私『前編』

　……大丈夫かな。
　私の名前はサン・チュ。
　現在、お父さんと避難所まで避難中。周りの人は既に避難済みか私達2人しか道にはいませんでした。
　何故か私は昔から備わっていたスキルのおかげで攻めてきた人達の数。負傷者の数をだいたい把握出来てしまいます。
　その数を見るたびに私の不安がどんどんと煽られていきます。

「……お父さん。大丈夫かな、、」

　少しだけ怖かったので袖をぎゅっと掴み甘えてみる。
　すると優しく声をかけ頭を撫でてくれた。

「ありがと……えへへ」

　私は喜び少し照れていた――が今の一瞬で表情は急変しました。
　その出来事により顔が引きつり足が震え、恐怖に落とされていくのが自分でも分かりました。

　――お父さんの右肩に何かが突き刺さり血が吹き出るように溢れだし服に滲んでいきました。

　私は恐怖のあまりその場に崩れ落ち後ろを振り返ることなく叫んでしまいました。
　それはライオンに狩られる羊のようでした。

「……大丈夫だ」
「う、うん……」

　私はそれでも泣き続けました。単純に怖かった。のと同時に敵を感知するスキルかあったのにも関わらず確認することを怠ったということです。
　色々と考えてしまい悩みその場に座り込んでいるとお父さんが私を抱き抱え自分の後ろに立たせました。

「危ないから下がってろ……」

　お父さんの数10メートル先には1人の男性が歩き近づいてきていたのです。
　その男性は恐らく何かを飛ばし父の肩をこんな目にあわせたのでしょう。
　お父さんは確かに強くて頼り甲斐があります。特に防御面は筋肉のおかげか知りませんが凄いです。
　ですがそのお父さんの肩を遠距離技で血が溢れ出る程に仕留めたのです。勝てっこないです。逃げたところで遠距離技の餌食。もはや勝ち目はありません。
　私のワープスキルも相手に触れていないと使用出来ないので意味が無いです。ただしお父さんを逃がすことだけなら出来ます。自分自身には使用出来ないので私は死にますが。万が一を考えたらそれでもいいんですけどね。
　長々とそんな事をお父さんの後ろで考えていると相手との距離は10メートルあるかないかまで近づいていました。

「恨み……」

　彼はそう言うと手に持っていた木の棒の様なものを木刀サイズまでに大きくし斬りかかってきました。
　お父さんは手の上に燃え盛る火を出しそれを相手の木刀に飛ばします。するとその剣は木炭になるかのように一瞬でチリチリになってしまいました。
　一見、互角のようにも思えましたが相手の本気はここからでした。
　まず初めに私を含めたお父さんの周りに木の棒を投げてきました。それは下からトスをするように投げてきました。もちろん難なく避けました。
　ですがこの時点で燃やしたり飛ばさなかった事が間違っていたのでしょう。
　お父さんは何かを察したのか私に「逃げろ」と一言。その後、私を遠くに突き飛ばしました。
　痛いっ……。ですが私が前を向いた時には数倍いえ数10倍の痛みを受けていたでしょう。
　周りに置いてあった木の棒が1つ1つが意志を持ったかのようにお父さんの各部分に飛んでいったのです。
　それは苦しめるように急所は狙わず手足が多かったのです……。
　怖くて怖くて足が動きませんでしたがお父さんに言われたことを守るために重たい足を上げ後ろに猛ダッシュしました。

「逃がさいぜぇ……」

　と、ゲスい声が聞こえます。
　そう言うとお父さんの手足を刺したのと同じ木の棒の様なものが地を這うように足に迫ってきていたのが後ろを見なくてもスキルで分かりました。

　痛っ……くない……？

　私の足には確かに木の棒のような何かが刺さり血も溢れ出ていました。勢いにより転んでしまいました。
　ですが痛みだけはあまり無いのです。

「つーかーまーえった……！」

　そう相手は倒れ込む私に対しニッコリ微笑みます。
　そしてお父さんにとどめを刺そうとしているのか大量な木の棒を周りに設置し始めました。
　このままだとお父さんは死んでしまいます……そんなのは絶対に嫌だ!!

「や、やめてっ……!!」

　私は震える手を握りしめ叫びました。

　――誰かが傷つくのはもう嫌だ！

　初めての感覚のはずなのに何だか懐かしく感じました。

「あん？　うるさいガキだな。てめぇから先に潰してやるよ」
「それだけは……！」

　お父さんが足を掴み止めようとしますが思いっきり蹴られてしまい振り払われてしまいます。
　そして私の目と鼻の先まできました。

「舐めてると痛い思いをするってことを分からせてやるよ」

　そう言うと右手から木の棒の様なものを出し1本1本私の足に突き刺していきます。
　血は溢れ出るのにあまり痛みは感じない……。
　ですが痛がるふりを頑張ってしました。

「可愛い顔だから顔面は傷つけないでやるけどよぉ。とことん可愛がってやるから覚悟しろよ」

　と、私の髪を払い右頬を掴みました。


サン・チュの使えるスキル

たくさん