何とか自分で準備をするため、一人外に出て乗船券を取りに行く。
 何とか乗船券を取り、その他準備を済ませた俺は家に帰る。
 帰る頃には日が沈み暗くなり始めていた。
 暗闇を照らすようにバイクで走る。
 そして家まで到着する。

「疲れたなー……」

 そう呟き家に入る。

「いらっしゃ……じゃなくておかえりー!」
「おう。ただいまっ!」

 店内は客の声、肉の焼ける音で活気に溢れていた。

「話したいことはあるけど仕事が終わるまで待つよ」
「分かったー」
「……ていうか、俺も手伝っていいか?」
「もちろんっ!」

 そう言ってくれたので俺は制服に着替え身だしなみを整え料理運びと接客をすることになった。
 酔っている人の悪ノリが酷かったくらいで特に何も起きなかったので楽に仕事が出来た。
 そして閉店近くになると客がだんだんと席を外していく。
 この光景がまた見れなくなってしまう。と思うと少しだけ寂しかったけど笑顔でしっかりと接客が出来た。
 そして最後のグループが席を立ち会計を済ませる。
 ふらふらした体で店から出ていくグループに対して『ありがとうございました!!』と酔いが覚めるくらいに大きな声で感謝を伝えられた。
 その後、店内にいた全員でまかないの飯を食べ、それぞれが歓談を楽しみ帰っていく。
 そして残ったのは三人と何故か一緒になって働いていたエミリーの四人になっていた。
 まかないは既に無いのだが会話を続ける。
 当分会えなくなることもあるからだろう。サン・チュと焼男さんは家族だもんな。と思う。
 そこで俺はエミリーと目を見合わせ合図を送る。
 大体理解してくれたのではないだろうか。
 俺とエミリーは立ち上がりキッチンに向かい皿洗いを始める。
 最後なんだし親子二人で話したいこともあるだろうな……。と、思ったからだ。
 そして俺は黙々と皿を洗っていると、エミリーが急に悲しそうな声で言い出した。

「家族……ですか」
「家族……か」

 俺も色々と思い出し続けるようにそう話す。

「「……」」

「あの……その何だか気まずくしてしまいすみません」
「別にいいですよ」

 と、俺もエミリーも色々な思いがあったのか、それ以上の会話は無かった。
 そして、俺達が皿を洗い終わり戻ると話し続けていた二人のところに俺達も混ざる。
 その後、歓談をした後に俺は明日のことを説明し布団に潜り眠りについた。

 ちなみに明日の予定。と、いっても単純な事だけで船の出る時間が午前十一時という説明と船の座席番号のこと以外は特に話さなかった。

 俺はサン・チュの挨拶で目を覚ます。

「ん……おはよ」
「朝食作ったから食べちゃいなよ」
「うん」

 そう言われ階段を降り広い部屋で飯を食べる。
 今朝の料理はご飯に卵焼きベーコンにサラダわかめスープだった。
 俺は卵焼きに箸をつける。
 ここで緊張が走る。俺は結構前に話した通り。卵焼きの好みは甘いやつだ。
 ふわふわしているのにも関わらず、その卵は崩れることがない。
 非常に綺麗な形だ。俺はそんな卵焼きを一口で食べる。


 口に入れた瞬間に卵の風味と甘みが口の中……いや鼻の方まで広がる。
 だが……ここで終わりではない。
 俺は口の中に広がる卵焼きを噛む……いや、とろけていく。
 それにより口の中に甘みが広がる。

「くぅぅう。美味い!」
「ありがとー」
「私は……甘い卵焼きよりは……」

 と、人の作った物に小声で文句を言うやからがいるが気にすることは無いだろう。
 その後、サラダ。ベーコン……とどんどんと食べ進めていく。
 その時……喉の詰まりを感じ始める。

「甘い卵焼き……」

 と、未だに文句を言い二個ある卵焼きに手を付けずに他のものを食べ進めるやつもいるがそんな事は気にしない。
 あつあつのお椀を持ちフーフーと軽く冷ましわかめスープを口に入れる。
 ……! 美味い美味すぎる!
 流石は焼肉屋のわかめスープと言うべきなのだろうか。
 味がしっかりとしているのにも関わらず風味や香りも損なっていない。
 口に運んだ時の風味が絶妙だ。胡麻がいい風味を出している。

「これも美味い!!」
「でしょ!」

 と、俺が食べ進める中、ようやく卵焼きを口に運ぶ馬鹿がいた。
 あんなに美味いものをもったいない。

「……! わ、私の卵焼き界に新しい歴史が刻まれました……」
「そ、そこまでかな!?」
「これからは甘い卵焼き派に変わります……!」

 そう言うともう一個の卵焼きも口に運ぶ。
 甘い卵焼き好き族の仲間が一人増えた。良いことだ。
 うんうん。と一人で頷き感心しているとエミリーはもう一つ卵焼きを口に運ぶ。
 そんなに気に入ったのか……良いことだ!

 って……待てよ。
 最初、嫌々食べていたのが一つ。
 次にすぐ食べたのが二つ。
 なら……今、食べたのは何だ!?
 俺は皿を確認する。美味いものを残す派の俺の卵焼き一つはどこか……いえエミリーの胃の中に消えていった。

「……てめぇ! ふざけんなー!!」
「わ、私は食べてませんよー」

 と、馬鹿みたいな喧嘩をしたけれど、この後、たくさん卵焼きをサン・チュが作ってくれた。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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