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雪見だいふく

進展

 相手の軍勢が女神様に怯えるように引いていく。
 勝ち目がないからだろう。
 たった1人でこれだけ戦況が変わるってどういう事だよ……。

「……凄いな」
「ですね」

 相手は一気に撤退。数分で敵はいなくなっていた。
 呆然として相手を見つめていたが我に戻り、後ろを振り返ると街は元の現状とほぼ同じに戻っていた。
 戻っていないことと言えば街中に不自然に倒れている人間くらいだった。

 その後、俺は後始末を色々と済ませ家に帰った。

「……」

 皆がいると思われる部屋に入るとその場にいたサン・チュ、焼男さん、エミリーが椅子に座り込み、黙り、俯いていた。
 俺はその気まづい雰囲気の中、声を出す。

「あのー……どうかしました? 色々あって確かに大変でしたが暗すぎません……?」

 そう言うと更に3人は目線を下にし黙り込む。
 その場でエミリーが少しの間だが話した中では考えられないような暗い声を出す。

「私から話していいですよね……?」

 2人は黙って頷く。

「……実は――」

 と、震えた声で話し始める。

「サン・チュさんの記憶が戻り『女王様』と言うことが判明したそうです。
 これもかなり大きな情報ですがここから先があります。
 それは……私の力を行使して悪い奴らを倒しに行く。と、おっしゃって家から出ていきたいそうなんです……」
「えっ……」

 俺はつい声が出てしまった。
 もう女王様でも何でもないなら好きに暮らせばいいじゃないか……これ以上辛い思いをする必要はない……よ。

「何故、そこまでして無理をしたがるんだろう……って思ったでしょう。それにも理由があ……」
「ここからは私が話します」

 と、サン・チュが俯いていた顔を覚悟を決めたかのように上げ真剣な表情で俺を見つめてくる。

「色々と思い出しちゃったんです。何故、こんな大事なことを忘れていたのかはわからないけど……私は母から王の地位。そして力をも受け継ぎました」
「つまりめちゃくちゃ強い……ってことか」
「それも神の力です。私の力があれば百人力……いや千人力です。選ばれたんだから戦わなきゃいけないんです」
「そんなの1人で抱え込むのか!? 無茶苦茶だろ」

 俺は思ったことをつい怒鳴ってしまう。

「しょうが……ないから。戦わないとだから……」

 サン・チュの目からは涙が溢れ出てきていた。
 どんな思いでこの結論を出したのか。俺には到底分からないけど相当の覚悟が必要なはずだ……。

「だから……! 私が神として全てを守……らなきゃ!」

 それに対して『俺にも手伝わせてくれないか?』と、言おうとした時、時間が止まったような感覚を得る。
 それはまるで死んだ時と同じような感覚だった。
 どこかに飛ばされたような感覚だった。
 そして次の瞬きをした時には死んだ時と同じ場所に送られていた。

「おい! どういう事だよ……。死んでないぞ俺は!」

 その場に響くような声で叫ぶ。

「久しぶりだね……一君っ!」

 それは死んだ時に俺の仕事もしない神様の代わりに来てくれた気の毒な神様の声だった。

「1回しか言わないからよく聞いてねー?」

 もう色々頭が追いついていないけど「死にました」とかだと嫌なのでゴクリと息を呑む。

「神様の賭けの話。覚えてるかな?」
「そんなムカつく話……覚えてるに決まってるだろ」
「それに関しては君のおかげで進展が生まれたって事だよ。
 これは他の神様も護衛軍の人達に話してるから共通の情報ってことになるんだけどー」
「だからなんだよ……進展があるなら教えてくれよ。これ以上悲しむ人が増えないためにも」
「それは……君達、護衛側の勝利手段の増加だよ」
「勝利手段の増加……? 侵略軍や力を得た生き物に対してぶっ潰す以外の方法か……?」
「そうだよ。だってさー、おかしいと思わなかったの?
 君達が圧倒的に不利ってこと。潰しても潰しても死人がぼちぼちここの世界に送られ強い奴らも増えていく。 そんなのに勝ち目無いじゃん。しかも生き物にまで狙われてさ」
「そ、そうだけど……潰すしかないって話だったから」
「まぁ君達もようやく進展したってことよ! 君達が勝つ方法。それは――」

『各地区にいる女神様を全て見つけて集結させること』

 つ、つまりサン・チュみたいなやつをか……? 肉地区にもつまりいるってことだよな。

「実を言うと回復の女神ちゃんみたいに素質を持つ人達の記憶を全て消しちゃったんだよねー。ゲームを開催するために」

 ……ちっ。
 本当にムカつく神達だな。自分達の都合で俺らを遊び道具みたいにしやがって……!

「まぁ各地区にいる昔からの王。その人達には神になる素質があったんだよ。
 その力も少しながら使い国を管理していたらしい。
 だから、その王達の記憶をこの世界にいる全員から消してゲームを始めたってわけ。1番ゲームの中で厄介だったんだろうね。『簡単に侵略軍なんて滅ぼせてしまうんだから』」
「……ふざけやがって」
「まぁまぁ。怒らないでよ。私は本当に言われたことをしてるだけなんだから。
 あまり情報は言えないからこれだけ伝えるよ。
 残る女神様は4人。
 君達、護衛側は記憶の消えた女神様を見つけ出せば勝ちってわけだ。
 その代わり……。この事は侵略軍や力を得た生き物達にも同時に教えている。
 自分達が負けないためにも女神様を探し出すだろう。つまり更に攻撃が活発になることも予想されるってわけ!
 だからさ気をつけて頑張ってね。それじゃあ――」

 そう言われ視界がぼんやりし次にピントが合った時には元の場所に戻っていた。
 そして俺はさっきまでの会話と食い違いがあまり無いように話を戻す。

「いや……サン・チュ。一人で抱え込むな……無理だけはしないでくれ。今から大事な話がある」

 俺はそう伝えると、さっき起こった情報を的確にその場にいる3人に教えた。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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